第二話
さて施設を脱走した屍達はどこに行ったかというと……迷っていた。
「おい、ここどこだよ?」
「そういえば施設でたらずっとジャングルだって事忘れてた」
脱走を促したリーダー格の男が頭を掻きながらそう宣った。頭を掻きながら指が次々と落ちているのは秘密だ!!
「まぁいいじゃないか。気楽に行こうぜ。どの道俺達は喰わなくても死ねねぇんだから歩き続ければいつか出られるだろ」
と楽観的な結論に行きあたった。
いいなぁ~死ねない体ぁ。俺も死ねないけど……。
そして千人もの屍達の大行進は昼夜を問わず三日も歩き続けた。鬱蒼と生い茂るジャングルの木々を自らの拳を砕きながら(文字通り砕きながら)直進してそして三日後の夜ジャングルに寄り添うようにその村はあった。
簡素な家々が建ち並んでおり、電気もちゃんと通っているのか窓から光が漏れている。
「よしここで食べ物をもらおう」
リーダーがそう言って一つの家のドアをノックした。力加減が絶妙だったのか今回は手が外れる事もなかった。
ドアの向こうから「はぁーい」と声がしてドアが開いた。
だがドアは予想よりも勢い良く開かれゾンビは躱す事が出来ずドアに当たってしまった。
「あっごめんなさい大丈夫?」
出てきたのは四十歳ぐらいの恰幅良い女性が口に手を当てながら謝る。
「あっいえいえ大丈夫ですよ」
手を振りながら返す屍だがそこでポロリと首が落ちた。
………………沈黙が降りた。ジャングルの中から葉が擦れる音と虫の鳴き声だけが聞こえてくるがここだけはそんなのからは隔離されている。
良い夜だな~……
やがて女性はふるふると震えながらもうすでに再生の終わった男の顔を指差し口を徐々に開け、三、二、一、
「きゃ~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!」
と大声で(いやもちろん)悲鳴を上げた声に驚いた屍達は辺りをワタワタと動き回り、奥から銃を持った男が出てきた。
「どうした?!」
「あ……あ……」
恐怖で声が出なくなったらしい。又は悲鳴を上げて喉が枯れたのかまぁどちらでも構わないが……。
とりあえず男は銃は構えて狼狽えている屍達に向かって、
「お前達!! 俺の妻に何をした!!」
屍達は一瞬動きを止めてすぐに否定するために手と顔を横にぶんぶんと振る。
だが、このバカ達は学習能力がないのか勢い良く振り過ぎたために手と顔が捥げてしまった。
しかも全員が……。
その光景を直に見ていたらベジタリアンに目覚める事間違いなし!
「この化物!!」
ドンッ ((╬ಠิ益ಠิ))▄︻┻┳═一)゜д);。´・.
猟銃が火を吹き、屍の一体の胸を撃ち抜いた。
人間だったら確実に即死しているだろう一発を受けた屍だがそこで平然と受け止め、傷の回りの肉が集まって、その傷を埋めていき、最終的には再生した。
男は茫然とするがすぐに立ち直り、
「うわ~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!」
悲鳴を上げながら銃を乱発する。
ドンッ! ドンッ! ((╬ಠิ益ಠิ))▄︻┻┳═一)゜д);。´・.
と連続して響く。
銃を撃ち尽くした頃、屍達の体は上半身の全てが吹き飛び、残った下半身からは噴水の如く血が噴き出す。
男の顔に幾つかの雫が付く。そして血の噴水が収まった時そこには完全に再生した屍の上半身があった。
今度こそ完璧に完膚なきまでに男の精神は壊れ、現実から逃れるように気絶した。
屍は自分が原因とは露知らず倒れた男を揺さぶった。
「大丈夫ですか?」
「う~ん……ハッ!」
と男は一度眼を覚ます……が!
屍を見てまた気絶した。
その反応でまた屍達は更にパニックを起こした。
「どうしたらいい?! どうしたらいい?!」
パニックを起こすリーダー格の屍
「聞いた事がある。倒れた人を助ける為には両の手足を縛って元気になれ。元気になれと三回唱えれば起きるらしい」
別の屍が助言を述べる。もちろんどこにそんな力があるってか普通間違ってるって気付けよなってぐらい間違っているが……。
どこをどう間違えたら両手両足を縛る事になるのだろうか。
しかも元気になれってありえないだろう。
「よしどこからか縄を調達しよう。この人達を助けなければ!」
いやいやその人達を助けたいならお前達が何もせずにどこかにいけばいいんだよ。
縄を探そうと動きだそうとした屍達が動き出そうとした時、
「お前達どうしたか?」
騒ぎを聞きつけたのだろう底化の家から様子を見に来た男が屍達に声を掛けた。
「あの! 縄がどこにあるか知りませんが?」
「縄ならそこら辺の納屋にあると思うが……てかお前ぇ達ここの住人じゃないだろう何処から来たんだ?」
「えーとあっちからです」
屍は間抜けにジャングルの方を指差してそう呟く。
「嘘いうなや。あっちは深い深いジャングルしかないぞ。あんな所から人が来れるはずがないやろ~」
ハッハッハッと豪快に笑いながら肩をバシバシ叩きまくる。
その度に腕や頭が落ちているが眼に入っていないのか構わず叩き続けている。
そんな中やっと男は地面倒れている夫婦二人に気付いて駆け寄る。
「おい! どうした?!」
と声を掛けながら頬を叩いて起こそうとする。
「ん……」
銃を持った男が眼を覚まし、声を掛けた男の後ろにいる屍達を指差して、
「化物~~~~~~~~!!!!!!!!!!!」
あらん限りの声と共に引き金を引いた。
声を掛けた男ごと屍を撃った。
きっと知り合いできっと友達だったであろうその男を撃ち抜いた。
それは正しく悲劇だった。起こるはずがなかった悲劇。
もし撃った男が正気だったら。もし撃たれた男が家から出なかったら。もし屍が逃げ出さず収容所で大人しくしていたらこの悲劇は起こらなかったんだろう。
だが今更後悔しても仕方がない。屍は蜘蛛の子を散らす様に逃げ出した。
男は眼を血走らせながら屍撃ちながら追いかける。
そして悲劇は連鎖する。
騒ぎを聞き付けた住人が家から飛び出して来る。
そして逃げ惑う屍とそれを追いかけている男を見て驚くが男の錯乱に気付かずに近づいて声を掛けた。
「おい! どうした!」
「化物! 近づくな!」
ズカンッ
錯乱している男は躊躇いなく頭に照準を合わせて引き金を引いた。
残響する銃声、ゆっくり倒れていく。屍と他の住人に降りる一瞬の静寂。そして……
パニック!!!




