恋人関係とヨッシーの絵の情熱
「ヨッシーも僕の絵を描いて見せてよ」
「分かっているよ」
そう言ってヨッシーは絵を描くスイッチが入ってしまったみたいだ。
ヨッシーは周りの雑音も気にしないで描いている。僕もヨッシーに負けていられないと思ってアイパットを使い描くことにする。
僕はヨッシーの事を毎日描いているのでもう描き慣れているので二十分くらいで描くこ
とに成功した。
「ほら、ヨッシー描けたよ」
「マジで、マジ先輩キモいっすよ。私の事をこの短時間で描いてしまうなんて。それに私はまだ描けていないのに」
と落ち込んでいる。だから僕は。
「最初からすぐに出来る事なんてないよ。僕は描き慣れているから描けるんだよ。だからヨッシーも色々と修行をして描いていければ僕の様に描ける様になってくるよ」
「私もキモい先輩の様に描けるようになるかな?」
「なれるとも。ヨッシーの絵に対する気持ちは本物だと僕は思うから」
そう言ってヨッシーは今日かったアイパットで僕の絵を描こうとしている。
そうして四十分くらいが経過して、ヨッシーは僕を描く事に成功したみたいだ。
「出来た」
そう言ってヨッシーはご満悦の様だ。
「出来たなら見せてよ」
「いや、それは出来ないよ」
ヨッシーは恥ずかしいのか僕を描いた絵を見せようとはしなかった。
「良いから、見せてよ」
「先輩キモいっすよ。私が描いた絵を見せてくれって」
「まあ、そこまで言うなら見ないよ」
するとヨッシーは。
「そんな事を言わないで見てよ」
そう言ってヨッシーは最大限の勇気を出して、僕にヨッシーが賢明に僕の事を描いた絵を見せる。
「うまく描けているじゃないか」
「嘘、先輩の絵と比べたら、月とスッポンじゃない」
「月とスッポンまでとは行かないけれど、本当にうまく描けているよ。素人が描いた絵とは思えないよ」
「何よ素人って、私はこれでも懸命に描いたんだから」
僕を描いたヨッシーの絵を見てみると本当に良く描けているが、まだまだ正直僕には到底及ばない。
「ヨッシー、僕のように描けるようになるにはまだまだ修行が足りないよ」
「キモい先輩にそんな事を言われるなんて」
「とにかくヨッシーは絵がうまくなりたいんだよね」
落ち込みながら頷くヨッシー。
「どうして、そんなに絵がうまくなりたいの?」
「先輩がキモいほど懸命に描いている姿を見て、私もキモいほど描いてキモい程うまくなりたくなっちゃって」
「とにかくうまくなりたいんだね。だったらとにかく練習あるのみ」
「先輩みたいにキモいほど描いていければ私にも先輩のようにキモいほどうまくなれるんだよね」
時計の針を見てみると午後六時を示している。
「じゃあ、ヨッシーそろそろ遅くなるといけないから帰ろうか」
「うん。分かった、もうちょっと描いていたいけれど、時間だからね」
そう言って僕とヨッシーはアイパットを鞄の中にしまい、電車に乗って帰るのであった。
「先輩、今日は楽しかったよ。キモい先輩と良い買い物が出来て」
「それは良かった」
それよりもキモいって言うのはやめて欲しいと言いたいところだが、ヨッシーはキモいと言うことは僕の事を褒めている証拠でもあるんだよな。
本当にヨッシーは仕方のない奴だ。
家に到着してのは午後七時になった所だった。
「ただいま」
すると妹の幸子はリビングで携帯をいじくっている。
「幸子、今日のご飯は?」
「今日はシチューよ、暖めて食べてね」
そう言う事で妹は携帯をいじくっていて何をしているのか気になった。
「幸子、携帯をいじくって何をやっているの?」
「お兄ちゃんのネット小説を見ているの」
「そうか、お兄ちゃんのネット小説、そんなに面白いか?」
「確かに面白いけれど、何でうちに黙ってこんな事をしているの?」
「別に黙っている訳じゃないけれど、あまり人に小説を書いている何て言われたら恥ずかしいからかな?」
「恥ずかしいの柴田盟先生、こんなに凄い小説が書けるなんて」
「幸子、そんなに僕の小説が面白いかい?」
「面白い。こんな面白い小説を書いているなんて思ったら、お兄ちゃんには罰を与えないといけないね」
「何、罰って?」
「とにかく夜ご飯食べちゃって」
そう言う事でお風呂に入って、パジャマに着替えて僕の部屋に戻ると、妹の幸子はボードカードゲームを用意して待っていた。
「とにかくお兄ちゃん、レアカードは使えないようにするから」
