複雑な気持ち
三話目突入です
その夜、僕はネット小説を書くために、机の前でメモリーブラッドの続きを書いた。
芳山は僕が書いているメモリーブラッドの事を悪くは言わない。でも僕になじるのは辞めて欲しいと思っている。
気がつけば小説を書いていると、時間なんてあっという間に過ぎてしまう感覚に陥ってしまうので僕は、メモリーブラッドの続きを投稿した。
僕のメモリーブラッドの小説は二日に一編で五千文字は書いている。
それにアクセス回数もかなりの物になっている。それに今日も何人かの感想が寄せられている。
それを読んでみると、五通の感想であり、面白いだとか、もっともっと書いてとか、とにかくそんな感想を見てみるとやる気になり、どんどん書いてやろうと思っている。
今は小説の事は置いといて、あの芳山さんは明日も僕をなじるつもりなのか?だったら嫌だな。
いっそうの事、『もうなじるのはよしてくれ』と言ってピンタの一つでもかまそうかと思っていた。
小説の作業が終わると、芳山のあの憎たらしい、僕をなじる嫌らしい顔が頭から離れなかった。
今日も眠れない夜を過ごすかもしれない。
次の日、学校に向かう途中に芳山さんの後ろ姿があった。
僕に気がついていない。
どうしよう。声をかけて見ようか?
いや、辞めて置こう、またなじられるだけだ。
そう思って、僕は電信柱に隠れて、彼女が行くのを待っていた。
そろそろ、行ったところだろうと思って前を見てみたら、芳山さんは僕の前に現れた。
「おはようございます、先輩、朝からストーカーですか?」
「いや、違う、芳山さんにまたなじられると思って、距離を置こうと、近づかなかっただけですよ」
「そんな、先輩、私の事が嫌いになっちゃったのですか?」
涙目で言う物だから、僕は。
「もう騙されないぞ。そう言って、また僕の事をなじろうとしているのだろ」
「うええええん」
芳山さんは本当に泣いてしまった。
やばい女子を泣かしてしまった。
「嘘、嘘、嘘、だから泣かないでよ」
すると芳山さんは、嘘泣きをしていたみたいで、「嘘ですよ、先輩、先輩に嫌われたって、私はどうも思っていないですから」
そして放課後、僕が美術室に入ると、芳山さんはいた。
僕に気がつくと芳山さんはにやりと嫌らしい顔をして、僕に言ってきた。
「先輩、先輩、先輩、先輩は美術部の人何だよね」
「そうだけれども」
「私今日から美術室に入ろうと思っているのですが良いですか?」
何を言っているんだ芳山さんは、いったい何を考えているのだ。
「先輩、私に絵を教えて下さいよ」
そう言って美術部の入部届を僕に差し出して来た。
今度は何を考えているんだ。それに芳山はどうして僕にこんなに距離を縮めてくるんだ。
「今日から私、美術部の部員だからね」
そう言って僕が描きかけのカンバスの前の席に座り、僕が書いている、静物デッサンの花瓶に生ける花の続きを描こうとした。
「ちょっと、芳山さん、それは僕が書いている静物デッサンなんだよ、だから、素人の芳山さんが手を加えたらめちゃくちゃになってしまうんだよ」
「サーセン、じゃあ、先輩私に絵を教えて下さいよ」
「分かった。分かったから、僕が描いている絵に手を加えるのは辞めて」
「何よ、先輩、酷いじゃないですか、まるで私が先輩の絵を汚しているような言い方じゃないですか?」
「そう言う事じゃなくて、絵を描くのは、一人の戦いみたいな物何だよ。つまり孤独の戦いみたいなもの何だよ」
「ふーん、そうなんだ。じゃあ私も一人の戦いをします」
そう言って芳山さんは鉛筆で絵を描き始めた。
僕はなれているので、静物デッサンの方は余裕で描ける。
横目で芳山さんの方の絵を見てみると、やはり芳山さんは静物デッサンをしたことのない素人だった。
素人に取ってこんな静物デッサンなど退屈な作業だと思う。
「先輩、描けました」
