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花火大会

 期末試験は終わり、僕は学年で三番だった。

 僕は周りから注目の的になっている。

「すげえな、深瀬」「あいつ三番かよ」とか言われている。

 まあ勉強が好きになり、ちゃんと勉強を普段からやっていれば、これぐらいの事は出来るのだよ。

 それよりも芳山達の学年の方を見に行くことにする。

 芳山達の学年に行くと、芳山達は何か深刻そうな感じで四人で佇んでいる。

「どうしたんだ君達、あれだけ勉強をしたのに、出来なかったのか?」

 すると芳山は。

「ああ、テストは良かったよ、私は十番でゆっこが二十番で、シーマは十五番で島さんが二十五番だった」

「凄いじゃないか、勉強をして損はなかった見たいじゃないか」

「でも先輩私達がこんなに良い成績を取る事なんて担任が、あり得ないって疑うんだよ」

「何だって!」

 芳山の発言に僕はなぜか凄まじい怒りを感じた。

 芳山達は頑張ったのに、なぜ教師達は生徒を信じてやれないんだと思った。

 僕は芳山の担任に文句を言おうとして、職員室に向かった。

 ゆっこが。

「パイセン、どこ行くんだよ」

「君達があんなに頑張ったのに、君達の教師に直談判をしてくるよ」

「パイセンがそんな事をしなくても良いよ。いつもあたし達、普段から素行が悪くて勉強も出来なかったんだから」

「君達は頑張った。それを無碍むげにするなんて許せないよ」

 そうだ。こいつらは頑張った。なのに、それを無碍にする担任を許してはいけない。

 でもいざ直談判に行こうとすると、足がすくみそうになっていた。

 だが、もう後には引けない。

 すると芳山は。

「先輩、体中がガタガタじゃないですか、格好つけなくてもいいですよ」

 と嫌らしい顔つきで言った。

 それを見て僕は。

「芳山さんは悔しくはないのかよ。芳山さんも頑張って、みんなも一生懸命頑張ったんじゃないか。それに格好をつけているわけじゃない」

「先輩・・・」

 別に僕は格好をつけているわけじゃない。こいつらは勉強嫌いだった事を克服して、勉強を頑張った。 

 それを無碍にするなんて許さない。

 そして職員室の前に辿り付いて、いざ直談判なんて偉そうな事を言ってしまったが、さすがにこれは勇気が必要かもしれない。

 僕は心の中で願った。

『僕にほんの少しの勇気を下さい』

 と。

 僕は大きく深呼吸をして、「失礼します」と言って「芳山さん達の担任って誰ですか?」職員室にいる先生達はみんな僕の事に注目している。

 そしてその担任は名乗りを上げる。

「俺だが」

 その先生は威厳のある柴犬の柴田って言う数学の先生だった。

「何だ、深瀬か、俺に何の用だよ」

 威圧的な目で僕の事を見る。

 僕は戦いていた。こんな事になるなら、芳山達の事をたんかを切って言うんじゃなかったと思った。後ろを振り向くと芳山達が俺の事を心配そうに見ている。

 僕にほんの少しの勇気を振り絞って僕は言う。

「あの、柴田先生、芳山達の順位を疑っているそうじゃないですか?」

「疑って何が悪い、こいつらは俺のクラスの腐ったミカンの様な奴らだ。そんな奴らがあんな良い成績をとれるはずがない」

 さすがの僕も柴田に対して、カチンときて言う。

「お前なんて教師をやる資格などない!」

「何だとこの野郎!」

 柴田は僕の胸元を掴み、拳を丸めて僕の顔面にその拳を突きつけた。

 凄まじい痛みが僕の顔面ににじみ出た。

「先輩」「パイセン」「深瀬」「おい」


 その後の事だった。芳山達は神聖なる職員室に入って、柴田に襲いかかった。

 芳山とゆっこって言う二人は凄く喧嘩慣れしていて、柴田に対して、ものすごい攻撃を喰らわせて、柴田は気絶した。

 周りの先生達は。

「何なのだ君達は?」「ここは神聖なる職員室ですよ」

 柴田に攻撃を加える芳山達は周りの先生達に止められて、「「離せよ」」と喧嘩慣れしている芳山とゆっこは止められて、シーマも島さんも止められた。

 僕は許せなかったんだ。芳山達は本当に頑張った。それなのに芳山達の担任は言っていたが芳山達の事を『腐ったミカン』とまで言っていた。

 芳山達四人はいつもクラスでハブられていた。

 周りの生徒からは恐れられていた。

 確かに芳山達は問題児で性格も悪い事を僕は知っている。でも芳山達四人は本当に勉強を頑張っていた。

 芳山達はいつも授業中に机を並べて、菓子を机において食べながら食っちゃべっていたみたいだ。それは確かに柴田の言うとおり、疑われるかもしれない。

 だけれども、僕の担任の園田先生は僕が彼女達の勉強を見て頑張っていた事を信じてくれたみたいだ。

 園田先生は言っていたよ。

 僕の様な成績が優秀な子が付いていれば彼女達の実力も本物だろうと。

 信用してくれるのはありがたい。

 それで僕は芳山達にお礼を言われた。

『ありがとう』

 と。

 そう言う事で期末試験は終わり、念願の夏休みに入った。

 夏休み僕は毎日小説を書き、ネットに掲載させた。もちろん毎日書いている小説は芳山も見ているだろう。

 毎日芳山は僕のスマホに連絡をくれる。

