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春夏秋冬・季節刀とその物語  作者: てぃあべる
22/61

第22節-椎名・牡丹の過去-壱

これは楓達がここ『一江の月』に来る一ヶ月前に遡る……


『……ふぅ、今日のお仕事は終わったし……ご飯でも食べに行こうかな』


私の名前は椎名(しいな) 牡丹(ぼたん)

現在19歳、今は芸者として働いている

しかし、どこかに努めてるわけではなく……野良の芸者と言ってもいい

だからこそ私の服装は着崩れしたような服装

でも……この服装こそ私は気に入ってる

元は緑と紫の浴衣、それを私になりに改造し腕と脚部分を七分にしている


そんな時……どこからか声が聴こえた……


『……声が聴こえる人いるかしら?』


「え?」


私はどこからか聴こえた声に反応し、周囲を見回すが……

誰1人、私に話かける様子なく歩いている


『……気のせいかな?』


『……もしも聴こえた人がいるなら……5地の武器庫まで来てほしい』


「……また?」


私はもう一度周囲を見回すが……自分のきょろきょろとした視線に

気になった人達が自分のほうを見てくるだけで話かける様子はない


『五地って……たしかこの町の守護隊が管理している場所よね』


私はこの町に来てから2ヶ月が経っていた

この町は周囲が山に囲まれていて港がある

そのため盗賊などがここを襲う確率が低い事から人は多い

もちろん、私もその理由でここで働いている

だからこそ、この町の地理には少しだけ詳しかった


『……まぁ、行くだけ行ってみよ』


私は軽い気持ちで五地に向かうため歩き始める

そして……五地に近寄った時、明らかに白い羽織を着た人達が増えてる事に気付く

そんな人達にばれないように芸者の振りをして五地の武器庫を探し始め

それから10分ぐらい歩いた所に蔵らしき物が五つほど並んでいる場所に辿り着く


『どれよ……』


『右から3つ目、鍵はさっき巡回に来た馬鹿が鍵を閉め忘れてるから開いてる』


『……明らかに私に話かけてるわよね?』


そんな事を思いながら私は3つ目の武器庫の扉に手を触れると

その扉は簡単に開かれ……中に入る事ができた


『へぇ……以外に綺麗ね』


『……観光気分じゃなくて、あんたの目の前の箱を開けて』


「え?」


私が蔵に入ったすぐ目の前……

丁度中央部分に横に広い木箱が木の台の上に置いてある


「……鍵は……かかってないわね」


私はその木箱の蓋をあけるとそこには2本の短刀がある


「えっと……まさかこの短刀が喋ってるわけじゃないわよね」


「……正確にはその短刀に宿った私が喋ってるのよ」


「え?!」


私は声の聴こえる方向……自分の真後ろを見ると

そこには、薄い赤色の髪で服装は浴衣で色は白と黄色


「……来てくれてありがと、いきなりで悪いのだけど

 ここから連れ出してくれない?」


「自分で出ればいいんじゃ……」


「自分で出れたら苦労しないわよ、私はその短刀

 春閃(しゅせん)菊波(きくなみ)からある程度しか離れられないんだから」


「……嘘でしょ?」


「嘘なんて付いてどうするのよ……とい言うか早くここからでないと

 泥棒と勘違いされて……捕まるわよ?」


「あんたが呼んだんでしょ?!」


「だから……私の声が聴こえたのがあんただけで

 それに……私が見えるのもあなただけなのよ」


「……いい加減、冗談よね」


「……はぁ、あなたの頭の中は空っぽなの?」


「なっ……わざわざここまで来て、そんな言い方は……」


私の目の前の女性、目は薄い緑、髪はサラっとしてる

腕は細く、その両腕を組んでる様子はまるで絵に見える

だけど……性格は……気にいらない


「……で、どうするの?」


「何が?」


「私を持ってくのか持ってかないのか」


「……不気味だしいらない」


「そっ、じゃあさっさとここから出ていきなさい

 本当に捕まるわよ」


「はいは……」


私は目の前に女性にそう言い、外に出ようとした直後

鍵を閉め忘れたであろう白い羽織を着た男と目があう


「貴様! そこで何をしている?!」


「え、えっと……道に迷って……」


「は? ……その木箱……お前、その短刀を盗む気だな」


「え、ちが……」


私が否定しようとした直後、男性は腰を持っていた刀を抜き

私に向かって斬りかかる……私は咄嗟に木箱に合った短刀を1本を抜くと

男性の刀を受け止める……だが、その時、男性の体は小刻みに震え

私の顔を恐怖したように見ると叫ぶ


「そ、その……短刀を抜いただと……抜けないはずなのに……

 まさか貴様……妖怪の類か……」


「ち、違う、私は芸者よ、芸者……ほら、この服を見れば」


「……援軍が必要だな、貴様を絶対に逃がさない、待ってろ」


男性はそういうと蔵から外に出て、どこかへ走り去る

その直後、先程の女性が私の顔を見ながら呆れた様子で言う


「あんた馬鹿でしょ……って言うか、その手に持った春閃(しゅせん)

 とっとと鞘に仕舞いなさい」


「あ、はい……」


「そしたらその短刀2本持ってどこかへ逃げるわよ」


「……え?」


「もうあんたは盗人なんだから、逃げるか死ぬか

 2つに1つでしょ……」


「……」


『……え、嘘……こんなんで盗人扱い?』


「さっさとしなさい、私のここで死にたくないんだから

 早く持って走りなさい」


私は女性に言われた通り、短刀を2本胸元に隠すとその場を後にする

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