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楓達の絆

 とにかく僕は書くしかないと思っている。それはヨッシーも同じ気持ちだ。

 一緒に僕達の居場所を守ろうよ、ヨッシー。

 そろそろ僕もお腹が空いてきた。

 今日もカロリーメイトしかないが、そんな時、妹が現れて、何か大きな手提げ袋を持ってきている。

 そう言えば妹は怒っているんだった。

 しかもランドセルを背負って、通学用の帽子まで被っている。


「幸子」


 そう呼んだが、僕は幸子にどんな顔をして謝れば良いのか分からなかった。


「ごめん幸子、怒っているよな」


「ええ、怒っているようちは」


 幸子の目をまともに見れなかった。


「お兄ちゃん、うちも応援する。だから、これ」


 そう言って、僕とヨッシーとゆっこ達の分のお弁当を作ってくれたみたいだ。

 ヨッシーは気がついていないが、ゆっこ達は中身を見て驚いていた。


「これ、パイセンの妹さんが作ってくれたんすか?」


 ゆっこが目を丸くして驚いた目で言う。

 すると幸子は。


「皆さん、うちのお兄ちゃんがいつもお世話になっています。これはお兄ちゃんの妹としてのお礼のつもりで食べて下さい」


 シーマが。


「超うまそうじゃない」


 島さんが。


「あたしも食べたい」


 ゆっこが、


「とにかくヨッシーを呼んでくれよ。先輩」

 そうだった。ヨッシーは集中しているときに刺激を与えると怒り出すんだよな。だから僕は「おいヨッシー、ご飯だぞ」


「あっ、先輩気がつかなくてごめんなさい」


 珍しく刺激を与えるような事をしてもヨッシーは怒らなかった。

 ヨッシーが妹の弁当を見ると、


「凄いご馳走じゃない、誰がこんなお弁当を作ってくれたの?もしかしてゆっこ達?」


「あたし達じゃないよ。パイセンの妹さんが作って来てくれたんだよ」


「先輩の妹さんの名前って幸子ちゃんって言うんだね。幸子ちゃんありがとう」


 そう言われて幸子は、お礼を言われて顔を横にして目を閉じて、


「別に、うちは・・・」


 照れている、照れている、照れている妹も可愛いな、妹のこの照れている様子をヨッシーの絵に組み込むことは出来ないか?いや出来ないだろう。

 そう言う事で僕達は妹が作ってくれたお弁当を食べることにする。

 ヨッシーは食べながらアイパットを持っている。「ヨッシー食べている時ぐらいは、アイパットは置いとけよ」


「いや、手が離せないよ」


 ヨッシーはおにぎりを二つ食べたらお茶を飲み、そうして創作活動に専念した。


「ヨッシー、もう良いのか?」


 そう言ってもヨッシーは気がつかない、サヴァン症候群モードに突入してしまったみたいだ。

 僕もある程度、食べて小説を書くことに専念した。

 小説をネットにあげると、ヨッシーはそれを読み、僕が書いたキャラクターのシーンを絵にして描いている。

 もうネットに載せないで直接見せた方が良いんじゃないかと思うのだが、ネットで僕の小説を待ち望んでいる人達がいるからそれは出来ない。

 とにかくヨッシーは描いて、描いて、描きまくり文化祭になったら勝負だ。

 相手は相当に手強い相手だ。

 この美術部の部長だった人だ。

 僕の尊敬する人でもあり、ライバル視をしていたが、僕の画力では部長に勝てる気がしなかった。

 でももはや僕の画力を超えて、神様から与えられた才能を持つヨッシーなら出来るかもしれない。

 残念ながら、僕の絵の画力の才能を知ってしまった時、手首にナイフを切りつけようとしたのだ。

 それで僕が二年になり、部長は三年で芸大に行くつもりで、美術部を開けた。

 そして美術部は僕一人になってしまった。

 部長と絵を描いていると何か僕は負けず嫌いなのか部長の絵と比較してしまう癖があった。

 比較してみると、僕の絵と部長の絵は大きな大差があった。

 だから、僕は部長には敵わない、そんな相手といつも絵を描いていて僕は才能の無さに絶望さえ感じていた。

 でも部長はいなくなって僕一人になり、誰もいないこのクラスで絵を描くことは本当に楽しいことだと思って、一人で絵を描く事は悪くないとさえ思えてきた。

 それに、部長と比較してしまう自分がいたので僕は小説を書いてみた。

 それをネットに載せると、瞬く間に、ヒットして、それがうちの後輩であるヨッシーの元にも届いてしまった。

 まさか最初見たヨッシーの事を考えると、まさかこのような絵の才能の持ち主だと言うことは思いもしなかった。

 僕は絵を諦めるしかないのか?そう思うとちょっと切なくなるが僕には小説がある。小説を書いてネットないで結構バズっている。

