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無理しないでヨッシー

 朝目覚めて、香ばしい匂いがしてきた。

 妹がベーコンを焼いているのだ。

 時計は午前六時半を示している。

 妹が僕に気がつくと「お兄ちゃん、おはよう」と言ってきたので、僕はとりあえず「おはよう」と挨拶をした。


「幸子、もう今日は来なくて良いからな」


 ヨッシーが眠っていた寝袋を見ると、中には入っておらず、美術室の椅子に座って、アイパットで絵を描いている。

 ヨッシーは何時頃起きて、絵を描いているのか分からなかった。


「ヨッシー、ご飯にしないか?」


 僕が言うとヨッシーは。


「うん、そうだね、とりあえず、今日はサンドイッチ」


 言われたとおり、パンにベーコンを挟んでヨッシーに渡した。

 そして匂いに誘われるかのように、ゆっこにシーマに島さんも起きてきた。


「うわー香ばしい匂いがしてくる。今日のメニューは何だろう?」


 ゆっこがそう言って立ち上がると、シーマも島さんも布団から出てきた。

 文化祭まで後二日だ。それまでに部長を超えるような絵を描かなければならない。

 それに関してはヨッシーの友達のゆっこ達も協力してくれている。

 美術部がなくなったら、悲しいよな。

 僕とヨッシーのユートピアなんだから。


「みんなの分も作って置いたから、とにかく食べてね」


 そう言って幸子はゆっこ達にベーコンサンドを作るのであった。

 そうしている間に妹は小学校に出かけて、僕達は作業を止めて、それぞれの教室に戻っていった。

 授業が終わると、時計は午後三時を示している。文化祭まで後二日、ヨッシーの絵が部長の絵を超えるような物じゃないと、この美術室はなくなってしまう。

 僕もヨッシーの力になるために、小説を書いて書いて書きまくった。

 相変わらず、ネットの評価を見てみると、たくさんの人から感想が書かれている。

 見てみると、僕をやる気にさせるような、黄色い想いのつまった感想になっている。

『本当に面白い小説でした。これからも読ませて貰います』とか『お体にはお気をつけて下さいね』とか。

 本当に燃え上がって来た。

 とにかく僕の小説を書くために生まれて来たんじゃないかと思うほど、燃え上がって来た。

 よし、小説を書いてネットに載せて、その小説の描写をヨッシーに描いて貰って、この神聖なる美術部を守るのだ。

 僕が小説を書いていると何か倒れるような音がした。

 その音の矛先を見てみると、ヨッシーは倒れてしまった。

 僕は小説を書くことを中断して、ヨッシーの所に駆けつけた。

 それにヨッシーの友達達も心配している。


「おい、ヨッシー大丈夫か?」


 ゆっこ達も駆けつける。

 ヨッシーのおでこに手を当てると凄い熱だと言う事に気がついた。


「パイセン、ヨッシーを保健室に連れて行ってあげなきゃまずいんじゃない?」


「そんな事言われるまでもないよ」


 そう言って、僕は倒れたヨッシーを負ぶって保健室まで運んだ。

 保健室に辿り付くと、二つある寝床に一つだけ眠っている人がいた。

 それ以外は保健室の職員は何をしているのか?どこにもいない。

 とりあえず僕はヨッシーをベッドの上に寝かせて、体温計はどこか探して見るとあったので、それでヨッシーに体温計を渡して、ヨッシーは自分で体温計を脇に挟んで熱を計って見ると、八度六分を示していた。

