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質量を持った光。それはモザイク。


 股間を謎に光らせる金髪のイケメンは、亀怪獣の足に向かってタックルを仕掛けた。


「今のうちに早く逃げるんだッ!!!」

「いやアンタは大丈夫なのかッ!?」


「僕は大丈夫だよッ!!!」

「股間が大丈夫そうじゃないがッ!?」


「光ってるから大丈夫だッ!!!」

「それやっぱ光ってるよなッ!!!」


 悠馬は困惑した表情を見せながらマキアの顔を見る。


(これどうする!?)

(おそらくは何らかの能力持ちなので大丈夫かと。ただ、通りすがりの変態の可能性もあるので直ぐに助けに入れる位置で様子を見ましょう)

(……確かに。俺達が責任を持って警察に突き出さないと駄目だよな)


 マキアは空中でホバリングしながら近場の建物の屋上へと着地した。


「す、すげぇな……持ち堪えてる」


 金髪の変態は亀怪獣の足をガッチリと掴み離すことなく受け止めていた。

 亀怪獣は空いた方の足に重心を移し、掴まれている方の足を後ろに引こうとする。

 しかし、その動きすらも許されることはなかった。

 亀怪獣は腕を大きく振り上げ金髪の変態に向かって振り下ろした。


「オレカラ ハナレロォオオオオオ!!!」


 強烈な衝撃波で周囲の建物の側面が崩れ始めた。それに伴い、小さな石材が砂埃となって辺りを舞う。


「おいおい!大丈夫なのか!?」


 悠馬の声に応えるかの様に砂埃が晴れると、そこには金髪の変態が生存していた。

 より具体的言えば、傷ひとつなく、寧ろ股間がより一層に輝いていた。


「……やれやれ、困った子だな」


 金髪の変態がそう小さく呟くと、亀怪獣の体がふわりと宙へと浮いた。

 それはまるで、小さな蟻が自身よりも何倍も大きい物を持ち上げている様だった。


「ガアッ!?」


 亀怪獣は驚愕の声を上げ、自身の足元を見る。

 すると、そこには自身の片足を掴み、全身ごと持ち上げる金髪の変態がいた。


「悪い子には――――お仕置きが必要ですね」


 そう言うと、金髪の変態は亀怪獣を重力に任せる様に地面へと叩き落とした。

 巨大な質量が凄まじい程の勢いで倒され、周囲に爆風が押し寄せる。


「……へぇ、タフですね」


 地面に叩きつけられた亀怪獣はゆっくりとした動作で立ちあがろうとする。

 しかし、足が完全に折れているのか苦悶の表情を浮かべながら中々立てずにいた。


「オレハ オカシクナイ オマエタチガ マチガッテル」


 亀怪獣は口を大きく開き、金髪の変態の方向を向く。

 上下の顎の間にエネルギー玉が生成されていく。

 しかし、金髪の変態は両腕を組みながら、一歩も動かない。


「来い、君の心を受け止めてあげよう」

「フザケルナァァァァァァァァ!!!」


 蓄積され大きくなっていくエネルギー玉を前に悠馬は考える。

 そして、直ぐさまに周りを見た。


(マキア、あのブレス攻撃の範囲はどのくらいになる?)

(目測になりますが、最大溜めのブレスがそのまま金髪の変態に当たった場合、変態の後方400メートルまで焼け野原になるかと) 

(マジかよ!? 何とかならないか? 流石に逃げ遅れた一般市民とかが死ぬのは見たいくないわ!)

(具体的にマスターは私にどういった対策を求めますか?)

(……)


 悠馬は一瞬考えた後、口を開いた。


「全員無事でいて欲しい」 


 マキアは小さく微笑むと、丁寧に一言答えた。


「かしこまりました」

 

 長い銀髪は光り輝き始め、サファイアのように青い目は赤く変色した。

 マキアは右腕を水平になる高さまで挙げると、小さく呟いた。


「――――【拡張式遠隔武装γオール・ラウンズ・ビット】展開」


 マキアの背中から生えていた白銀の翼が宙へと浮く。

 そして、羽根束一つ一つが細かなパーツへと分解されていき、複雑な機動で舞い始めた。

 それは鳥達が集団となって綺麗に整列しながら飛ぶマーマレーションの様だった。


 飛翔する【拡張式遠隔武装γオール・ラウンズ・ビット】は金髪の変態の後方へ移動すると、扇子を開いたかの様な動作で円形状に展開された。

 武装と武装の間に青いプラズマの様なものが行きかい始める。

 