見てみると素人が描いたにはかなりの良い出来であった。
「ふーん、なかなかうまく描けているじゃない。素人にしては上出来だ」
「でも私、先輩みたいにうまく描けないのですけれど」
「まあ、最初からうまくは描けるはずなんてないよ」
「じゃあ私も先輩の様にうまく描けるようになるんですか?」
「とにかく継続は力なりかな」
すると芳山は「継続は力なり、かあ」と嘆息気味に言った。
「そ、そうだよ、継続は力なり」
「じゃあ、私継続します」
「まあ、頑張れ」
静物デッサンは素人に取っては退屈な物であり、芳山は本当に真剣に静物デッサンを会得しようとしている。
何か芳山さんって黙っていればかわいい女の子の様な感じがした。
「何ですか、先輩、私の事をじろじろ見て」
と嫌らしい顔をしてまた僕の事をなじろうとしている。
「別にじろじろ何て見ていないよ。とにかく芳山は静物デッサンを上手に描ける様になりたいのだろ」
「まあ、そうっすけれど、先輩が私をじろじろと見ていて」
「じろじろなんて見ていないよ」
本当はチラチラと見ていたのは本当だが芳山の言うことを真に受けてしまったら、いけないと思っている。
今日と言う日が終わり、僕は部屋の中でノートを広げて、芳山さんの白いワンピース姿の絵を描いていた。
なじって来る芳山は本当にウザいけれど、黙っていればかわいいんだよな。
さて今日も小説を書こう。
僕は小説をポメラと言うタブレットで描いている。
次の日、美術部に入ると、芳山とその仲間達が語り合っていた。
「何、芳山、美術部に入って先輩の気をひこうとしているの?」
「そんな訳ないじゃない、私と先輩がそんな関係になるはずがないじゃない」
そこで僕が美術室に入ると、芳山を含めて四人の女子達が語り合っていた。
「あっ、先輩、今日は私の友達を紹介しようと思って」
「ここは喫茶店じゃないぞ」
「とにかく芳山、頑張れよ」
「頑張るって何を?」
「パイセンの心を掴むのだろ」
「そんなんじゃないよ。先輩の言うとおり、ここは喫茶店じゃないから、邪魔者はとっとと去った去った」
「分かったよ、じゃーな」
そう言って芳山の友達である三人は部室から去って行った。
「じゃあ、先輩今日も絵の指導お願いします」
「う、うん」
今日は造花のバラを生けた花瓶を描く事になった。
それにしてもこいつ、俺の事を敬うようになってきた。最初は僕の事を詰り、泣かされた事もあったっけ。
でも絵が上達したいと言う物なら、僕の先輩も言う事はないだろう。
僕の先輩は凄い人だからな。
ちょっと絵を描いている最中に催して来た。
だから僕は芳山さんに『トイレに行って来る』言ってトイレに行った。
トイレから戻ると、芳山さんは僕の鞄からノートを取り出して、ニヤニヤと嫌らしい笑みで見ていた。
「な、何をやっているの?」
芳山さんが今見ているノートは芳山の白いフリルの付いたワンピースを着て戯れている姿だった。
「先輩、これって私ですか?」
相変わらず憎たらしい笑みを浮かべて楽しんでいるような感じだった。
「勝手に人の鞄からノートを見るなよ」
「いやだって私、絵がうまくなりたいんだもん、そのヒントが先輩の鞄の中にあると思って見てみたら、私のこんな姿の絵が出て来るんだもん。ねえ、先輩これはどういう事なの?」
僕が描いた芳山の絵を突きつけて、僕を詰る芳山さん。
「とにかく、芳山さんは黙っていればかわいいと思って」
すると芳山さんは嫌らしい笑みを浮かべていたがすぐに複雑そうな顔をして黙り込んでしまった。
僕は何かいけない事を言ってしまったのだろうか?芳山さんは複雑そうな顔をして黙り込んでしまった。
しばしの時間が経ち、芳山さんは黙ってデッサンに集中してしまった。
もしかしたら、芳山さん、『黙っていればかわいい』と言う言葉に傷ついてしまったのか?いつもならもっと詰って来るのにどうしてしまったのだろう?
