第10節-思い考える-
「……どっきりって言葉はよくわからないけど夢じゃないよ、現実だよ」
雪花は優しく母親のような目で楓を抱きしめる
その暖かさは夢でも……雪花が触れない幽霊でもない事を表している
「雪花は……」
「うん」
「本当に幽霊なの?」
「よくわからない、でも……春夏秋冬に憑いてる奴らから見れるのはたしかで
私にあいつ等を見る事はできる、もちろん……持ち主も見る事ができる
でも、それ以外の人には見えないけど……」
「だから私にも……春菊さんが?」
「そうだね」
「……どうやったら帰れる?」
楓の泣きそうなその言葉に雪花は抱きしめた手を緩めず、強く抱きしめる
『自分のせいで巻き込んだのに帰す方法がわからない』
ただ、それだけがどうしても楓に言えずにいる雪花
そんな時、部屋の入口の障子が開けられ、外から春菊が入って来る
そんな春菊を慌てて止めようとしてる牡丹がいるが
その静止を振り切って春菊は楓に向かって言う
「……楓、あなたがどこから来たかは知らないけど
雪花が言いたいのは『全ての季節刀』を集めれば帰れる
そう……言いたいのよね? 雪花」
「……ええ」
春菊の言葉に雪花は頷きながら答える
その言葉に楓は下を向いた後、雪花に言う
「雪花……ごめんね、少し1人にしてくれる?」
「……うん、わかった」
雪花が楓の言葉に頷き立ち上がると春菊達の隣を通り外に出る時
雪花は小さな声で春菊に『ありがとう』と言った後、部屋の外に出る
それに合わせるように牡丹と春菊も外に出て、部屋の障子を閉め部屋は楓1人
になるが……部屋の外で心配そうに雪花がウロウロしている
それを春菊が冷たい表情で言う
「……少しは落ち着いたら?」
「……うるさい」
「で、あんたはあの刀からどこまで遠くに行けるの?」
「……この宿屋の1階ぐらいまでなら」
「そ、じゃあ私達に付いてきなさい」
「……断るわ」
雪花は春菊にそう言うと部屋の廊下の前の邪魔にならない位置に体育座りをする
それを呆れた表情で見ている春菊を他所に牡丹は雪花の隣に同じように座ると
牡丹は笑顔で雪花に向かって言う
「じゃあ私もここで待つ事にするよ」
「牡丹……あんた……」
春菊の呆れた表情からの言葉を牡丹は無言で首を振り
何も言わず、ただその場に座っている
それに溜息を付いた春菊は牡丹の隣に同じように座る
それを何も言わず牡丹が笑顔で春菊の顔を見ると
春菊は無言を首を牡丹の逆に向ける、それを牡丹が微笑んでるのを雪花は見ていた
『私も……楓とこうなりたいな……』
そんな状況を他所に布団から体を起こしたままの楓は1人考えていた
『……どうしようどうしよう……学校とか親とか心配してるよね……
でも帰る方法が刀を集めないと帰れない……』
そんな時、楓はある事を思い出す
『どうしても困ったら楓ちゃんが一番大事だと思う事をやったらいいんじゃよ』
『でもお爺ちゃん、他のはどうしたらいいの?』
『そんなの簡単じゃよ、考えなければいい、今一番大事なやればいいだけ
他の事を考えてたら、一番大事な事すら手に付かなくなってしまうぞ』
『そうなの?』
『そうじゃよ、だからもしも楓ちゃんが困ったら、やってみるといいぞ』
それはお爺ちゃん……賢護と楓が話をした時の話
『一番大事』だと思った事をやればいいだけ
『そうすると……今一番大事な事は……』
楓はそこまで考えると立ち上がり、布団を畳みだす
その音を部屋の外で聴こえたのか雪花が障子をこっそりあけて中を見ると
楓と目が合い、雪花が罰の悪そうな顔を見ると楓が笑顔で答える
「楓……?」
「雪花、ごめんね……話してもいいかな?」
「……うん」
雪花達は部屋の中に戻り楓の話を聴く事にした




