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ゼロ  -D.E.Q.-  作者: 雨木あめ
序幕Ⅰ 日常という名の
2/10

はじまりはじまり(01)

原案:友人A、執筆:わたくし、雨木あめ。

先生、チートな魔法学園ものが書きたいです……。そんな感じのお話が開幕です。

お楽しみいただけたら幸いです。


 赤。


 赤い街。


 それは燃え盛る炎の所為か、それとも撒き散らされた鮮血の所為か。

 とかく、赤く──紅い視界セカイ

 その中で。

 煉瓦造りのその街を灼熱の舌が舐めまわす、その中で。

 ぼくはヌメリとした、情景に不釣合いに冷たい地面に倒れ伏していて。

 その傍では。

 ぱららららら、と。

 玩具オモチャの機関銃が、安っぽい効果音と現実の死を振りまいていた。


 これが、俺の原風景───


     ◆


 世界は案外シンプルだ。

 よくある御伽噺のように、弱きものが強きものを倒す、なんてことにはいかない。

 力のある人間が世界を支配し、お金のある人間がその支配を操る。

 弱肉強食、とは厳密には違うが。

 より強いものが弱いものをほふる。それはあまりにも明解すぎる世界の摂理で。

 まあ、それが全てとは言い切れないのだけれど。

 それでもやっぱり全体的に、強いものが弱いものをどうにかするってのは、避けられない理だ。

 だから、俺たちはそれに従っていかなければいけない。

 たとえ、どれだけ理不尽な目に遭おうとも。


     ◆


 「解かったかな?」

 俺、坂木真砂は顔の筋肉を総動員してこれはもう惚れるしかないというキメ顔をつくり、これ以上考えられないくらい最高のトーンの声で、そう訊ねた。


 「「「わかりませーん」」」


 けれど、帰ってきたのはそんな甲高く無邪気な答えで。

「うん、正直だねー。先生正直な子は好きだよー」だから「お前ら全員ちょっと逆立ちして廊下に立ってろ」

 キメ顔は瞬時に憤怒の形相へ変化する。とても教壇に立っている人間の表情とは思えないものになっているだろう。

「ろうかにたってろー、だってー」「ふるーい」「あいつほんとにこうこうせー?」「まさごいつのじだいのひとー?」「しょうわ?」「いやめいじじゃない?」「えどだよえどー」「いっしゅうまわってみらいじん?」 

 子供たちの絶え間のない言葉の応酬。よくもまあそんなに掛け合いがポンポン続くものである。これが若さかそうなのか。

 しかし随分言いたい放題だなあコイツラ!

「いよーし、上等だテメエら! 廊下出て一人ずつ順番にかかってこいやあ!」

 俺の言葉に、教室の全ての空気が一瞬固まった。

 普通ならばここで大人気なく怒ったことで教室の子供たちが萎縮してしまったと判断できるが、しかし──

「まさご・・・ホントにいいの?」

 目の前のくりくりとした目にショートカットの小柄な少女が、静かなトーンでそんなことを、言った。

「え?」

 空気。静寂の中の、しかし活力に満ちた空気。

 それが先生に公式に教室で騒ぐことを認められた小学生の、歓喜の気配であることに気付いたときには、もう遅かった。


「──いくぞみんなあああああ!」

「「「うおおおおおー!」」」

 ガキ大将っぽい少年の掛け声に次いで、教室の窓ガラスが割れんばかりに震えるほどの叫び。30人が一斉にきらきらとした表情で、牙をむいた。

 獲物は、俺。

 背中にいやな汗が流れる感覚。

「え、ちょっと、一人ずつだってば、一斉に立ち上がってひゃっはーとか奇声上げんな一体何のマンガ回し読みしたんだ不要物は持ってきちゃいけないって習わなかったのか習わなかったなそういや俺も習ってないや、ってああ! お前ら静かに闘志をたぎらせながらファイティングポーズとるな、コラそこ特殊霊装の竹刀とか持ち出すんじゃ──ぷげら!?」

 と。

 まあ、そんな俺の喚きは、この段階で強制終了された。

 理由なんて解からない。

 横合いからナニカを叩き込まれたと感じ取った、次に俺が認識したのは、逆様になってぐるぐると回る教室と子供たちだった。

 それに少し遅れて、俺は自分が宙をきりもみ回転で舞っていることにを認識したが、時既に遅く、俺の目の前には黒緑の壁が迫って──


「ひでぶっ!」


 どこかで読んだマンガの悪役のような断末魔を残して、俺の意識は闇に沈んだ。……ならよかったのだけれど。残念ながら、適度に鈍痛を感じる程度にかろうじて残された感覚器官で受信できたのは、

 「馬鹿じゃないの? ねえ、馬鹿じゃないの?」

 と、響く聞き覚えのある声による罵倒と、同い年位の気の強そうなツリ目少女がずびしっ! と俺を指差している姿だけだった。

 ところで、今は丁度よくそちらを向いているけれど、俺の首は果たして体の向きに対して正常についているのだろうか。それが問題だ。

 そんな疑問に遅れて、わああああああ! とあがる歓声。

「セナせんせー!」「セナせんせーだ!」「セナせんせーがマサゴを飛び蹴りでふっとばしたぞ!」「空中で3コンボぐらいきめて後ろの黒板まで叩きつけたあ!」「さすがセナせんせーぼくたちにできないことをへいぜんとやってのけるううう! そこにしびれるあこがれるうううう!」

 

 ああ、そうか俺はあの一瞬でそういう目に遭ったのか。ようやく理解できたよ。

 うん、今日初めて感謝するぞ子供たち。

 ……なあ、ところでお前ら、やっぱり読んでるマンガのチョイス変じゃないか?


 そんな、思ったことを言葉にすることも出来ず、今度こそ俺の意識は遅れてきた刺すような痛みの中、闇に沈んでいった。

 最後に感じた、頭を靴でぐりぐりやられる感覚だけは嘘だと信じたい、なんてことを考えながら。



はい、序章の第一話でございました。

えっとなんというかこう、すみません。

書きあがったらいつもどおりのコメディーでした。ほ、他の作品とキャラカブってなんか、いないんだからねっ! ね…。


ああっ、待って、行かないで! 大丈夫! 世界観とか魔法とか、これからガンガン出てきますから!


え、えっと。次回も皆さんと会えたらいいな…。

それでは、また。

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