 これではもう文化祭の作業にならない。


「先輩、私は大丈夫っす、とにかく文化祭まで後二日しかないんだから、こんな所で眠っている訳にはいきません」


「とにかく無理しちゃダメだ。とにかく眠っていろ」


「先輩私は描けますから・・・」


「ダメな物はダメだ」


「このままだったら美術部は廃部になってしまうっすよ。そんな事になったらキモい先輩に顔向け出来ないよ」


 すると隣に眠っていた、人が起き出して、


「何だ、深瀬とその彼女じゃないか、こんな所で何をしている」


 隣に眠っていたのは部長であった。


「部長、何でこんな所にいるんですか?」


「いや、私は絵に没頭しすぎて、体の調子をおかしくしてしまった。だから、ここで少し休ませて貰っている」


 どいつもこいつも何をしているのだ。


「部長は誰か、いないのですか?」


「私は一匹狼的な存在だから、仲間などいない」


 そんな時だった。ヨッシーを心配してくれるヨッシーの友達達のゆっこ達が保健室に入ってきた。


「ヨッシー、大丈夫なのかよ。それとパイセン」


 そこで僕が、


「とにかく今は安静にさせて置いた方が良い。もしこれ以上酷かったら、明日あたり、病院に連れて行く」


 シーマが。


「とにかく、パイセン、ヨッシーにあまり無理をさせすぎないで下さいよ」


 シーマの言葉が胸に刺さった。

 島さんが。


「そうっすよ。とにかくパイセン、ヨッシーはパイセンの彼氏なんでしょ」


 島さんの言葉にも胸が刺さった。

 僕は泣きそうだった。

 今、ヨッシーにやってあげられる事は、ヨッシーを見守る事ぐらいだ。

 ゆっこが。


「とにかく先輩、ヨッシーの描いた絵をアイパットから取り出して、A3サイズに取って額縁に突っ込んで置くから」


 そう言って、ゆっこ達は美術室に戻っていった。あいつらもあいつらで粋な事をしてくれている。するとヨッシーの隣のベッドに寝転がっている部長が言う。


「深瀬、良い仲間を持ったな」


 何か、部長にそんな事を言われると、胸が熱くなった。


「はい、僕の仲間は熱い絆で結ばれているんですよ」


 部長は立ち上がり、


「だが、私も負けないぞ」


 そう言ってベッドから降りて、部長はふらふらな状態だった。


「ちょっと、部長、大丈夫っすか?」


「大丈夫だ」


 そう言って部長のおでこに手を触れて見ると、ヨッシーと同じように凄い熱があった。


「部長、眠っていた方が良いんじゃないですか?風は万病の元だと言うし」


「大丈夫だと、言っているだろ!私は敵の情けなんかには頼らない。芸術は一人の戦いでもあるんだ、それに妥協はしたくない」


 僕はカチンときて、


「部長、確かに、芸術は一人の戦いかもしれませんが、人間は一人では生きていけない。だからこれ以上無理をしたら、いけませんよ」 


「敵である私に情けをかけると言うのか」


「そんな、敵も味方もありません。とにかく部長今日の所は休んでください」


「後少しで完成するのだ。だからこんな所で眠ってなんかいられない」


 すると部長は倒れてしまった。

 部長が倒れてしまった。

 頭がパニックになりそうな所、こんな時どうすれば良いのか分からなかった。

 そうだ。この時の為の救急車だ。

 僕は携帯で救急車を呼ぼうとしたら、保健室を管理している先生が入ってきた。

 その名前は石垣先生。


「石垣先生、部長が倒れてしまいました。救急車を呼ばなくては、いけないじゃないのです

か?」


 すると石垣先生は冷静な面持ちで、倒れた部長のおでこを触って見た。


「ただの風邪ね、相当に無理をしすぎたのね」


「だから救急車を呼ばないといけないんじゃないのですか?」


「その必要はないわ。とにかく安静にしていれば治る風邪よ」


 それを聞いて安心した。

 まさか絵の勝負中でヨッシーは倒れて、まさかその相手である部長も倒れてしまった。

 僕と石垣先生は部長をベッドまで運んで眠らせた。

 そこでヨッシーが。


「先輩もう大丈夫です」


 そう言って本当に大丈夫なのか?おでこを触って見ると、凄い熱であった。


