カラオケ
次の日登校中に、後ろから蹴りを喰らって、芳山の仕業だった。
「先輩、チース」
「何だ。芳山か」
「スランプ、抜けた見たいですね」
と嫌らしい笑みを浮かべて僕を見た。
「昨日の先輩の小説、マジ受けたんですけれど」
また始まった。芳山の僕の小説に対するいじりが。
「予言者の小さな女の子が現れて、メグを探していたんすよね。この小さな子供って、先輩ロリコンですか?」
「ロリコンじゃないよ。この小さな子供はこれから起ころうとする・・・」
「起ころうとする?」
「これ以上はネタバレになってしまうから、続きはまた明日読んでね」
「そう言えば、先輩って妹がいるって言うじゃないですか?その妹さんとはうまくやっているんですか?」
「うまくも何も、妹はまだ小学生だ。それに妹は僕の作品を見たことがない」
「妹に『お兄ちゃん』言われて楽しんでいるんじゃないのですか?」
「別に楽しんでなんかいないよ」
「先輩、妹に変な気を起こしちゃダメですよ」
「何を言っているんだ。僕がそんな人間に見える?」
「そんな人間その者じゃないですか?先輩はキモいから」
さすがの僕も芳山の言動に怒りを覚えてしまい、黙り込んだ。
「あれ、先輩、怒りました?冗談ですよ。先輩みたいな人が妹に不埒な事をするわけないですよ」
「・・・」
「先輩、機嫌直して下さいよ」
そんな時である。
「おお、ヨッシーじゃん」
芳山の友達が三人やってきた。
「チース」
「よっしー、今度の日曜日開いている?」
「何々?何かあるの?」
「うちらでカラオケに行こうと思っているんだけれども」
「良いね」
すると芳山とその友達達は僕に視線を送る。
その視線は僕も来いと言う視線だった。
「先輩ももちろん来るでしょ。どうせ、暇なんだし」
本当にどうしよう?僕はカラオケに行った事もないし、あまり歌とかには興味ない。
すると芳山が僕の腕を掴んで嫌らしい笑みを浮かべながら、
「先輩、行きましょうよ。どうせ、日曜日暇なんでしょ」
「分かったよ、行くよ」
そう言う事で今日は金曜日、そして日曜日になり、僕は芳山達のカラオケに行くことになってしまった。
待ち合わせ場所まで到着すると、芳山はピンクのワンピースを着て腰に小さなポシェットを見につけている。
「先輩!」
そう言って、芳山は僕に手を振った。
芳山をあわせて四人の女子がいる。
僕はあの中には入れないと思って芳山達と一緒に歩くだけでも凄く緊張した。
カラオケ屋に到着して、一時間一人六百円で二時間歌う事になった。
店員に部屋まで案内されて、部屋は凄く広かった。
僕は歌わずに隅っこにいようと思っていた。
どうしよう、凄く緊張する。
芳山達を見てみると、何やらリモコンの様な機械で操作して、歌を選曲して歌っていた。
「ゆっこ、良いね、はじめから十八番の茨城46の『ハートにキュン』を歌うなんて」
「任せてよ。とにかくみんな張り切って参りましょう」
そのゆっこが歌う声は本当に上手だった。
そして芳山の出番になり、芳山はABC48の歌を歌った。
芳山達が歌う曲は曲名は知らないが、どこかで聞いたことがあると言う事だった。
それにしても芳山の奴、歌が下手なのに本当に楽しそうに歌っている。
カラオケで歌がうまいとか下手とか関係ないみたいだ。それに続くように、シーマと言う子も島さんと言う子も最近のアイドルグループの歌を歌っていた。
二人ともまあまあうまかった。
「凄いじゃん。シーマに島さん」
「これ結構歌うんだ」
シーマと言うポニーテールの子が言う。
「やっぱカラオケは歌わなければ損だよね」
島さんと言う子が言う。
これで一通り、みんな歌った事になる。
すると芳山はニヤリと僕の方を向いて。