 一息つこうかと思って時計を見てみると、時計は午後十一時半を示している。

 ヨッシーの方を見てみると、絵に没頭している。時間も空腹も眠気も感じていないと思えてきた。

 このままだと、ヨッシーじゃ死んでしまうかもしれないので、すぐに怒られる覚悟を決めてヨッシーに。


「今日は、これぐらいにして今日は寝よう」


 と言った。


「うん。分かった」


 美術部はヨッシーと僕とヨッシーの友達のゆっこ達の寝床になってしまっている。しかもなぜか、妹の幸子まで寝間着に着替えて眠っている。

 僕はそんな幸子を起こそうとしたが、やめておいた。

 こいつもしかして、僕が学校に泊まっているから自分も楽しそうだから、とか言って、僕の学校に泊まって行くつもりだったんだな。

 それに妹は小学校六年生になってもお兄ちゃんお兄ちゃんと慕ってくる。

 もう僕のお嫁さんにはなれないんだよ。と教えてあげたかったが、禁断の愛も素敵でしょ。とか何とか言って、今も、僕に慕ってくる。

 とりあえず妹の事よりも、ヨッシーの事を考えて、ヨッシーに寝袋で寝かせて、僕も寝袋に入って眠りに入った。

 ヨッシーの顔を見てみると、本当に黙っていれば可愛い彼女の様に見える。

 ヨッシーが彼女になって僕の人生は大きく変わった。



 時計が六時を示した頃、ゆっこ達が使っていた、コンロで鍋の上に生卵をのせて目玉焼きを作っている妹を見た。


「おはようお兄ちゃん」


「おい、幸子、お前が学校に泊まる何て聞いていないぞ、お前はお前の所の学校はどうなんだよ」


「ちゃんと行くよ。うちはパパとママにお兄ちゃんの事をよろしくされているから」


 だからって、うちの学校に来なくても良いのに。そうして、いつもヨッシーがいつも絵を描いている席を見てみると、狂ったようにアイパットで絵を描いていた。

 まあ、妹が学校に来ることは予想外の展開だが、まさか泊まる事になるなんて言語道断だと思っている。

 とにかく朝ご飯を作らせたら、もう二度とここに来られないように叱りつけて置くしかないな。それはもう嫌われる覚悟でやるしかないと思っている。

 僕はゆっこ達を起こして、妹のパンの上に目玉焼きをのせた、通称ラピュタ飯を食べる事になった。

 ゆっこが、


「パイセンの妹さん凄く気が利くじゃない。この目玉焼きパン本当においしいよ」


 シーマが、


「本当だね。今日もこの調子でうちら頑張ろうよ」


 島さんが、


「妥当部長、ヨッシーには仮があるからね。とにかくここで頑張って置かないといけないね」


 そこで僕は、


「ヨッシー」


 描いて集中している時に刺激を与えると怒り出す覚悟でヨッシーを呼ぶ。


「ああ、先輩、何すか?」


 最近は怒らないな、どうしたんだろ。それよりも僕はヨッシーに。


「朝ご飯僕の妹が作ったから、とりあえず作業は中断して朝ご飯を食べようよ」


「分かったっす」


 そう言ってヨッシーはアイパットを持ったまま、パンを手にして食べながら作業をしている。

 サヴァン症候群という物は本当に恐ろしい病気かもしれない。

 ゆっこが、


「ヨッシー、食べるか作業するかどちらかにしたら?」


「良いから黙っていて」


 と怒りだしてしまった。

 ゆっこはいつもの事だと思って気にしていないようだが、絵に集中している時に刺激を与えると怒り出さないのは僕だけなのかもしれない。


「じゃあ、お兄ちゃん。うちは学校に行くから、今日も家に戻ったら、みんなの夜ご飯作ってあげるからね」


「幸子、もう来なくて良いからな」


 そう言った直後、幸子はいなくなっていた。

 本当にどうした物やら。

 とにかく今日も退屈な授業が始まる。


「パイセン」


 ゆっこがヨッシーを何とかしろと言わんばかりに僕に首で合図する。

 どうやらゆっこ達は気がついたのかもしれない。ヨッシーが集中している時に怒らないのは僕だけだと言うことに。

 そう言う事で僕は二年で、一年のヨッシー達は真面目に授業をしに行っている。

 あいつら、文化祭が終わったら、僕に泣きを入れて来るんじゃないかと思った。


 そして今日も授業が終わり、美術室に行くと、もうヨッシーは椅子に座って作業を始めている。

 僕も後に続くように作業を進める事にする。

 ヨッシーは絵を描いて、僕が小説を描いている。ヨッシーにしか出来ないこと、僕にしか出来ないことをそれぞれやっている。

 とにかく僕達はやるしかないんだ。僕とヨッシーだけの楽園である美術部を守る為に。

 文化祭まで後三日、とにかく行くところまで行くしかないと思っている。

