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終末の世界にのこされて

作者: かめむしたけ

覚醒システムが作動し、私は目覚めた。すぐに現状を確認するためにシェルターの外部カメラに接続する。カメラのほとんどが破壊されたのか見れるものはわずかだった。そしてカメラに映るのはただ荒野だけ。空は不気味に灰色で、地平線を眺めようとすれば遠くの方はまるでもやでもかかっているかのようにぼやけてしまっている。そんな荒れ果てた光景を一匹の虫のような影が通りかかる。除染マシンだ。まるで虫のように見えるが無数のナノマシンで構成されており、大気や大地から放射性物質を除去するために働いている。

除染マシンはどんな状況でも除染ができるように可変性が高く、一つ一つの運動能力も高いナノマシンで構成されていて、また自己修復機能・他者修理機能・構成物質の自動収集機能なども組み込まれている。ナノマシン1つでも働き、集合することでより効率よく働く。正直私なんかよりもよっぽどうまくできている存在だと思う。そんな存在だから今までこんなに過酷な外の環境で生き残ってきたのだろう。それを横目に眺めながら、センサーを起動する。除染マシンはいい仕事をしてくれた。ほっと一息つく。この付近一帯は放射能が低いようだ。人間が生存しても大丈夫なくらいに。

他の土地がどうなっているかはわからない。だがほとんどの生物は滅びてしまったであろうということは予想はつく。あれだけ高い放射線が吹き荒れたのだ。普通の生物は生きられまい。ほとんどの生物が死に絶えただろう。ここから見えるのは荒野だけで水はない。だが水にも放射性物質はたっぷり含まれているだろう。ふと思い出し、人工衛星にアクセスする。もしかしたら人間の生き残りがいるかもしれない。だが、残念ながら衛星には繋がらなかった。他の衛星にもアクセスする。だがしかし応答はなかった。他のシェルターに通信を試みても応答はない。

果たして人間も絶滅してしまったのだろうか?急いで調査用車両の用意をする。そして出発の前に同じシェルターにいたかつて同胞だったものを眺める。彼らはこのまま二次と起きることなく過ごすのだろう。車両に乗り込みかつての人間の栄光と希望と技術と記録、そしてものいわぬ死体を載せた、大きな箱舟のようでもありまた棺桶のようにも見えるシェルターを最後にもう一度一瞥する。生存者をさがさなければ。車両は勢いよく走り出した。

少々古びてはいたが車両は問題なく動いた。積まれていた保存食も賞味期限の長いものだったためまだ保ちそうだ。今となってはもう古い地形を表示するしかない地図を眺め、他のシェルターに向かう。地図が消えていなくて本当に良かった。こちらの機密情報も大量に記載されているため相手の手に渡ってしまったりするとデータは一瞬で修復不能なほど破壊されてしまうのだ。もしそのシステムが働いていたとしたらと思うとぞっとする。まぁ今となってはその戦争していた国さえも跡形もないのかもしれないが。

シェルターは多少の風化は見られたものの方々に点在していた。それらを探すことは容易いことではなかった。だがそのほとんどが破損していたり地中に埋まっていたり風化が激しかったりと生存者の可能性が絶望的な場所ばかりだった。なかにはシェルターが機能停止したせいで目覚めたのだろうか?子を抱いた女性と思しき骸骨がシェルターから這い出たところで息絶えたかのように倒れていたこともあった。シェルターも中に入った人も永劫の時をその姿を保ち続けると謳っていたシェルターがこのざまだ。戦争の激しさが伺いしれようものだ。

まぁ生命維持装置も壊れ死んでしまった人間は冬眠装置が破損しない限りは永遠にこのままなのだからあの謳い文句はあながち間違いではなかったのかもしれないな、と皮肉げに考える。確かにシェルターも冬眠装置も万全だった。だがそれらを保つための部分が弱かったではないか、と。もしかしたら自分も電気が来ずに永遠に動かないままになっていた可能性があることを考え改めて身震いする。そして意識を切り替える。生存者を探すことが最優先だ。除染マシンの記録による予測最大線量は相変わらずその当時ならば即死レベルのままであり現地住民は絶望的だろう。

いくつのシェルターを回っただろうか。どのシェルターも何処かが壊れているものばかりで私がいかに奇跡的な確率でここにいるのかを思い知らされる。作業や移動をするためのものなど各種機械や燃料は残っていたとしてもそれを動かす存在は全くと言っていいほど見当たらないのだ。シェルターの主電源や各種装置がいかれてしまっているのだろう。そんな寂れたシェルターを巡っていると、もう人間は一人もいないのではという気分になる。次のを最後にするとしよう、そう決めて次のシェルターのある場所へと車を進めた。

生体反応があった。信じられないことに。最後と決めていたシェルターに訪れた私は驚愕した。なんとまだ生き残りがいたのか。急いでその反応の在り処を確認する。冷凍睡眠室だ。そこに訪れた私はまたも驚くことになる。施設がまだわずかとはいえ生きているのだ。いや、それだけではない。注意深く観察すると修理の痕跡がある。そしてそれと共に骸骨とメモ。メモには衝撃でシステムに異常が出て偶然覚醒し、シェルター外の放射線の高さに脱出を諦め、ここでどうにかして暮らそうとした数人の人々の手記が綴られていた。

彼らは人類の行く末を愁いながら暮らし、そして死んだらしい。古びてすっかりもとの白さをなくした手記の最後には、「皆で修理しただ一つ復活した冷凍睡眠装置に最後の希望を託す。技術者だった者がいたおかげでずいぶんと改修ができ、それでだいぶ安全性が高まったことだろう。その技術者もこんな欠陥があったとは思いもしなかったと謝りながら改修していた。だが無事改修できたのはたった1つだけ。他には部品が足らず出来なかった。新規に部品を作るにも電源が足りない。参考までに資料も付加する。だからここに新しく訪れた者よ、我々の最後の希望を託すー」と書かれていた。

彼らの「最後の希望」とは?唯一稼働している冷凍睡眠装置を覚醒モードにする。まるで時が止まっているかのような長い時間が経った。覚醒にはこれほど時間がかかるのだろうか?それともまさか失敗してしまったのだろうか?そんな不安にはち切れそうになりもう一度確認しようとしたところで装置が覚醒終了を告げた。その装置の中にいたのは1人の赤ん坊だった。まだ就学年齢にも至ってない幼い赤ん坊だ。私はその赤ん坊をそっと優しく抱き上げた。幸運なことに食料は他のシェルターから持ってきたものがまだある。

私はきちんとこの子を育てることにしよう。ただ一人残された人間を。同じくただ一機(・・)だけ残された戦争による廃棄を免れたまま休眠状態になっていた多機能型アンドロイドとして。

…ところで人間というのはどのように増えるのだろうか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 結末に意外性があるし、最後のちょっと間抜けなセリフで笑える、すばらしい短編でした。 [気になる点] 結末を見た後に再読しても新たな感動がない。逆に言えば、初めて読んだ時に違和感がなさすぎる…
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