「さあ、次は先輩の番ですよ」
「僕は、カラオケはちょっと」
「だったら、カラオケに来た意味ないじゃない、とにかく先輩も腹をくくって歌って下さいよ」
仕方がない、こうなれば自棄だ。僕達が生まれる前のユーネットワークのゲットビーを歌う事にした。
この曲は僕達が生まれる前に評判になった曲だ。だから芳山達も知っているかもしれない。
そう言う事でリモコンを操作して、ゲットビーを歌う事にした。
僕が歌うと、芳山はタンバリンを叩いて盛り上げていた。何だろうそうやって盛り上げてくれると躍起になってしまう。
そして歌い終わると。
「先輩、キモかったですよ。先輩のゲットビー」
もう踏んだり蹴ったりだが悪い気はしなかった。その後もみんなでカラオケを楽しんだ。
本当に今日は疲れてしまった。あの後昼食を食べて、公園で喋ったりして。
とにかくこれはこれで良かったのかもしれない。
友達か、そう言えばこの学校に入ってから友達なんていなかった。
でも今日は芳山達と少し話しただけで何か楽しかった。
僕は一人でやることが大好きだから、静物デッサンしたり、一人で小説を書くことに熱中したりした物だった。
さて今日も小説を書こうと思う。
そんな時、珍しく母親帰って来ていて、
「ねえ、お兄ちゃん。このプラネタリウムのチケットなんだけれども、良かったらいる」
そう言って母親は僕にプラネタリウムのチケットを二枚渡して来た。
実を言うと僕は星が好きなんだよな、いつかオーロラを見たいと思っている。
それよりもプラネタリウムのチケットだが二枚ある。思い切って芳山を誘おうとしたが、あいつ来ないだろうと思っていた。
またキモいとか言われそうだし。
でもあいつ来るかもしれない。
今日カラオケは結構楽しかった、だから、そのお礼として誘って見るのはどうだろうと思っている。
そうしてチケットを鞄にしまい、僕はいつものように小説を書くのであった。
小説を書いて思ったんだけれども、あいつにはスランプを抜け出す術を教えてくれたんだよな。
とにかく気合い入れて頑張れって。
次の日、月曜日、僕はプラネタリウムのチケットを二枚持って芳山を誘おうかと思ったが、僕にはそんな勇気はなかった。
まあ、二枚あるんだからな、妹でも誘って見ようかと思っている。
すると芳山は。
「チース、先輩おはよう」
そう言われて僕はプラネタリウムのチケットを隠した。
「お、おはよう」
「先輩何を隠したんですか?」
やばいプラネタリウムのチケットを思わず、芳山の前で隠してしまった。
「何でもないよ」
すると芳山は嫌らしい顔をして。
「何を隠したんですか?」
そう言って芳山はそのずば抜けた身体能力を生かして、僕が背中に隠したチケットを取り上げた。
「ああ、ちょっと芳山さん」
「何すか?これ?プラネタリウムのチケットですか?」
「ああ、新聞屋に貰って丁度二枚あるから・・・」
「二枚あるから私を誘おうとしたんですか?」
相変わらず嫌らしい顔をして僕に攻め寄ってくる。
「ああ、そうだけれども、別に興味ないだろう」
「やっぱり私を誘おうとしたんですね。ヘタレな先輩が私に直接誘う勇気がないから、こんな形で誘う事になる何てね」
「ああ、昨日のカラオケの件もあるし、二枚あるから芳山さんを誘って見ようと思って・・・」
「きゃあああ、キモいキモいキモいキモい」
そう言いながら芳山は僕の背中を叩くのであった。
「で、来るの?来ないの?」
「これは先輩の勇気に免じて行くことにしましょう」
心なしか芳山は何か嬉しそうにしていた。
まあ、誘いに乗ってくれて本当に良かったのかもしれない。
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