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ヨッシーの絵の情熱

 そして放課後、時計の針を見てみると今日は水曜日で早く授業が終わるので午後二時を示している。

 美術室に行くと、もうヨッシーは椅子に座ってアイパットで絵を描いていた。

 本当に凄い集中力だ。僕が美術室に入って来た事に気がついていない。

 何を描いているのか覗いてみると、僕が小説で書いたバトルで倒した相手に主人公のメグが手を差し伸べているシーンだった。

 何もモデルもないのにここまで描き上げてしまうなんて本当に恐れいってしまう。

 ヨッシーの絵に対する才能は本物かもしれない。

 この一週間で僕の絵を凌駕するほどの物を描いてしまっている。

 今のヨッシーに声をかけるのはよしておこう、気が散ってしまったら元も子もなくなる。

 そんな時だった。

 ヨッシーの友達達三人が美術室の中に入ってきた。


「よう、パイセンにヨッシー、ちゃんと美術の活動はしているの」


 ヨッシーはゆっこの言った事に気がついていない。


「ヨッシー、どうしたんだよ。凄い絵に没頭しているじゃない」


 そこで僕が、


「今はヨッシーに話かけない方が良いよ。とにかく君達は何をしに来たの?」


 そこでシーマが。


「決まっているじゃない。君達がちゃんと美術の活動をしているか見に来たんじゃない」


「活動は真面目にしているよ。とにかくヨッシーは今トランス状態に入っているから、邪魔すると怒るかもしれないよ」


 と恐る恐る言っておいた。

 そこで島さんが。


「ヨッシー何を描いているの?」


 ヨッシーは絵に没頭していて島さんの声に気がついていないみたいだ。

 ここでヨッシーの気を散らせたら、ヨッシーは怒り出すと思って三人に説明することにした。



「へえーヨッシー絵を描くと止まらなくなっちゃうんだ」


「本当に絵に没頭しているね」


「そう言えば勉強にもそれぐらい没頭していたよね」


 ゆっこにシーマに島さんはそう言った。


「とにかく、今のヨッシーの気を散らすと怒り出すかもしれないから、君達今日の所は用がないなら帰った方が良いよ」


 するとヨッシーは。


「うるさい、さっきから何なのよ!」


 絵を描くことを邪魔されているかの様に言ってきた。

 シーマが。


「これはいつものヨッシーじゃないよ」


 ゆっこが。


「悪かったよヨッシー、今後あんたの邪魔はしないよ」


 そう言って三人は美術室から出て行った。

 そんな友達の事なんかよそにして、ヨッシーは絵を描くのであった。

 それよりもヨッシーの友達達はヨッシーの事をどう思っているのか気になった。これで縁が切れていじめられる様な事はないだろうか心配になった。

 その事は置いといて、とにかく僕も負けていられないと思ってヨッシーに続くように絵を描いた。

 描く絵はいつもと同じではなかった。いつもはヨッシーを描いて来たが、今日はヨッシーが僕の小説のシーンを描いてくれたのだ。だから僕もそれを真似るように描いた。

 絵に対する情熱はヨッシーに劣るかもしれないが、この数年間僕は絵を描き続けて来たんだ。だから負ける訳にはいかない。

 絵を描いていると心が洗練される。ヨッシーは今どういう気持ちなのか分からなかった。ヨッシーの方を見てみるとアイパットに取り憑かれたように絵に没頭している。

 僕もヨッシーと同じように僕が描いている小説のメモリーブラッドのシーンを描いている。

 どんなシーンを描けば良いのか分からないが、僕は主人公のメグがスカイツリーに登って街を見下ろしているシーンを描いた。

 我ながら良いかもしれない。

 そしてそれを描いていると本当に夢中になれ、本当にいい絵が描けそうな気がした。

 そして描いている事、時計を見ると午後六時半を示している。

 そろそろ部活もお開きかもしれない。


「おい、ヨッシー、そろそろ時間だよ」


 と僕が言うと僕の声は届いておらずに、ヨッシーは絵に没頭している。

 僕が今のヨッシーに触れるとヨッシーは怒り出すかもしれないが、そろそろ時間だ。だから僕はちょっと嫌な感じがするが、絵に没頭しているヨッシーに、肩に手を添えて怒られる覚悟をしてヨッシーに時間だよって伝えたかった。


