第21節-重守・攻信隊-
『……できる、できるよね、お爺ちゃん』
楓は男性の横からの斬り込みに合わせるように『砕依』を放つ
それは相手の男性の刀に右手の鞘の先端を当て防ぐ……
しかし、その行動は男性に読まれていたように寸前の所で刀を上にあげ
楓の鞘を空振りさせると上段から斬りかかる
楓もそれに対応するように左手の刀を咄嗟に向けるが……
間に合わない男性の刀が楓の花月を通り過ぎ……楓に直撃しようとした時
楓の懐に潜り込んだ牡丹が両手の短刀をクロス状に構え防ぐ
「……牡丹さん」
「助けて貰ったからね、今度は私が……!」
そう言うと牡丹は両手の短刀を払い、男性の刀を弾く
そして楓と牡丹が男性から距離を取った直後
男性は微笑みながらこちらを見ると……笑い出す
「ははは、いい連携だ……だが、時間切れだ」
楓と牡丹の周りに目の前の男性と同じような白い羽織を着た
男性達が刀を構え立っている
それに驚きながら楓と牡丹は背中合わせに立つ
すると男性が楓に話かける
「今、そいつを見捨てて、こっちにこないか?」
「こっち?」
「そう……『重守・攻信隊』に」
「……なんですか? それ……」
「は? お前……知らないのか?」
「はい」
男性の言葉に楓は真顔で答えるとその場の空気が少しだけ和らぐ
そんな状況の中、男性は刀を鞘に納め、右手で頭の後ろをかくと
楓に向かって話続ける
「重守・攻信隊は……旅をしながら己を鍛える集団だ
悪党がいればその場で討伐を許されている
ただし、庶民を守るのが最優先だがな」
「……警察みたいな感じ?」
「けいさつ? ……その意味はよくわからんが
その重守・攻信隊の隊長を務めてるのが俺だ
名前は『硬葉・戦理』と言う
君の名前を聴いてもいいかな?」
「……慈心楓です」
「ほぅ……その意味不明な剣技と気迫
ぜひ、我が隊で……」
「お断りします」
「……どうしてだ?」
戦理と名乗った男性は楓の即答に少し肩を落としながら聴き返す
すると楓はこんな状況なのに笑顔で微笑みながら返す
「理由も聴かずに人を追い回して殺めようとする人達は信用できないから」
その言葉に周りの男性達は刀を強く握り閉め……楓に切りかかろうとする中
それを戦理が止め……楓に真面目な顔で話をする
「……じゃあ理由を説明したら、協力してくれるか?」
戦理のその言葉と同時に牡丹は楓の手を握り走り始める
「牡丹、楓、こっちに抜け道がある! 今なら行けそう!」
「雪花、先に行って!」
「はいよ」
春菊と雪花は楓が戦理と話をしている中、抜けれそうな路地を探していた
もちろん、動けば捕縛されるのが……春菊と雪花は男性達には見えない
それを利用して道を探した後、春菊は牡丹に伝え、それに合わせ
牡丹は楓の手を握り走り始める
「ちっ……追え! 逃がすな!」
「いや……追うな……追ってもお前らじゃ返り討ちに合うだけだ」
「隊長?! 牡丹を逃がすのですか?!」
「……逃げた魚の1匹は大物だったか」
「隊長……?」
「……まぁ、次会った時は慈心、お前を手に入れる
お前ら行くぞ……また旅に出る」
「はっ」
戦理は号令と共に歩きだすと、男性達は刀を鞘に納め戦理の後に続く
その少し離れた位置で春菊は戦理の姿を腕を組みながら見ていた
『……なるほど、村から出るのね、なら……』
それを確認した後、路地に入った所の家の壁に寄り掛かり座り込んでいる楓と牡丹
その奥の路地の入口には雪花が路地の外を確認してくれている
その光景を見ながら春菊は楓達に話かける
「……さっきのむさ苦しい集団は村の外に出たわよ」
「……よかったぁ……私そろそろ限界だよ」
「……私もです」
「でも、楓ちゃん……度胸あるね、あんな状況なのにあんな事言っちゃって」
「そんな事ないです……人に見られるのは慣れているだけなので
それにあの人……もう少し戦ってたら私の『居合』を完全に見切ってます」
「……さすが、重守・攻信隊ね」
「ところで……牡丹さん」
「なぁに?」
「春閃と菊波をどうして盗んだのか教えて貰っても……」
「うん、いいよ……説明しないと雪花と楓ちゃんに殺されそうだしね」
「し、しないですよ!」
「あはは、まぁ……ここは安全そうだし……
見張っている雪花も混ぜて話をしようか……私の昔話を」
牡丹がそう言うと春菊が雪花を呼びに行く
すると雪花は楓を動かし、路地を縦に座ると楓の後ろから抱きしめるながら
雪花は笑顔で話を聴こうとする
「……あんたは緊張感ないのね」
「あんたに言われたくないわよ」
春菊も牡丹の座っている横に座り、肩に頭を乗せている
そんな2人のやり取りをクスクスと笑いながら牡丹は話を始める




