表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春夏秋冬・季節刀とその物語  作者: てぃあべる
15/61

第15節-開戦間近-

「ん……んぅ……」


楓は目を開け左右を見ると、楓の右腕はがっきりと雪花に掴まれ

反対側の左腕を見ると……少し離れた所で寝ていた牡丹が楓の左腕を掴んでいる


『うん、腕が重い……』


楓の予測だが、昨日……楓が寝た直後に雪花が楓の腕を抱えて寝たと予測した

その後、何らかの事があり牡丹が楓の布団に入ってそのまま寝てしまったのだと


「……どうしよう」


「そのままでいいんじゃないかしら?」


「え?」


楓が寝たままの体だけを起こし、牡丹の布団の方を向くと

春菊が布団の上に女の子座りをしながらこちらを微笑みながら見ている


「で、でも……」


「まぁ、腕が捥げるわけでもないんだし、その2人が起きるまで我慢ね」


「……春菊さんは牡丹さんをほっといていいんですか?」


「え? ああ、別に? さほど困ってないし……

 それに牡丹は何も考えてないようで考えてる子だしね」


春菊はそう言いながら自分の手で髪を梳かしている

それを楓は春菊の手つきを見ていると

その視線に気づいたのか、春菊が目を細めながら楓に話かける


「何?」


「え、えっと……クシとかつかわないんですね」


「クシ? 使わないわよ、手で十分だし……」


手櫛(てぐし)って初めてみたので……」


「……楓は恵まれてたのね」


「え?」


「たしかに櫛を買えるお金を牡丹が持ってるかもしれないけど

 そんな物に使うぐらいなら牡丹の食費なり旅費に使ってほしいわよ」


「それは……」


「それに手で十分な事はあるし、その場にある物でどうにかしたほうが

 経済的にも便利なのよ、私みたいに『何もできない』人に取ってはね」


春菊の『何もできない』と言う言葉が楓の心の響く

たしかに雪花や春菊は刀を持たない者には見えないし物を持てば

それこれ怪奇現象なる、もちろん……完全に物を持つ事ができるかはわからない

だけど、そんな中でもできる事を探していると言うのに

楓に限っては牡丹や雪花に甘えきっている

だからこそ、春菊の『何もできない』と言う言葉がズッシリと響く


「……」


「まぁ、別にあなたを攻めてるわけじゃないわ

 牡丹は楽しそうだし、私はそれで十分」


「ごめんなさい……」


「謝らなくてもいいけど、その変わり……今日は頑張りなさい」


「はい」


「さて、そろそろその『寝たふり』の2人を起こして行くわよ」


「え?」


春菊の言葉に雪花と牡丹は体をビクッとさせる

それを楓がジト目でしばらく見ていると雪花が笑いながら起きる


「あはは、おはよう、楓……私は今、起きたのよ」


それに続き、牡丹も笑いながら起き上がり体を伸ばすと立ち上がる


「おはよう、楓、良く眠れた?」


しかし……立ち上がった牡丹の姿は素っ裸で服は春菊が座っている

布団の中に脱いである


「えっと……雪花、牡丹さん、おはようございます

 あの……牡丹さん、服……」


「ん? ああ、また脱いじゃったのね」


牡丹は『またか』と言いながら自分の布団の中から服を取り出すと着替え始める

それを楓と雪花が見ていると春菊が腕を組みながら説明してくれる


「この子は脱ぎ癖があるのよ……」


「……そうなんですか、ところで雪花と牡丹さん」


「ん?」

「なぁに? 楓」


楓に呼ばれた2人は楓の顔を見るが……その直後2人は後ろに少し飛び退く

それは楓から『殺気』を感じ取れたから、慌てて距離を取った


「2人とも……私の腕掴んだまま寝たでしょ……」


「えっと……私はほら、楓と一緒だから寝ぼけて……」


「私も寝ぼけて……楓ちゃんの布団に入っちゃったのよ」


「嘘でしょ、楓が寝るまで待ってた癖に」


春菊が小さな声でそう言うと牡丹が慌てて春菊の口を両手で塞いだ直後

楓がゆっくり立ち上がり、雪花の前に近寄ると……頭にチョップをする


「いたっ……楓? 何をするの?!」


しかし楓は何も言わず、また歩き出す牡丹に近寄ると

先程と同じように頭にチョップを入れる


「……っ、楓ちゃん……?!」


「2人とも長い時間私の腕を掴んでたせいで私の腕が痛いんです

 これぐらいで済んだんですから我慢してください」


そう言うと楓は自分の布団をたたみ、自分の服を直す

その間、雪花と牡丹は自分の頭を撫でている中

春菊が小さな声で牡丹と雪花に言う


「長い時間じゃなければ楓の抱き枕にして寝て良いってことよ」


「なるほど……」

「今日も楓ちゃんを……」


雪花と牡丹の視線に少し寒気を感じながら楓は部屋の外に出ると

他の3人もそれに続き、部屋の外に出る

そして……宿屋の外にでた牡丹が3人に話かける


「さてっと、春菊達は先に広場に行ってて」


そう言うと牡丹は春閃(しゅせん)菊波(きくなみ)を楓に渡し

どこかへ走りさってしまう

しかし……春菊は何も言わず広場らしい場所ある方向へ歩き出す

その横を楓が歩きながら話かける


「あ、あの……牡丹さんはどこに?」


「さぁ? まぁ……あの子なりの考えがあるんでしょ

 先に広場に行くわよ」


牡丹がそう楓に言った直後、楓の後ろから、からかうような声が聴こえる


「ふふ、春菊は牡丹の事、信頼してるのね」


「……ええ、してるわよ、それが何か問題?」


「別にぃ……春菊がそんなに『人を信頼』するとは思わなかっただけ」


「……あっそ」


そんな話を楓は微笑みながら聴き、3人が広場に辿り着くと

広場の中央以外に人が集まっており

楓が周囲を見ていると中央から楓を呼ぶ声が聴こえる


「楓ちゃん、こっちこっち!」


「牡丹さん!?」


楓達が牡丹のいる中央に行くと周囲から声が聴こえる


「おい、あれがその……」


「ああ、勝てば好きにしていいらしいぜ」


「まじかよ……」


広場に集まった9割男性の中に女性が数名いて

牡丹と楓を見ながらヒソヒソと話をしている

それに春菊が聞き耳を立て聴く


「ねぇ……私達でも勝てそうだよ」


「うん……あの服売ったら高そうだよね」


「人のほうは男どもに売りつければ……」


男性の嫌らしい目線と女性の会話を聴いて春菊は溜息をつきながら楓に耳打ちする


「楓」


「は、はい?」


「戦う人に容赦しちゃだめよ? 完膚なきまでに叩き潰しちゃいなさい」


「え……でも」


「『こんな奴ら』最初から全力でいいわよ……」


その時の春菊の目線はまるで『塵』を見ているような目線で

楓はその表情に少し怯えながら頷く

すると牡丹が笑顔で周囲の人に叫びだす

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