「……これは」


 金髪の変態は自身の後方に展開された何かを観察するように見る。

 

 なんだろう……小さな金属板かな? 僕の事を攻撃する感じではなさそうだけど……まぁ、少なくとも目の前の暴走【怪物(ガルド)】君のものではなさそうだね。

 

 周囲をキョロキョロと見まわす。

 すると、近くの建物の屋上に二つの人影が見えた。

 何らかの能力を発動しているであろう銀髪の少女と、心配そうにこちらを見下ろしている黒髪の青年。


 ……なるほど。

 何らかの方法で手を貸してくれるのかな?。

 ふふっ、別に必要って訳ではないけれど……都市民が心配してくれるというのは嬉しいものがあるね。

 これは僕もカッコいい所をみせないとッ!


「……なぁ、マキア。なんであの金髪の変態はニッコニコでこっち見ながら手ぇ振ってんだ?」

「どうなんでしょう……お尻を隠してくれた事に感謝してるのかもしれませんね」

「それで喜ぶやつは最初から全裸でいないだろ」

「ならマスターの事が好きとかですかね?」

「ぐぼあぁ……」


 泡を噴きながら悠馬はその場で倒れた。


 そうこうとしていると、亀海獣の口に生成されていたエネルギー玉は完全な球体状を形作り、準備が完了したようだった。


「クタバレ ガーディアンズ!!!」


 空気を割る轟音を鳴り響かせながら、エネルギー玉は射出された。

 しかし、金髪の変態は一歩も動く事なく両手を大きく広げて待ち構えた。

 

「来たまえ!」


 エネルギー玉は熱を放出しながら金髪の変態の体に衝突し、ギュルギュルと回転しながら体の表面を削り前へと進み突き破ろうとする。

 しかし、金髪の変態は爽やかな笑顔を見せながら微動だにしない。

 更に寧ろあろう事か、エネルギー玉を上から下に向けて手で軽く押し込み自身の股間に当て始めた。


「ふぅ、ちょうど痒かったんだ」


 亀怪獣が放った高出力のエネルギー玉は、ついには金髪変態イケメンの玉すら超えることが出来ずに霧散した。

 

「……コノ…………バケモノ……ガ――――」


 亀怪獣は絶句し、力尽きたかの様にその場で倒れ気絶した。

 体はみるみるうちに小さくなっていき、終いには150センチ程の大きさへと変化した。

 金髪の変態は亀怪獣の近くへと歩み寄り、ゆっくりとしゃがみ、亀怪獣の首筋に指を2本当て心拍を図る。


「……大丈夫そうだね」


 金髪の変態は安堵の表情を見せ立ち上がると、建物の上にいる2人を見上げる。


「ありがとう!もう大丈夫ですよ!」


 悠馬は金髪の変態の事を見下ろしながら観察する。


(マキア、コイツの能力って何か分かったか?)

(確信はありませんが、おそらくは【超能力(サイコス)】の類かと)

(強靭な肉体って事なら【怪物(ガルド)】とかありえるんじゃないのか?)

(【怪物(ガルド)】は身体に獣の特徴が現れるのでどうなんでしょう……アソコが獣とかならありえるかもしれませんが)

(……想像したくないな)