「ヨッシー、無理するな。これ以上無理をしたら命に関わる事だぞ」


「そんな事私には分かる。でも部長に勝たないと美術部が廃部になってしまう」


「そんな事よりもヨッシーの体の方が心配だよ」


「先輩、相変わらずにキモいですね。私は本気で絵を描きたいんです」


「ダメだ。それに絵ならもう充分に描いた。今、お前の友達のゆっこ達は、お前の絵を部室に飾っているから、大丈夫だ」


「私はもっと絵を描きたい。そうしないと美術部は部長によって廃部になってしまう」


「だから、何度も言うけれど、その風邪を治したらにしろよ」


「分かりました」


 ヨッシーは僕の言うことを素直に聞いてくれた。

 これ以上絵に没頭するとヨッシーも部長も命に関わって来る状態だ。

 部長も言っていたけれど、ヨッシーも部長もサヴァン症候群だと言っている。

 サヴァン症候群は体調が芳しくないときでも何かに没頭してしまう、精神的病気だと言うことが分かった。

 部長もヨッシーも保健室で休んでいる。

 とにかくこの二人が保健室に出ないようにしなければならない。

 そんな時である。妹の幸子がお盆に二つのお粥を持ってきてくれた。


「何だよ、幸子、気が利くじゃないか」


「うちもお兄ちゃんの力になりたいから」


 そう言って幸子が部長とヨッシーの分のお粥を持ってきてくれて、二人起こして、幸子のお粥を食べて貰うことにする。


「ヨッシーも部長もとにかくそれを食べたら、すぐに安静にしているんだよ」


 部長が。


「敵にこんな情けをかけられるとはな、しかもこのお粥本当においしいぞ」


 ヨッシーが。


「本当に先輩の妹にしてはなかなか気が利くじゃない」


 とにかく二人とも今は絵の事を忘れて欲しいと思う。

 さらに幸子は僕にお弁当を用意してくれた。


「お兄ちゃんもお腹が空いたでしょ。だからお弁当を作って来てあげたよ」


 そう言って幸子僕にお弁当を渡してくれた。

 唐揚げやら、ポテトサラダにトマトをスライスした物でとても栄養バランスがとれた感じがした。

 お弁当を食べて、二人の様子を見てみると、眠ってしまったようだ。

 幸子は美術室に戻って行って僕も眠くなって来たので、椅子に座りながら、首を垂れて眠りに入ってしまった。

 僕は部長とヨッシーのベッドの間に眠っている。

 気がつけば、太陽の光に瞳をくすぶられ、目覚めた。

 目覚めると、ヨッシーと部長は布団の中にはいなかった。


「何を考えているんだよ二人とも」


 そう人知れず呟いて、まずは美術室に行く。

 そこにはアイパットで絵を描くヨッシーの姿があった。


「おい、ヨッシー何しているんだよ。安静にしていなきゃダメだろう」


「ああ、先輩、昨日の幸子ちゃんのお粥を食べて眠ったら急に体調が良くなりました。それに部長は私が起きたらいなかったです」


 時計針を見てみると午前五時半を示している。まだ幸子は起きて料理を作っていないみたいだ。

 本当にサヴァン症候群とはやっかいな精神病だと思っている。

 とにかくヨッシーは熱が下がったのか、体温計で計って貰う事にする。

 ヨッシーの体温は六度二分だった。

 これなら大丈夫だと思ったが、風邪は病み上がりが大変なので安静にして貰いたいと思ったが、今のヨッシーを止める事は出来ないだろう。

 それに美術室を見てみると壁に至る所にヨッシーが描いた絵が飾られている。

 それに幻想的な絵でもしかしたら、これなら部長を負かす事が出来るかもしれない。

 そして幸子が起き出して、


「今日は学校がお休みだから、一日中お兄ちゃんのお世話が出来るね」


 大きなお世話だと思ったが、昨日は部長とヨッシーのお粥を作ってくれて本当に良くなったんだよな。だからその事に関しては感謝をしなくてはならないと思った。


「幸子、今日も朝ご飯を作ってくれるか?」


「任せて、今日はスクランブルエッグをみんなに振る舞いたいと思っているよお兄ちゃん」


 早速妹は、ゆっこが持ってきたコンロに日をつけて、スクランブルエッグを作ろうとしている。

 それよりも部長の事が心配だった。