それじゃあ勝負は見えているだろ、幸子。
そう言う事で妹とボードカードゲームをする事になった。
ボードカードゲームを午後十時まで付き合わされてしまった。
*
次の日、朝起きると、台所から香ばしい匂いがして目が覚めた。
妹がベーコンエッグを作っているのだろう。
早速台所に行くと、妹はベーコンエッグを作っており、今、お皿に乗せて野菜を盛り付けてついでにトーストを焼いて待っていた。
幸子は良いお嫁さんになれそうな気がした。
「さあ、お兄ちゃん食べて」
そう言って妹は僕に朝ご飯を提供してくれる。
「いただきます」
と言って食べようとすると、僕は思わずに言ってしまった。
「幸子は良いお嫁さんになれるよ」
と。
「何を言っているの?早く食べてよ」
そう言われて僕は早速食べる事にした。
*
学校でつまらない授業を聞いて、黒板に先生が書いた問題を僕達はノートに書き写す。
でもそうでない人もいる。
この学校は進学校であるが、その分やさぐれてしまう人もいる。
良くヨッシーはこの学校に入れた者だと感心してしまう。それにヨッシーとつるんでいるヤンキーじみた女子達。
まあ、僕はやさぐれていないようで、成績もトップクラスに入っている。
それで中間テストが終わったら、文化祭と言う面倒な行事がある。
それで後二年が経てば僕は卒業する事になる。
卒業って何なのだろう。
ただ学校を出て大学に行くか社会人になって働くか、それとも高学歴ニートとなってしまう連中もいると聞いている。
さすがに高学歴ニートにだけはなりたくないよな。
僕の席は窓際だ。
今日も空が青い、まだ残暑は真夏の様に残っている。
でも授業が終われば僕の彼女であるヨッシーに出会えるのだ。
そう思うと学業も絵も頑張れる気がする。
ヨッシーの事を考えると幸せな気持ちになれる。
まさか僕みたいな根暗な人間に彼女が出来るなんて思いもしなかった事だった。
昔から僕はいじめられていた。
小学校の時も中学の時も。
雑巾で絞った水を飲まされそうになったり、殴る蹴る当たり前。
でもこの進学校に入って、いじめられる奴はいるが、僕はいじめられていない。
大抵いじめられる奴って何か特徴があるんだよな。僕は根暗だった事にいじめを受けていた。それかだらしのない人間がいじめられる。それか正義をかざす者もいじめられる。
なぜ人はいじめをするのだろう。
いや簡単な事か、人間はそれが楽しいからやっているのだ。いじめられる人間は命に関わる程嫌なのに。
まあ、いいや、僕がいじめられていた時、妹だけが僕の味方だった。親は単身赴任で帰って来ないし、僕と幸子の分のお金を振り込んでそれで生活を僕と妹の幸子と暮らしている。
お金には困った事はないが、人間関係のトラブルはたくさんあった。
でも妹はいじめられなかった。妹は僕のような根暗とは違い、明るくて周りの男子達に憧れの目で見られているんだよな。
それで今では小学六年になり、学校の委員長になって、妹のクラスにはいじめがないと言っている。
僕はそんな妹が羨ましかった。
*
放課後になり、やっとヨッシーに逢えると思って美術室のドアを開けると、ヨッシーはアイパットで絵を描いている。
扉を開けて僕が入って来たにもかかわらずに、僕の存在に気がついていない。
「ヨッシー」
僕が呼ぶと、ハッと気がついて、
「先輩、来ていたんすか?」
「うん、ちょっと前からいたよ。それよりも凄い集中力だね」
気のせいだろうか、ヨッシーの顔を見ると目にクマが出来ている。
昨日アイパットを買って昨日は多分アイパットで絵をずっと描いていたのかもしれない。
「私、絵を描くことに没頭してしまいまして」
「そうなんだ」
「先輩には負けられないと思って今、絵にハマっているっす」
何だろう。その集中力は、僕も絵を描いて来たが、それほどの集中力を出す事は出来なかった。
僕も負けていられないのかもしれない。
僕もアイパットを取って、ヨッシーの絵を描いた。
我ながら今日のヨッシーもなかなかうまく描けていると思う。時間は二十分はかかった。
「ヨッシー、描けたよ」
ヨッシーに僕が描いたヨッシーの絵を見せる。
「やっぱり先輩には敵わないか」
そう言ってヨッシーは僕を描いた絵を僕に見せた。
それはもう凄い物だった。これ程の物を描くにはいくらか勉強が必要なのに、ヨッシーはそんな理屈的な勉強を凌駕する程の物だった。