 先輩は手強い、でも僕とヨッシーの力を合わせて行けば何とかなるかもしれない。

 小説を書いているとき僕は行き詰まってしまった。

 やばい、これ以上アイディアが浮かばない、そう言う時、僕は作業を中断する事にする。

 ヨッシーが集中している時、僕はなぜかこういう時は、外の空気を吸おうと思っている。

 屋上に上がると、ダンス部か?屋上で練習している。

 みんなやる事に対して練習をして、本番までに良い結果を出そうとしている。

 僕も負けていられないと思うが、もうこれ以上アイディアが浮かばない事に自分自身に腹を立てている。

 そんな時、僕が屋上でダンス部の曲を聞き流しながら、ベンチに座っていると、ヨッシーが現れた。


「ヨッシー、どうしたの?こんな所に来て」


 僕は驚いてしまった。サヴァン症候群の特徴は無我夢中になり周りが見えないほど、物事に執着してしまうと言う、体質と言うか、才能と言うかそれとも何と言えば良いのか、じゃあ、精神的疾患?


「何、驚いているんすか?先輩」


「ヨッシー作業の方は?」


「そんなに私に作業をしていて欲しいの?」


「別にそう言う事じゃなくて・・・」


「そうじゃなくて何?」


 久しぶりにヨッシーの嫌らしい笑みを見た僕であった。僕はそれを見てホッとしてしまった。


「ちょっとスランプになっちゃって」


「私もスランプになっちゃった」


 サヴァン症候群にもスランプなんてあるのかと思って驚いてしまった。


「はあ」


 と思い切りため息をつくと、ヨッシーは。


「何ため息なんて付いているんすか?」


「スランプだよ。今は何も書ける気がしなくてな」


「先輩がそんなんで、どうするんすか?」


 とヨッシーに一喝されてしまった。

 まるで心にむちを入れられている気分になってしまった。

 するとなぜか知らないが、スランプを抜け出そうと言う気持ちになってきた。


「よし、スランプが何だ。書いて書いて書きまくってやるぞ」


「その意気っすよ先輩」


 そう言う事で僕とヨッシーは屋上を後にして、部室に戻ると、時計は午後五時を示していて、今日も僕の妹の幸子がやってきた。


「お兄ちゃん。今日も、晩ご飯を作って来てあげたよ」


 ちなみにヨッシーの友達三人のゆっこ達もいた。「パイセンもヨッシーも来た事だし、パイセンの妹さんのお弁当を食べましょうよ」

 お前等何をしに来たんだと、言いたいところだが、こいつらもヨッシーの友達として心配しているんだろうな。以前、ヨッシーは飲まず食わずになってまで絵を描き続け、死にそうになったヨッシーを心配しているんだよな。

 それに幸子も、もう来るなと言いたいところだが、幸子は幸子で僕の事が心配で来たんだよな。

 そこで初めて僕の中でぷつりと切れる様な物を感じた。

 そう、スランプを抜けたんだ。

 スランプを抜けた僕はみるみるとアイディアが浮かんできて、今、まさに小説を書きたい気分になってきた。


「よし、ヨッシーもみんな、幸子のお弁当を食べよう」


 本当に幸子のお弁当は豪華であった。

 幸子はこう見えてもお母さんに似たのか?節約上手で、安い品物をおいしく出来る料理の腕は伊達じゃない。

 幸子のお弁当は本当においしい、もっと食べたいが、あまり食べると、脳が働かなくなり、小説が書けなくなってしまうんだよな。

 ヨッシーもそうみたいだ。

 僕とヨッシーは少しだけ食べて、そうして僕は小説を描くことにして、ヨッシーは、アイパットで絵を描く事になった。

 何だかんだで、ヨッシーの絵をA3サイズのプリントアウトをしてくれているのはゆっこ達なんだよな、それに気がつけば、美術室を見てみると、ヨッシーが描いた絵でいっぱいだった。

 さらに絵の中に取り込まれてしまうんじゃないかと言うほど凄い仕上がりだった。

 僕はポメラで小説を書き、ヨッシーはアイパットで絵を描いている。

 このような時って時間を忘れるほどの気持ちに駆られてしまう。

 多分、サヴァン症候群のヨッシーはその時間さえ感じていないと思っている。

 気がつけば、時計は午後、十一時半を示している。

 そろそろ眠らないと明日の授業に支障が出てしまうし、今日はこれぐらいにしておこうと思って、絵に夢中になっているヨッシーを辞めさせて、「そろそろ寝よう」と言うと、ヨッシーは「うん」と言う。

 今日も幸子の奴学校に泊まるつもりか、ゆっこと並んで布団に入っている。

 僕とヨッシーはそれぞれ寝袋が用意されていて、僕とヨッシーは寝袋を使って眠りに入った。


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