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春夏秋冬・季節刀とその物語  作者: てぃあべる
19/61

第19節-真実はいつも突然に-

「ねぇ……春菊」


「何?」


「あの子……楓ちゃんの事どう思う?」


「……世間知らずでどこかのお姫様かと思ったけど

 あの『剣技』は……鮮麗されすぎね」


「……やっぱりそう思う? 私もなんだ

 さっき雪花が言った楓の『お爺ちゃん』が何者かは知らないけど

 砕依と言う技は明らかに『殺人剣技』よ」


「……そうね、あれは『視線反らし』なんて言う生易しい物じゃないわ

 実際は鞘で相手の刀か手を砕いて、その反動を利用して鞘に納めた刀で

 無防備の相手を切り裂く……正しく『殺人剣技』」


「だよね」


「ええ、間違いなく」


牡丹と春菊が話をしているのは後ろで歩いていた雪花は気付いていた


『あの会話はさっきの楓の事よね……私も……そう思ってる物』


「雪花、雪花? 雪花ってば!」


「え? ぁぁ……楓、ごめんね? どうしたの?」


「どうしたの? 何かあった?」


「んーん、何もないよ、あ……楓に一つ聴きたい事があるんだけど、いいかな?」


「うん、いいよ」


楓は雪花の言葉に笑顔で頷くと雪花はゆっくりと喋りだす


「楓、楓の使ってる『慈心流』ってどんな流派なの?」


「え? 慈心流の流派?」


「うん、もしよければ教えてくれない?」


「別にいいけど……慈心流は人を(あや)めない、つまり『殺さない』

 そして自分ができる最大限の技で相手を『無料化』

 そしてお互いが死ぬことなく戦いを終える、だよ」


「なるほど……」


『たしかに壱と弐は殺さない剣技ね、でも……参の剣技は……』


雪花は楓の言葉に頷きながらも考え、考え中の言葉を楓にぶつける


「……楓、参の剣技もお爺ちゃんに教わったの?」


「え? 違うよ?」


「じゃ、じゃあ……誰に教わったの?」


楓の言葉に雪花は動揺した、あの参の剣技『砕依』も楓のお爺ちゃんと言う人物

から教えられ、楓が使っている物だと思い込んでいたからである


「えっとね、お父さんだよ」


「お父さん……?」


「うん、私が小さい頃……って言っても中学1年の頃までは

 お爺ちゃんとお父さんが道場で練習してたんだけど……

 お爺ちゃんとお父さん、慈心流の技が違くて……聴いた事があるんだ」


「うん」


「……そうしたらお父さんが教えてくれたの」


『楓、慈心流は2つの剣技があるんだ

 もちろん、その全てがどれも『正しい』とは限らない

 だが……楓が大きくなったらわかる

 慈心流の本当の意味を、だから……1つだけ、楓に見せてあげよう』


「それが『砕依』?」


「うん、見せてくれただけで後は、高校生になってから

 お爺ちゃんに教えて貰ったの」


『……そういうことね、楓のお爺ちゃんは『楓を守る剣技』を

 それでお父さんは……慈心流の『殺』方面の見せてあげたのね』


「でもね、その後、お父さんが居合の稽古をしなくなったんだよね

 お爺ちゃんと喧嘩したわけでもないのに……どうしたんだろう……」


『……私はわかるわ、お父さんの『殺』は楓には教えちゃだめな剣技

 だからこそ、楓のお爺ちゃんは砕依を視線反らしと言って誤魔化した

 その気持ちが……なんとなくわかっちゃう……』


「それじゃあ、楓はその3つの剣技だけ使えるのね」


「んーん、後1つあるんだけど……これはまだ練習中で本番じゃ失敗しそう」


「慈心流の技の数って多いんだね」


「たしか……8個ぐらいってお爺ちゃんは言ってたけど……」


「そうなんだ」


「うん」


そこまで2人が会話した所で宿屋の前に付いた

しかし……その宿屋の前で騒ぎが起きている


「この宿屋にいるんだよな?」


「ああ、間違いない」


「……あの牡丹とか言う女、どこにいる……」


宿屋の入口で刀を腰に付けた男性が3人立っている

そんな中、牡丹は楓の手を急に引いて路地に隠れると小さな声で言う


「ごめんね、楓ちゃん……悪いけど今から出発って事で」


「え?」


「んーとね、理由は後でちゃんと話すから、ここは私に免じてお願い」


「……はい、わかりました」


「ありがとう、楓ちゃん」


牡丹は楓を両手で抱きしめた後、楓の手を引き、路地裏を抜け……

村の出口に辿り着いた時、出口付近にいた男性に2人が牡丹の顔を見ると騒ぐ


「いたぞっ!」


「ああ、間違いないな……ここは俺が抑える

 だからお前は宿屋にいる奴らを呼んできてくれ」


「了解です」


白い羽織を着た男性の1人が宿屋の方へ駆けて来て

残った男性は牡丹を睨みながら言う


「椎名牡丹……春閃(しゅせん)菊波(きくなみ)、盗難の疑いで捕まえる」


「え?!」


その言葉に牡丹の手を握っていた楓が驚きの声を上げると

牡丹の後ろで腕を組んで欠伸をしていた春菊が楓に言う


「ああ、楓に言ってなかったわね、この子……盗人よ」

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