 金髪の変態の体が汗でテカテカと光っている。

 本来であれば気持ちの悪い光景ではあるが、何故かこの変態は妙に様になっているように見えた。


「……ん? 誰か来てね?」


 すると、箒に乗った何者かが、ビルの合間を縫う様にコチラへと向かってきているのが見えた。

 黒色の長い髪を三つ編みに組み、ツインテールに纏めているその女性は、自身が着ている制服と同じ物を腕に抱きながら、金髪の変態の元へと着地した。


「ちょっとウィリアム先輩! 服! 服!」

「おっと、急いでたのでつい」

「せめてパンツくらいは履いてくださいよ!」

「わるいが、パンツなんて拘束具を履いていたら瞬時に脱げないだろう?」

「いや脱がないで下さい! 先輩は一応、都市警察なんですから!」


 そう言うと、黒色の髪を持つ、如何にも魔女ですと言わんばかりの魔女帽子を被るその女性は手に持っていた制服を男に押し付けた。

 金髪の変態は渋々それを受け取ると、ズボンを履き、上着を羽織った。

 そして、その光景を見ていたコチラの存在に気がつくと、少しだけ気まずそうに微笑んだ。


「すまないね、見苦しいところをお見せした」

「いや、見苦しい所は今消えたから問題ないぞ」

「おっと、確かに乳首は光っていないから見えてしまっていたね」

「違うそうじゃないッ!」


 金髪の変態は服装を整えると、悠馬とマキアに向かって会釈をして見せた。


「申し遅れました。僕は、四界都市警察南口支部所属、機動隊隊長のウィリアム・ゴールドと申します。そして、こちらの女性は同じく南口支部所属、機動隊隊員のユニ・アルフォンスです」


 ウィリアムに紹介された黒髪の女性は同じく会釈を見せる。

 

「あ、今日、難民として来ました中田悠馬です」

「同じくマキアです」


 二人もまた会釈を見せ友好的な態度を見せる。


「なるほど、どうりで見たことのない顔だったわけだ」

「はい、ちょうどさっき来たばかりで何も分からずでして」

「よし、じゃあ――――都市警察になろっか」

「……え?」


 この変態は何を言っているんだ?

 都市警察!?

 今日来たばかりの右も左も分からない素人に警察だって!?

 どうゆうことだってばよ


(マスター、この話に乗りましょう)

(……本気で言ってる?)

(はい。警察組織であれば色々な情報を持っていそうですし、何より現在無職のクソザコナメクジの私達にとってこれは都合が良すぎます)

(た、たしかに……でも金髪の変態が居る組織って絶対ヤバそうだよな)


 すると、ウィリアムの言葉に対して、後ろで話を聞いていたユニが強引に割って入ってきた。


「ちょ、ちょっと待って下さい先輩! 所長に無断でそんな勝手な事は……しかも今日来たばかりの正体不明の存在を勧誘ってヤバいですよ!」

「ユニ、僕は彼らの『善意』を見たんだ」

「ぜ、善意ですか?」


 ウィリアムは一切引く姿勢を見せず、寧ろ堂々と答えて見せた。


「そうだ。見ず知らずの市民達の為に我が身を犠牲に力を行使する。その自己犠牲の精神こそ、我々都市警察に必要な要素だと思うんだ。つまり、彼らはそれを満たした時点で、既に試験を突破していると言っても過言ではない」

「で、でも……」


 悠馬はマキアの方をチラッと見る。

 すると、その意図を理解したのか、マキアは一歩前に出てその場でゆったりと倒れた。


「あぁ……家も、お金も、職もない私達はこれからどうやって生きていけばいいのでしょうか」

「ほらユニ! 困った時はお互い様だろう?」

「ちょ、先輩ッ!」


 ユニは疑う様な視線でコチラを見てきた。

 

 よし、ここは俺の出番だな。

 今こそッ! これまでのフリーター人生の経験を活かす時ッ!


 悠馬は覚悟を決めた顔を見せながら勢いよく飛び上がる。

 そして、それはもう美しいジャパニーズ土下座をして見せた。


「ここで働かせて下さいッ! 雑用でも何でもしますッ!」

「え、ちょ待って……」

「お願いしますッ! ここで働かせて下さいッ! 働きたいんですッ!」

「待って! ほ、本当に……」


 ユニは助けを求める様にウィリアムの方を見た。

 ウィリアムはニッコリと微笑むと、右手の親指を真っ直ぐに立て答えた。


「くっ……」

「お願いしますッ! 美しく聡明なユニ先輩ッ!」

「わ、分かったわ……所長に掛け合ってみるわ」

「ありがとうございますッ! この御恩は一生忘れませんッ!」

「ちょ、静かに! 見られてるから! 皆んなに滅茶苦茶見られてるからッ!」


 いつの間にかに、周囲には人だかりが出来ていた。

 そして、その奇怪なものを見るかのような視線はユニに集中した。


「あっ……あっ…………」


「これから宜しくお願いしますッ! 偉大なるユニ先輩ッ!」

「宜しくお願いしますッ!!!」

「もう分かったからァァァァァァァァァァ!!!」


 ユニは、ワザとらしく大声で叫ぶ悠馬の後頭部を箒でぶっ叩いた。

 こうして、二人は都市警察に潜入する事に成功した。




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