1・二人の始まり
20年くらい前の「i-mode」で書いたヤツです
テキストを無くしてたけど、バックアップを見つけ何とかサルベージ
こっちは、まだ手を着けませんが。テキストだけ貼っておきます(そのまま放置しそう…)
1・二人の始まり
休日の公園。暖かな日差しの下で。
アリア・ランドールは、読んでいた本に栞を挟むと、座っていたベンチで軽く背を伸ばした。
休日は毎週、ここで読書をするのが、彼女の習慣だ。
と、隣の席に、若い男が座った。
なんとなく、観察する。
涼しげな、それでいて精悍な顔立ち。
長身で、均整のとれた身体。
ジーンズにシャツという姿、そして手にしたノート。
学生、だろうか。
つい見惚れる程の、素敵な人…。
彼が、こちらに声をかけてきた。
「毎週、ここにいるんですか?」
「え?」
「先週と、その前の週も見かけたので」
アリアは途惑った。もともと内向的な性格で、他人と、あまりうまく会話ができない…。
「ええ、まあ…」
しどろもどろに声を出すと、その男は、微かに微笑み、手にしていたノートを開いてみせた。
「証拠品です。これが先週の、貴方の姿だ」
そのノートの、ラフスケッチ。池の噴水の向こうに、ベンチで読書をする女の姿。
「これ…?」
「先週、池の向こうから、こっちを見て風景を描いていたんです。その前の週もですね。それで貴方の姿があって、憶えていたわけです」
「あ、あ…」
「いい公園ですね、ここは」
お気に入りの場所を褒められたことで、アリアは、自分が褒められたように思えて嬉しくなった。
だから、言葉が澱まずに口を出たのだろう。
「ええ、とてもいい場所ですわ。いつも、穏やかで」
その日は、それだけで終わった。ふたりは名前も名乗らず、別れた。
そして次の週。アリアが同じ場所で本を読んでいると、また、彼が来た。
「こんにちは」
彼は軽く頭を下げ、隣に座る。アリアも返礼し、そしてそれが自然に出来たことに、我ながら軽い驚きを覚えた。
対人関係は、苦手だ。特に…年齢が近い男性の相手が、最も苦手だ。
だが、彼に対しては、何故か普通に接することができる。
何故だろう。彼の持つ雰囲気のせいだろうか。
「今週も…絵を描いてらしたんですか?」
驚いたことに、自分の方から先に、言葉が出た。
「そうです」
「いつも同じ風景を描いてらっしゃるの?」
「今日は…ちょっと違いますね」
彼は手にしていたノートを開いて見せた。
…アリア・ランドールが読書をしている姿が、描かれていた。
「まあ…」
「最初は風景画のつもりだったけど、人物画に近くなったかな」
「少し、美化し過ぎてません?」
「そのままですよ」
彼は僅かに、微笑んだ。
惹き込まれるように、その表情を注視してしまう。
ふと、目が合った。
慌てて視線を外し、うつむく。
僅かな沈黙の後、彼の声が聞こえた。
「お名前を、お聞きしてもよろしいですか?」
普段より、やや高いトーンで答えてしまう。
「アリア・ランドールといいます」
「アリアさん。いい名前ですね」
再び、僅かな沈黙。
アリアは、かなりの勇気を振り絞って問いかける。
「あ、貴方のお名前は…」
「ケインです」
彼は僅かに笑顔を浮かべ、言った。
「ケイン・フォーレン」
…これが、ふたりの始まりだった。
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