「何だよ、先輩!」


 やっぱり怒りだした。


「もう時間だよ」


 するとヨッシーは我に返り、絵に没頭していたことを忘れて、素の顔になった。


「ごめんなさい。私また絵に夢中になっていて・・・」


「別に良いよ。君みたいな部員は必要不可欠だと思うから」


「どうしたんすか?先輩、何か泣きそうな顔をしているけれど、私何か言いました?ちょっとキモいんですけれど、相談なら私が乗りますよ」


「それはこっちの台詞かもしれない。とにかく今日もアイパットを預からせて貰うよ」


 するとヨッシーはつまらなそうな顔をして僕にアイパットを差し出すのであった。

 そう言う事で今日も一緒に帰る事になった。


「そうですか、私の友達が来て私の事が心配で来たのに、私は邪険にして追い返すような事をしてしまったんですか?」


 どうやらそれを覚えていない程、絵に没頭していたのかもしれない。


「ヨッシー明日、心配してくれたゆっこ達に謝っておけよ」


「はいっ、先輩の説教って何かキモいっすね」


 またキモいとかそう言う事を言う。


「本当にみんな心配していたんだから」


「分かりました、明日みんなに謝って置きます」


 それで良いんだ。部活の活動も大事だが、とにかく友達も大切にして欲しいと僕はヨッシーにそう思う。

 ヨッシーと別れてある人の事を思い出した。

 そう言えば僕の一つ上の部長も目の前のカンバスに目を向けるとトランス状態になり、今のヨッシーの様に絵を描くことに夢中になりすぎて絵を描いていたっけ。部長は今年受験で芸大を目指していると聞いた。

 それに部長の絵は圧巻だった。

 去年の文化祭、芸術部門で一位を取ったほどの腕前だ。

 それに、色々な賞に応募して、すべてを獲得してしまう程の物だった。

 僕も部長に憧れたが、部長の絵には敵わず、僕は気がついたら小説を書いていたんだよな。

 今度の文化祭きっと部長も参加するかもしれない。僕は部長に勝てる気がしない、でもヨッシーなら勝てるかもしれない。

 あれ程の絵に没頭できる力があれば、ヨッシーなら部長に勝てる。

 でも聞いた話だと部長は物心つく頃から絵を描いていたと言う。そんな部長にただヨッシーは描き始めると止まらない程の絵に没頭してしまうほどの絵に情熱を秘めている。

 でもヨッシーは絵に情熱を持っていても初心者だ。多分僕の絵を超えるような絵描きになれるのは確実だろう。

 そんな事を思っていると自宅に到着した。

 自宅に到着すると、妹はご飯を作って待っていた。メニューは餃子に野菜炒めにお味噌汁だった。


「お兄ちゃんやっと帰って来たのね。うちの食事のレパートリーがまた増えちゃったよ」


 妹が餃子を作るなんて初めての事だった。

 話に聞いてみるとネットを見て、作ったみたいだ。今はそう言う時代か、いちいち料理番組を見なくても、こうしてちゃんとしたメニューが作れる時代になってしまった。


「味は保証するよ。うちがちゃんと味見をしたからね」


 と幸子は自信満々に言う。

 とりあえず食べて見ると本当においしい餃子だと思った。


「おいしいよ、幸子。こんなにおいしい餃子が作れるなんて」


「お兄ちゃん。お兄ちゃんの為なら何でもうちが作ってあげる。うちは将来お兄ちゃんのお嫁さんになるんだから」


 その妹の幸子にお兄ちゃんのお嫁さんと聞いて飲んでいた麦茶を吹き出してしまった。


「何をやっているのよ、お兄ちゃん。もう汚いんだから」


 そう言って幸子は僕が吹き出してしまった麦茶を拭いてくれている。

 幸子は可愛い妹だが、兄妹同士では結婚は出来ないんだよ幸子。

 そんな禁忌を破ってまで僕と結婚をしたいのか?