 部長は一年生が使っている第一美術室にいる。そこに向かうと、部長はアイパットで絵に夢中になっている。辺りを見渡すと、凄い幻想的な絵が飾られていた。

 もしかしたらこれはヨッシー以上の物かもしれないが、ヨッシーの絵にも劣らない絵だった。

 何をモチーフにしてこんな幻想的な絵を描いたかは分からないが、とにかく凄い。

 とりあえず、その事は置いといて、部長の事が心配だった。


「部長!」


 部長はサヴァン症候群だと自分で言っていたから僕の声が届くはずだと思って大声で言った。


「何だ。やかましい」


 絵に没頭している部長を怒らせたが、そんな事よりも、部長は大丈夫なのか心配でこの第一美術室に来たのだ。


「何だ。深瀬か、何の用だ」


「何の用かじゃないですよ、部長は大丈夫何ですか?」


「大丈夫って何がだ?」


「部長も無理をしすぎて、保健室で眠っていたじゃないですか」


「ああ、その事なら大丈夫だ。敵の情けをかけたが私は大丈夫だ。とにかく君の妹さんにお礼を言っておいてくれ」


 部長の顔色を見てみると、とても健康的な顔をしていたので大丈夫だと思って第一美術室を後にした。

 どうやら部長も大丈夫な用だ。

 今日は土曜日で学校はお休みだ。

 とにかく部長はともかくヨッシーはあのまま絵を描かせたらまた、空腹を忘れる位、絵に没頭して体調を崩しかねないので、僕は小説を書きながら、ヨッシーの背中を見て見守りながら、小説を書いていた。

 ちなみに幸子が作ってくれた朝ご飯は僕とヨッシーとゆっことシーマと島さんはちゃんと食べてくれたそうだ。

 僕はまず小説を書く前に、ネットで掲載した僕の小説の感想欄を見てみると、相変わらず、喜びに満ちる黄色い声で、埋め付くされていた。それはそれで良いので、とにかく僕の小説が面白いと分かった所で、僕は小説を書き始める。

 喜びに満ちた気持ちで書くと、沸々(ふつふつ)と頭の中から、アイディアが浮かんできて、キーボードを叩く音が止まらない。

 とにかく文化祭まで後一日に迫っている。

 部長とヨッシーの絵が拮抗きっこうしている中、僕は小説を書いて、それをヨッシーが見て、小説のシーンを幻想的に描いて、美術室の壁にヨッシーの絵を飾っている。

 飾っているのはゆっこ達であり、友達のヨッシーの為に尽くしている。

 ヨッシーは何かに取り憑かれているようにアイパットで絵を描いている。

 これがサヴァン症候群って奴か。

 部長もサヴァン症候群だと断定していた。

 とにかくヨッシーがサヴァン症候群で空腹や体調不良が起きないように僕は小説を書きながらだけど、見守っていた。

 部長は一人、ヨッシーには僕や妹の幸子にゆっこやシーマに島さんが付いている。

 文化祭まで後一日、それまでにヨッシーのより多くの絵を描いて、この美術部を守らなくてはならない。

 それとまたヨッシーが体調を崩したら本当にどうしようと言う気分でハラハラしていた。

 小説を書いていると時間の事を忘れて、気がつけば、お昼ご飯になってしまった。

 気がつけば、ソースの香ばしい匂いがして、その匂いの発信源に目を向けると、妹がお好み焼きを作っていた。

 でもヨッシーはその匂いに気がつかないように絵に没頭している。


「おい、ヨッシーそろそろお昼ご飯にしないか」


 そう言ってヨッシーの肩に手を添えて僕が言う。


「うん、分かった」


 ヨッシーは僕以外の人に絵を描いている所を止められると怒り出すのだ。

 それはどうしてか?僕がヨッシーの恋人だからか?

 とにかくお好み焼きパーティーを楽しもうじゃないか。

 本当にお好み焼きはおいしく、ヨッシーも絵のことを忘れて、お好み焼きを食べていた。

 そんなヨッシーを見て、僕はサヴァン症候群にもこのような事があるのだと思って安心した。

 ヨッシーがただ絵を描く為に動くところは感心しない。

 そしてお好み焼きパーティーが終わったら、ヨッシーはアイパットで絵を描く続きをしていた。


出来れば評価をお願いします。

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