夢中になり過ぎて
そして眠る前に僕は妹を叩いてしまった。
妹は怒っているかもしれない。
妹を叩いた手がまだ赤く染まっている。
朝起きると、台所の方からいつもの香ばしい匂いがして僕は目覚める。
時計の針は午前六時を示している。
やばいな完全な寝不足だ。
昨日の夜、妹を叩いた事と小説を夜中に書き、あまり眠れていない。
妹は怒っていないだろうか?
台所に行って妹に「おはよう」と挨拶をする。
でも悲しい事に妹にシカトされてしまった。
テレビを見てみると、星座占いがやっていた。
ちなみに僕は天秤座なので、天秤座の占いは一位を取っていた。それに一度壊れた信頼が回復すると言っていた。
僕は台所で作業している妹を見て、本当かな?と思って半信半疑だった。
妹は僕を冷たい目で見る。
でもいつも通り朝ご飯は作ってくれる。
今日はオムレツか?しかもケチャップはすでにかけてあり、『死ね』と言う文字を見て僕は戦いた。
星座占いなんて嘘っぱちじゃないか。
朝ご飯をいただいて、僕は妹に「行って来ます」と言って学校に出かけるのであった。
ちなみに妹は『いってらっしゃい』の挨拶もなしだった。
そう言えば妹は学校に準備はしていなかった。
あいつ昨日のショックで学校を休むつもりか?
そう言えば今日は妹の学校の創立記念日だったっけ。また僕の部屋をむちゃくちゃにされたらたまらないな。
「せーんぱい」
そう言って僕の背中にしがみついて来たのは誰かと思うとヨッシーだった。
今僕はヨッシーを負ぶっている状態だった。
「ちょっとやめろよ。公衆の面前でこんな事をするなよ」
そう言うとヨッシーは僕の背中から降りて。
「先輩、見て下さいよ」
そう言ってヨッシーは僕にアイパットを見せつけた。
見てみるとそれは絵であり、昨日のメモリーブラッドの戦いのシーンであった。
「凄いな。これヨッシーが描いたの?」
「私以外に誰が描くと思うんすか?」
ヨッシーはまた腕を上げた。ヨッシーは絵を描くことに夢中になっている。
それよりもヨッシーの顔色がかなり悪い事に気がついた。
「ヨッシー顔色悪いけれど大丈夫。もしかして昨日の夜中に無理して描いたんじゃないの?」
「はい、昨日は眠ってないっす」
「ダメだよ。ヨッシーそんなに無理して絵に夢中になっちゃ」
するとヨッシーは倒れそうになったところ、僕はヨッシーを抱き留めた。
「おい、ヨッシー」
もう学校どころじゃないかもしれない。
とにかくヨッシーを負ぶって僕の家に行くことにした。
女の子を負ぶって行くなんて初めての経験なのかもしれない。いや以前妹を負ぶった経験があるが、まさかよそ様の女性を負ぶって行くなんて。
とにかくヨッシーが大変だ。
僕はヨッシーを負ぶって僕の家まで運んでいった。
僕の家に到着して、僕はヨッシーを僕の部屋に連れて行って、そこには妹がいて僕のパソコンをいじくり回していた。
そんな事はどうでも良く僕はヨッシーを僕の布団の上に乗せて眠らせた。
「お兄ちゃん、何をしているの?」
「お前こそ、何をしているんだよ」
すると妹は黙り込んでしまった。
今は妹の事よりもヨッシーの事が心配だ。
ヨッシーは気絶したかの様に眠っている。
これは彼氏として絵を描き過ぎる事をやめさせなければならないかも。
何の芸術家は忘れたが、絵を描く事に夢中になりすぎて、飲まず食わずで与えられたパンでさえ消しゴムにしてしまうほどの絵描きがいると聞いている。
まさかヨッシーがそこまで絵に没頭するとは思わなかった。
「ヨッシー大丈夫か?」
「せん・・ぱい・・・ちょっと・・大げさ何じゃない?」
「とにかく、安静にしていろよ。絵を描く事は良いけれど、限度って物を知らないのかよ」
「分からないけれど、絵を描いていると夢中になって、やめられなくなっちゃった」
そこで妹が。
「お兄ちゃんその人」
険悪な目つきで妹が言う。だから僕は。
「お前は黙っていろ」
「何よ、うちだって心配しているのに」
そう言って妹は部屋から出て行ってしまった。
そうだ。僕が負ぶって行く前に救急車という物があるではないか。それに乗せて行けば良かったのかもしれない。
「とにかくヨッシーお前は安静にしていろ」
これでとりあえず、良かったのかもしれない。
「ヨッシーちょっと失礼」
そう言ってヨッシーの頭に手を当てた。
熱はなさそうだ。きっと過労だろうな。
「ちょっと、先輩キモいんですけれど」
すると妹が何かお盆を持ってやってきて。
「お兄ちゃんがせっかくここまで運んで来てくれたのに、そう言う言い方はないのじゃない」
お盆に乗っかっている物はお粥だった。
妹は知らないんだな。俺に対してキモいと言う言葉はヨッシーの褒め方だと言うことを。
「幸子、ありがとう」
「別にお礼を言われる程の事じゃないよ。このお粥もレトルトのお粥だし、それにこれ」
お粥の乗ったお盆を机の上に置いて、妹が取り出したのは桃缶だった。
昨日はこのギャルみたいなヨッシーと付き合っていることを言ったら、暴れて僕はそんな妹を叩いてしまったが、妹の幸子もヨッシーとの交際を認めてくれるのかもしれない。