 そう言えば昔そんな話をした事がある。

 思えば妹が生まれた時、僕はまだ小学一年生の時だった。本当に妹が出来て本当に嬉しかった。

 僕は妹の事を守ってやろうと思っていた。いじめっ子が来たら、やっつけてやろうと思っていた。

 けれども僕は妹に守られてばかりの存在だった。本当に情けない話だが、妹に守られて、僕をいじめていた奴は言っていたよ。


『お前は本当に情けない兄貴だな』


 って。

 妹はいじめられるような子じゃなかった。妹は男の子を泣かしてしまうほど喧嘩も強くしかも、小学生の低学年の時に少林寺拳法を習って強くなっていった。

 今も、妹は少林寺拳法に週二日通っているみたいだ。妹が相手をしているのを見たことがあるがいかにも厳つい奴で、妹と互角に対戦をしていたのを覚えている。

 でも相手の人は手加減をしているのは分かる。けれども手加減している方も妹の攻撃に『ヤア』とか『エイ』などと攻撃を加えられて痛そうにしているのが分かった。

 その時の妹の目の奥には燃えるような何かが見えているのが分かる。

 多分僕と妹が喧嘩をしたら、妹に瞬殺されてしまうだろう。

 そんな妹は言っていたよ。お兄ちゃんをいじめる奴はこのうちが許さないって。

 妹はシスコンが治っていないみたいだ。

 でも妹も年を取れば、素敵な男性に出会う事が出来ると思う。

 けれども、そう考えると、なぜだろうか切なくなってしまう。

 僕の思っている事は矛盾している。

 それで夕食は終わり、僕がお風呂に入ると、妹もお風呂に入って来た。

 これもそろそろ卒業しないといけないかもしれないな。

 さすがに妹の裸を見ても欲情はしないが、何か妹って、いや女の子って凄く良い匂いがしてたまらなくなってしまう。


「また、お兄ちゃん、嫌らしい事を考えていたんでしょ」


「考えていないよ。今日も背中を流してやるからそこに座りなさい」


 そう言って妹の背中を流して、妹の長くてつややかな髪もシャンプーで洗ってあげた。


「ちゃんと目を閉じていろよ」


 そう言って妹の髪を洗ってあげたのだった。

 僕も妹に背中を流して貰って、僕の短い髪を洗ってくれた。

 そうして妹と一緒に湯船に入り、妹は気持ちよさそうにしている。


「お兄ちゃんはうちの裸を見れて嬉しくないの?」


「そんな訳ないだろ」


 すると妹から頭突きが飛んできた。


「痛い、何をするの?」


「お兄ちゃん、嬉しくないからそうなんじゃない、将来のお嫁さんに対して失礼な事だよ」


 誰がお嫁さんだよ。僕達は兄妹なんだよ。兄妹同士結婚をしてはいけないのだよ。

 もう妹も六年生なんだから、そろそろシスコンも卒業しても良いかもしれない。

 そんな事を思っていると、妹は。


「もしかして、お兄ちゃんが連れて来た、あのギャルの裸が見たいって言うの?」


「まあ、見れたら良いよね」


 とぼそりと本音が飛び出してしまった。

 すると妹の幸子は僕の目を見つめて、その妹の目の奥には炎を思わせる、何かが見えて来た。


「何だよ。そんな目をして」


「この変態!」


 そう言って、僕に少林寺仕込みのパンチを食らってしまった。しかも顔面に。

 鼻血が吹き出て来て、それはもう大変な事に僕はなってしまった。


「お兄ちゃん目を覚ましてよ。あんなギャルのどこが良いのよ」


「とにかく、幸子、何度も言っているが、兄妹では結婚は出来ないのだよ」


「そんなのうまくごまかしちゃえば良いのよ。うちはお兄ちゃんのお嫁さんになりたいんだから」


 そう言う事で妹に少林寺仕込みのパンチを顔面に喰らって僕は意識が飛ぶほどの鼻血を出してしまった。

 鼻血が治まって僕は部屋に戻った。

 妹にやられてしまった。

 もしこの事が、ヨッシーにばれてしまったら大いに笑われるだろう。

 妹は一昨日、ヨッシーを僕が運んで来て、妹は必死に看病をしてくれた。でも妹はヨッシーの事が気に喰わないらしいし、僕は妹に結婚の約束までされている。

 冗談じゃないよ本当に。妹はもう小学六年生なんだよ。いい加減、シスコンもやめて欲しいと思っている。

 それよりも妹の事は置いといて、ヨッシーはアイパットを手にすると、人格が変わり、絵を描いていないといけないまるでアイパットに操られているような感じだった。

 ヨッシーは夢中になると、周りが何も見えなくなってしまう、何かの精神的な病気にかかってしまったのかもしれない。

 何か心配だ。

 そうだ。今日は僕の小説の連載日だ。

 主人公のメグをどのように扱うかは僕次第だ。

 とにかく面白く描いてやろうと思っている。

 ヨッシーも見てくれるだろうな。

 そしてヨッシーは僕の小説を見てくれて、明日もアイパットで、今日描いたメモリーブラッドのシーンを描いてくれると思うと、何か明日が楽しみになってくる。


 次の日、妹が作ってくれた朝ご飯も食べて、学校に出かけると、何か楽しみになって来た。

 それは僕の彼女のヨッシーに出会えるからだ。

 ヨッシーは今日どんな絵を僕に見せてくれるか楽しみだった。


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