詰られるのは嫌だけれども、こうして芳山さんが複雑そうな感じでいられると、何か気まずい。
今日は芳山さんの事で緊張してしまい本来の絵に集中できずにうまくデッサンをする事は出来なかった。
改めて見ると僕の絵は最悪な感じの絵だった。芳山さんの絵を見てみると、なかなか良い感じの絵になってきた。
先ほどまでは複雑そうな顔をしていたのに、急に芳山さんは嫌らしい顔をして。
「先輩、私が黙っているとかわいいだなんて凄くキモいんですけれども」
「ごめん、勝手にこんな絵を描いてしまって」
「キモいキモいキモい・・・」
と連呼して僕に言う芳山。すると芳山の携帯から着信が鳴り。
「ああ、今部活が終わった所、・・・分かった今行く」そう携帯に言って僕の方を向いて「とにかく私の事を嫌らしい目で見ないで下さいよ。それとメモリーブラッド、良いできだと思いますよ。先輩が書いた何て言ったらキモいと思うんですけれど。じゃあ、先輩また明日」
そう言って芳山さんは飛んで行くようにどこかに行ってしまった。
また詰られてしまった。
でも僕は何か安心してしまった。あれでこそ芳山さんだと。
帰り道、公園にさしかかった所、芳山の友達三人と男二人が何やら語り合っている。
僕はみんなに気がつかれないように、芳山とその他の人達の会話を聞いていた。
「芳山だっけ、俺バンド組んでいるんだけれども、これ俺が作った歌なんだ、聞いてみてよ」
男が芳山にイヤホンを渡す。
これは芳山に詰られるかもしれないぞ。
あいつはそう言う奴だからな。
今日の芳山を描いた絵を見せてキモい何て言われたから分かっている。
芳山は男に言われた通りイヤホンをつけて男性が作った曲を聴いている。
来るぞ。
と思っていたら。芳山さんは。
「何これ、歌と曲に情熱が感じないんだけれども」
男は。
「えっ、そう俺的には良い曲だと思っているんだけれどもな」
「あんたの曲」胸に手を当てて「ここに来ないのよ」
「マジかよ」
そう言って男二人はどこかに去ってしまった。
「ヨッシー、それは言い過ぎ何じゃない?」
友達がフォローする。
「私は当たり前の事を言っただけだよ」
「あの人、ヨッシーの事紹介してくれって頼まれたから、もしかしたらヨッシー気にいるんじゃないかと思って」
「余計な事をしないでよ」
友達に軽く蹴りを加える。
「ごめん」
「とにかく一人になりたいから帰って」
その友達三人は芳山を一人にして帰ってしまった。
芳山は深くため息をついて、俺がのぞき見をしていたのがばれていたのか俺の方を見て、その嫌らしい笑みを浮かべて僕の方によってきた。
「何先輩、私の事をのぞき見しているの?」
「いや、別に俺は、たまたま」
「先輩、私の事をストーカーしていたんですか?」
「いや、別にストーカーしている訳じゃないよ」
「じゃあ、何なのですか?通報は国民の義務ですからね」
「だからストーカーなんかじゃないよ。僕は別にたまたま、ここを通ったら芳山さんとその仲間達の事が見えたんだよ」
「それでのぞき見ですか?趣味悪いですね」
「それよりもさっきの男かなりイケメンで芳山さんの事を好きそうだけれども、良いの?」
「キャー、何先輩、私に焼きもちを焼いているんですか?マジキモいんですけれど」
「別に焼きもちを焼いているんじゃない。僕の小説を詰るようにするのかと思って」
すると芳山さんは大きくため息をついて。
「先輩のメモリーブラッドは本当に良い作品だと思っている。さっきの野郎の曲を聴いていたら、」胸に手を当てて「ここに来ないんですよ、ここに」
「じゃあ、僕の作品はここに来たの?」
僕は胸に手を当てて言った。
すると芳山さんは顔を真っ赤にさせて、黙り込んでしまった。
この様子だと僕の作品を本当に良い物だと思っているみたいだ。
僕と芳山さんの間に緊迫した空気が流れ始めた。
芳山さんの方を見ると、下を向いて俯いている感じだ。芳山が何を考えているのか分からなかった。
そして長い沈黙の中、芳山は口を開いた。
「私、先輩の様に絵がうまくなりたい」
「どうしてそんなになってまで、絵がうまくなりたいの?」
「今日、私を描いてくれましたよね。かなりキモかったけれど、本当に良く描けていると思ってますから」
また複雑そうな顔をしている。
こんな芳山に何て言ってやったら良いのか困惑してしまう。
芳山は鞄を取って、「じゃあ、先輩また明日」と言って芳山は去って行った。
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