ヨッシーは空腹であるから、僕は妹が僕の机の上に置いたお粥の乗ったお盆を取って、ヨッシーに差し出した。
「ヨッシーお腹が空いただろ、とにかく食べろよ」
お盆の上に乗っかっているお粥を取り、ヨッシーに差し出した。
ヨッシーはレンゲを取って、お粥をすくって食べると「おいしい。幸子ちゃん、ありがとう」と言っていつもの嫌らしい笑みではなく素直な感じで妹に言った。
「別にうちは何もしていないよ。そのお粥だってレトルトのを暖めただけだし、とにかくお兄ちゃんがうちまで運んで来てくれたことに感謝してよ」
「分かっているよ」
そう言って妹は桃缶を開けて、それをお盆に乗せて僕の部屋から去って行った。
「先輩の妹さん、可愛いね。それに兄貴の先輩とあまり似ていないね」
「ヨッシーとにかく幸子にも感謝しろよ」
「分かっているっすよ先輩」
そう言って余程空腹だったのか?ヨッシーはお粥をガツガツと食べている。そして桃缶にも手をつけておいしそうに食べている。
空腹を忘れる程、絵に没頭していたのか?ヨッシーは桃缶を食べて、徐々に顔色が良くなって来た。
太宰治は言っていたが、『空腹を感じない事があります』何て意味不明な事を言っていたが、このような夢中になる事は空腹を忘れてしまう事だと言うことに今更ながら意味が分かった。
太宰治も小説を書く時、夢中になりすぎて空腹を忘れてしまうんじゃないかと思った。
そんな事より、空腹を満たしたヨッシーは再びアイパットを取って絵を描こうとした。
だから僕はそのアイパットを取り上げて。
「何をやっているんだよ、ヨッシー、絵ばかり描いているから、空腹になって過労になるんじゃないか」
「先輩返してよ、私にはもう絵しかないのだから」
「返して欲しければ、今すぐに休め。これは僕の命令だ」
「本当に先輩はキモいんすから」
そう言ってヨッシーは眠りに入っていった。
とりあえずヨッシーのアイパットを取り上げて、こいつは何を描いていたのか気になった。
見てみると僕の絵ばかりで中にはヨッシーの友達のゆっこやシーマや島さん何かを描写していた。その絵の実力は僕以上かもしれない。
それに僕の描いている小説の主人公やら敵やらが描かれている。
これは本当に凄いかもしれない。
ヨッシーは眠っている。
そう言えば僕達は学校を無断で休んでしまった。この事はどのように説明すれば良いのか分からなかった。
とりあえずヨッシーが元気ならそれでいいのかもしれない。
ヨッシーはもしかしたら手腕な芸術家になれるかもしれない。
まあ、それは置いといて、今はヨッシーの看病をするしかない。
ヨッシーは気持ち良さそうに眠っている。
それを見た僕はホッとして、妹は僕のパソコンで何をしていたのか気になりパソコンを見てみると、僕の小説を見た痕跡があるだけだった。
勝手に人の物を使ってはいけないと後で叱ってあげた方が良いかもしれない。
時計の針を見てみると午前十時を回った所だった。
そんな時、僕の家に電話が一本入った。
妹が出て、
「お兄ちゃん、学校から電話だよ」
「ハーイ」
そう言って電話に出てみると、担任の園田先生が出てきた。
「どうしたんだ。深瀬、今日学校を休んだりして」
「ちょっと急病になった僕の友達がいて」
「もしかして、その友達って、君の部活の芳山さん何じゃないか?」
「そうです」
隠す必要もないので正直にここは言った。
「何だ?君達は付き合っているのか?」
「はい、付き合っています」
「とにかく高校生らしいお付き合いをするんだよ。まあ、優秀な君なら、変な事はないと思っているけれど、もうあれはやったのか」
先生ともあろう者が何と言う破廉恥な事を聞いてくるのだろうと憤りを感じて「していません!」と受話器に向かって叫んだ。
「それは悪かったよ。とにかく芳山さんは素行の悪い生徒だからちゃんと君がしっかり見守ってあげるんだよ」
「分かりました。今日は芳山さんを僕の家に預からせて貰っています」
「やっぱり、不純異性行為をやっているんじゃないか」
「誤解しないで下さい。彼女、最近アイパットで絵を描く事に夢中になって飲まず食わずで眠りもしないで絵を描き続けて過労で倒れてしまったのを僕が助けただけです」
「そうか、君は嘘を言う生徒じゃないな、とにかく高校生らしいお付き合いをするんだよ」
「はい」
「じゃあ、明日は学校に来なさいよ。今日の所は多目に見てあげるから」
「ありがとうございます」
「じゃあね」
そう言って園田先生は電話を切った。
僕は学校に行かないと何も出来なくなるタイプ何だよな。
でも一日ぐらいなら大丈夫。
もしヨッシーが目を覚ましたら、アイパットを返して、お互いの熱を感じながら絵に没頭する事が出来るかもしれない。
でもヨッシーはアイパットを渡すとまた夜、飲まず食わずで空腹も忘れてしまうほど没頭してアイパットで絵を描き続けるかもしれない。
このアイパットはヨッシーが買った物だが、これは僕が預からせて貰うしかないかもしれない。僕の部屋に戻ってヨッシーの様子を見に行って、ヨッシーは眠っていた。
これでいいんだよ。
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