「凄いよ。ヨッシー」
「昨日YouTubeの動画で絵の描き方を見たんだ」
なるほど、それだけでそれだけの絵を描けるのか?これはもう才能なのかもしれない。
ヨッシーの絵に対する才能は本物かもしれない。何か悔しい感じがした。
僕に持っている物を取られた気がした。
でも僕にはヨッシーよりも小説や、勉強だって出来る。
けれども、そんなんで勝った何て思いたくない。だから僕も描くのだ。
*
そうアイパットで絵に夢中になっていたら、すぐに時間は経ち、時計の針は午後六時を示していた。
さすがに疲れた。
でもヨッシーはアイパットで絵を描いている。凄い集中力だ。これ程、絵に没頭する人は初めて見た。
「ヨッシー」
名前を呼んで見たが、ヨッシーは絵に夢中になっており、返事がない。
ヨッシーの絵をのぞき込んで見ると、ヨッシーは友達のゆっこや、シーマや島さん、それと自分の絵と僕の絵を描き、楽しく戯れている感じの絵だった。
これは凄い絵だ。でも僕には到底敵わないかもしれないけれど、ヨッシーは凄いスピードで絵が上達している。
またしても僕も負けていられないと思って、アイパットを取って絵を描こうとしたが、もう時間だ。
「ヨッシー」
再び名前を呼んでも絵に夢中になっている。
だから僕はヨッシーの肩を小突いて。
「ヨッシー!」
「ああっ!」
と叫び、
「何すか先輩、邪魔しないで下さいよ」
「もう時間だよ」
「そうっすか、時間すか・・・」
「それよりも、凄い絵を描いたな。それにその集中力、凄い物だと僕は思うんだけれども」
「何か、絵を描いていると心が夢中になって、アイパットを手放せないんすよ」
「それは分かったから、そろそろ帰ろう」
そう言う事で僕とヨッシーは帰る事にした。
いつものようにヨッシーと帰ると、ヨッシーは心そこにあらずだった。
「ヨッシーちゃんと寝ろよ」
「分かってますよ先輩、私、もっとたくさんの絵を描いて絵がうまくなれるようにしたいんす」
「そんなに夢中になれるなら、きっと僕よりも凄くうまくなれるんじゃないか。僕はヨッシー程の集中力はないからな」
「そうなんすか?」
嬉しそうに言うヨッシー。
そう途中まで一緒に帰り、互いの家の分岐点に差し掛かり、ヨッシーは『バイバイ先輩』と言って帰って行った。
僕は帰ったら小説を書かなければならない。
家に帰ると妹はご飯を作って待っていた。
「お兄ちゃん、何時だと思っているの?遅いなら電話くらいしてよ」
妹に怒られてしまった。
食事も済んでお風呂に入り、部屋に戻ると妹は僕のアイパットを見て怒ってきた。
「お兄ちゃん。これはどういう事なの?」
ヨッシーをたくさん描いた絵をどうやら妹は見てしまったらしい。
「こら、幸子、人の物を勝手に見るんじゃないよ」
「それは謝るよ。いくらでも叱られてあげるよ。でも何でこの女ばかり描いているのよ。うちはこの女は認めないって言ったわよね」
「そんなの僕の勝手じゃないか」
「この女とはどういう関係なの?」
僕は言うのはためらったが言うしかなかった。
「恋人関係だよ」
すると妹は『ガーン』と言う様な感じでショックを受けていた。
「何よ何よ何よ!」
妹は悲鳴を上げながら僕の大切なアイパットを僕に投げつけて来た。
そうして僕の部屋をむちゃくちゃにして暴れ出したので、僕はつい妹に頬を叩いてしまった。
すると妹は泣きながら僕の部屋を出て行ってしまった。
ちょっとやり過ぎたかもしれない。妹はあんなヤンキーの様なヨッシーと付き合って心配なのだろう。
妹を叩いた手を見てみると、赤く腫れて降り、叩いた手から痛みを感じた。
ため息を一つこぼして、僕は妹がむちゃくちゃにした僕の部屋を自分で片付けて、妹が投げつけたアイパットは壊れていないか確かめて見ると、壊れてはいなかった。
小説を書こうとしたら、妹を叩いてしまった蟠りが僕の中で芽生えて、あまり集中出来なかったが、それでも書かなければ僕の小説を楽しみにしている人に申し訳がなくて、書く意欲を増長させた。
書き上がった時には時計の針は午前一時を示していた。
そうしてネット小説に投稿させた。
感想が書かれていた。
『面白かった』とか『いつも楽しみにしています』とか『これからも頑張ってください』とか色々と意欲に増す感想が書かれていた。
「よし、これからも頑張るぞ」
僕は人知れず言って自分自身を鼓舞するのだった。




