第20節-誰がために-
「ぇ……盗人って……泥棒……?」
「そう……牡丹はとある武器庫から私
春閃と菊波を盗んだのよ」
「……」
春菊の言葉に唖然としながら黙ってしまった楓を見ながら
春菊は心の中で……『当然』と言った顔をし、周囲を見回すと
牡丹は入口で白い羽織を着た男性と睨み合いをしている
そんな状況を見ながら春菊は心の中で……
『当たり前よね……楓みたいな純粋な子が
目の前に盗人がいてその協力なんて……』
「それで……どうすれば牡丹さんを助けられるんですか?」
「え?」
春菊は楓の言葉に驚いた
春菊は楓が牡丹を助けるとは思わなかった事もあるのだが
何より楓の顔が声が……牡丹を助けたいと言ってるように春菊には見えた
「……雪花、牡丹さんを助けるよ」
「うん、楓がそう言うなら……私は喜んで」
雪花はまるで楓の言いたい事を理解しているように楓の言葉に頷くと
楓は花月を持ち、牡丹の横に立つと居合の構えをする
その光景に牡丹は驚きながら楓に言う
「楓ちゃん?!」
「……牡丹さん、協力します」
「え?! でも……」
牡丹が驚きながら楓に話にかけてはいるが
楓は入口で立っている男性から目を離さない
そんな光景に男性は楓に話かける
「……君はそいつ……牡丹が盗人だと知ってて協力するのか?」
「……はい、お友達なので」
「友達か……だが、もしも今、その身を引けば同罪にはならない」
「……引きませんよ」
「それはどうしてだ?」
「牡丹さんが理由もなく盗まないと思ったからです」
「……はは、それだけか?」
「はい」
その会話を楓の横で聴いていた牡丹は楓の言いたい事を理解できなかった
もちろん、楓が牡丹を助けたいと意思はヒシヒシと牡丹に伝わってる
『楓ちゃん……どうしてそこまで……』
「……わかった、では……遠慮はしない」
男性は腰から刀を抜く、その刀は後に『軍刀』と呼ばれる刀
正式名所は『九五式軍刀』、実戦特化した刀である
その軍刀を構えながら男性は牡丹と楓に詰め寄ってくる
その歩幅は遅い……摺り足に近い動きながらも刀は真正面に構え
まるで隙を与えない構えをしている
そんな状況に少し腰が引けた牡丹に楓は小さな声で牡丹に言う
「……牡丹さん、少しでいいのであの人と打ち合いできますか?」
「え?」
「少しでいいんです……」
「……わかった、いいよ」
牡丹は楓の言葉に従い、両手に春閃と菊波を構える
そんな状況に後ろで見ていた春菊は気付く
「なるほど……そういう事」
「……何が?」
「楓がやろうとしてることよ」
「……牡丹に隙を作ってもらってその間に……撃を決めるのよね」
雪花の言葉に春菊は少し驚きながらも雪花に言い返す
「ええ、雪花……よくわかったわね」
「当たり前でしょ……楓の事を理解してるのは私が一番なんだから!」
「……あっそ」
雪花を両手を腰に当てながら威張ってる様子を適当に流し
春菊は楓達の方を見ると、雪花も両手を手元に戻し見る
「せっ!」
牡丹が男性に斬りかかる
しかし、牡丹から放たれた右手の短刀の一撃は相手の刀とぶつかり
鈍い音と共に防がれる……その直後、牡丹は左手の短刀で斬りかかるが
それも、男性が丁寧に動かした刀によって防がれる
『っ……こいつやるわね』
だが、牡丹はその手を止める事はなく
相手の反撃を許さないように短刀の素早い攻撃をひたすら繰り返すが
どれも男性には当たらず、鉄と鉄の音だけが響きわたる
その直後、男性は溜息をつくと牡丹の短刀を払う
すると牡丹は弾かれた事により無防備になる
「……その程度か……悪いが短刀は返してもらう」
男性がそのまま横に構えた軍刀で牡丹を斬ろうとした直後
楓が目の前に割り込む
「チッ……ならば……このまま薙ぎ払う」
男性は勢いを消さず、目の前に割り込んだ楓に向かって斬りかかる




