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僕のデッサンをする芳山

次の日、僕が書いたメモリーブラッドの小説のアクセス回数を見てみると、いつも以上に上がっている。

 これは本当に小説家冥利に尽きる。

 芳山も見てくれているだろうか?

 放課後になり、美術部の美術室に行くと、芳山はいなかった。

 今日は来ないのだろうか。

 何か芳山が来ないと何か寂しい感じがして、ちょっと切なくなったりする。

 まあ、良い、うるさいのがいないならこれはこれでデッサンに静かに打ち込める。

 早速デッサンを始めようとすると、ガラリとスライド式のドアが開き芳山は来た。

「チース、先輩、今日も私は絵が上手になりたいです」

 何だ。いつも通りに来たじゃないか。

「どうしたんですか先輩、私がいないからって寂しい思いをしていたんじゃないんですか?」

 いつものように嫌らしい笑みを浮かべながら僕に迫ってくる。正直そうだったので。

「ああ、芳山さんが来ないと何か寂しい思いをしちゃったよ」

 とつい失言をしてしまった。

 すると、芳山は複雑そうな顔をして、またにやりと嫌らしい笑みを浮かべて。

「先輩、キモいっすよ。私がいないからって寂しいなんて」

 僕の背中をバシバシ叩く。

「痛い、痛い」

 と言っていると、

「ねえ、先輩?」

「ん?」

「今日は人物画を描きたいのですが」

「人物画って誰の事を描きたいの?」

「もちろん先輩です」

「ええ?僕の事を描きたいの?」

 僕は驚いてしまう。女子から僕自身の絵を描いたい何て言われたのは初めての事だったからだ。「ダメですか?」

 すると芳山はにやりと嫌らしい笑みをこぼして何か嫌な予感がして来た。

「別に良いけれど、僕のどんな絵を描きたいと言うの?」

「まあ、先輩はいつものように絵を描いて下さい、その姿を描きたいと思っていますから」

「分かった」

 そう言う事で芳山は僕が絵を描いている所を正面で見られて描いている。

 何か落ち着かないな、このシチュエーション。 芳山の方を見てみると僕の事をジッと見つめている感じだった。

「先輩、私に見られて落ち着かないですか?」

 確かに落ち着かないがでも芳山は本気で僕の事を描こうとしている。だから「別にしていないよ」と嘘をついて置いた。

 まあ、我が美術部は絵を描く事がメインだから芳山が僕の自然体を見たいと言うなら、それも悪くないと思っている。

 でも芳山みたいなかなりかわいい女の子にそんな目で見られると、なぜか緊張する。

 とにかく平常心と自分に言い聞かせ、時計を見ると、まだ午後四時だ。何だ。いつもなら絵に集中していると時間なんてアッという間に過ぎてしまうのに今日はなぜか時間が長く感じる感覚にとらわれていた。

 芳山の方を見てみると僕の方をジッと見つめている。

 そりゃそうだよな。女子にこんなに見つめられる何て、未だ人生で初体験の事だもんな。

 芳山をモデルにしたことはあるが、自分がモデルなんて考えた事もなかった。

 僕は緊張しているが、平常心と自分に言い聞かせていつものデッサンをしている。

「あれ、先輩、私に見つめられて緊張しているんですか?」

「べ、別に緊張なんてしてないよ」

 僕は芳山の言うとおり緊張しているが、とにかく平常心平常心と言い聞かせて、いつものデッサンをしている。

 そこで気がついたが、いつもならデッサンはうまく行くはずなのだけれども、自分が描いた静物画のデッサンを見てみると、素人が描いた様な絵になってしまっている。

 これは緊張しすぎなのかもしれない。

 芳山の方をチラリと見てみると、芳山と目が合って、芳山は。

「先輩、きょどり過ぎですよ。いくら女子の私に見つめられるからって」

 ニヤリと嫌らしい目つきで見る芳山。

 すると芳山の友達達がやって来た。

「「「チース」」」

「チース」

 芳山も挨拶する。

「ヨッシー今日は何をやっているの?パイセンに向かって絵を描いているの?」

「うん」

 すると友達は僕のいつもの自然体の絵を見て、「なかなかうまく描けているじゃない」と絶賛していた。

 僕も気になって見てみると、本当に芳山にしては良く描けている。

「ヨッシー、今日はファミレス行かない?」

「悪いけれど、私美術部員だから、また今度ね」

「マジで、美術部何かに入部したの?」

 すると芳山はきつい目で、「悪い?」と言ってきた。

「別に悪くないけれど、ヨッシーのその絵に対する情熱が本物と思うとちょっと意外」

「意外ってどういう意味よ」

「別に大した意味はないよ。とにかく頑張れよ」

 そう言って芳山の友達達は去って行った。

 きっとファミレスに行くのだろう。

 芳山の絵を改めて見て、「いやー良く描けているな」と褒めた。

 すると芳山はニヤリと嫌らしい笑みを浮かべて、「先輩、きょどり過ぎですよ。先輩の絵を見てみると私に見られているからと言って、凄くきょどっていますよ」

「いや、これは、その別に・・・」

「先輩目を閉じて下さい」

「何で?」

「良いから」

 また詰られる様な事をされるのだろうと覚悟をして目を閉じて見ると、ホッペに少しだけ生暖かい感触がした。

 何?何が起こったの?

「じゃあ、先輩、今日はもう時間ですから帰りますか?」

 芳山の言うとおり、時計を見てみると午後六時を示していた。

 そろそろ帰る時間だな。

 芳山と僕の帰り道は途中まで一緒だったんだよな。

 芳山と一緒に帰り、芳山は僕が昨日あげたメモリーブラッドの事を語り合っていた。

「先輩のメモリーブラッド見せて貰いましたよ。まさか襲われそうになった暴走族に救いの手を差し伸べるメグ、超健気でかわいいんですけれど、あれって先輩の理想の彼女っすか」

「別に理想とかはそう言うのは別にないよ。とにかくあれが主人公の彼氏の恋人のメグの優しさ何だよ」

「きゃあああ」

 と興奮している芳山さん。

「メグは優しくて強くて格好良いんだよ」

「やっぱり先輩の理想の彼女じゃないですか。超キモいんですけれど」

「そ、そこまで言う事はないだろ」

 と僕はちょっと憤りを感じて語気を強めてしまった。

「サーセン、別に先輩の小説をディスっている訳じゃないんですけれど、とにかく今後のメグの活躍が楽しみです」

 そう面と向かって言って貰えるのは芳山だけなんだよな。本当に僕のメモリーブラッドを気に入って貰えて光栄だと思っているよ。


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