 内容についてキモいだの、僕には相応しくないだろうとか、色々と言われてしまうが、そこまで僕の小説を真剣に読んでくれている事に嬉しさを感じた。


 そして八月に入り、僕は芳山達に近所の花火大会に誘われた。

 集合場所はとある神社の境内だ。

 鳥居の前で待っていると、芳山達はやってきた。「先輩」「パイセン」「先輩」「先輩さん」

 順に芳山、ゆっこ、シーマに島さん、芳山以外ニックネームでしか覚えていないが、みんな浴衣姿で来ている。

 僕はネズミ色のチノパンに黒のTシャツと言うスタイルだった。

 周りの人達はカップルだらけだった。

 特に女性はほとんど浴衣を着ていた。

「お、おう、みんな来ていたのか?」

「パイセン、あたし達気合い入れて浴衣着てきたのに、どうしてパイセンは普段着のままなの?」

 僕の肩に腕を回してゆっこが言ってきた。

「いやあ、僕は浴衣は持っていないし、僕に浴衣なんて似合わないでしょ」

「ちょっと、ゆっこ」

 芳山は僕の肩に手を回しているゆっこにやめろと言わんばかりに言う。

「あっ、悪ぃ」

 すると芳山は、

「先輩、いつものスタイルの方が似合うよ。先輩が浴衣なんてキモいからね」

やっぱりいつもの芳山だった。

 鳥居をくぐり、階段を登っていくと、様々な屋台が並んでいた。

 シーマが。

「うち、射的やりたい」

 そこでゆっこが。

「じゃあ、射的で勝負しようよ。誰が一番景品を取った物が勝ちで、ビリの人が勝者の言う事を聞くって言うのはどう?」

 芳山が。

「それ面白そう」

 射的は五回で三百円、景品はプレイステーション5何かが置いてあるが絶対にとれないようになっているだろう。

 その他の景品はクマのぬいぐるみやポッキーとか色々とある。

 最初は芳山で芳山は射的を持って離れて、助走をつけて、射的を放った。

 するとプレイステーション5が落ちた。

 みんな驚いていたし、店の亭主が、「そんなのありかよ」と文句を言っていたが、店の亭主はプレイステーション5を芳山に渡すのだった。

「どーよ。先輩、私達より下だったら、言うことを聞いて貰いますからね」

 そんな事よりもプレイステーション5を落とした事に僕は驚いていた。

 プレイステーション5か僕はそれが欲しかったんだけれども、芳山みたいに助走をつけて行けば良いのじゃないかと思ってやってみた。

 僕も助走をつけて任天堂スイッチを取ってやると思っていた。

 だが僕は芳山みたいに運動神経は良くなく、僕は隣のクマのぬいぐるみを取ることに成功した。

「パイセンナイスじゃん」

 ゆっこが親指を突きつけて言う。

 するとゆっこは射的上から離れて助走をつけて任天堂スイッチを落としたのだった。

 すると亭主は、「もう商売あがったりだ。もう助走をするのはなしだ」と亭主は嘆いていた。

 シーマはもう助走は出来ないので、もう任天堂スイッチやプレイステーション5何かを狙う事は出来ないだろう。

「うちの実力を舐めないでよね」

 シーマは射的をする時に瞬時に体を素早く動かしてゲームボーイアドバンスを取った。

 芳山が。

「凄いじゃない、シーマ」

 すると亭主は、

「もうお前らに射的をさせる事は出来ないよ。もう良いからとっとと行っちまえ」

 結局島さんだけが、射的をする事が出来なかった。芳山が。

「じゃあ、島さんは不戦勝で、私がプレイステーション5を手にしてゆっこが任天堂スイッチを手にして、シーマがゲームボーイアドバンスを手にしたのだから、この勝負先輩の負けね」

 ゆっこが。

「じゃあ、パイセン、芳山に何か命令をされると」

「じゃあ、先輩私達が遊んでいる間に花火が見れるところを確保して置いて下さいよ」

 花火が打ち上がるのは八時だ。今は六時半を示している。

 ああ、何か面倒な事になってきた。勝者は敗者に命令を出来る事となっているからな。

 仕方がない。そこで僕はクマのぬいぐるみを持っている。こんな物僕が持っていても仕方がないので芳山にあげる事にした。

「芳山さん」

「何、先輩」

「これ、あげるよ」

「ええっ、良いの?」

 凄く嬉しそうな顔をして、なぜか芳山はしまったと言うような顔をして。

「先輩、キモいですよ。今時、クマのぬいぐるみがプレゼントなんて」

 ゆっこが、

「入らないなら、あたしが貰うけれども」

「ダメだよ。ゆっこ、これは私に先輩がくれた物なんだから」

 するとゆっこは、嫌らしい笑みをして、

「よっしーはパイセンの事を気に入っているみたいだからな」

「とにかくお前らは屋台でも見て来いよ」

 そう言って、ゆっこと、シーマと島さんは、僕達が確保した花火の場所から去って行った。

「芳山さんは一緒に行かないの?」

 すると芳山は嫌らしい笑みをこぼしながら、

「先輩、毎日先輩の小説読んでいますよ。本当に先輩とは真逆のヒロインの彼氏でしたね」

 それから僕の小説を詰ったりしたのだった。それで僕は言うのであった。

「そんなに僕の小説、面白い?」

 すると芳山は凄い焦った顔をして。

「そんな訳ないじゃないですか。先輩のキモ小説を見ていると何か先輩の憧れが見れて楽しいんですよ」

 それって僕の小説が面白いと言う事だよ芳山。と僕は心の中でそう呟いていた。

 僕と芳山は語り合った。

 芳山は口が悪いが、案外良い奴なのかもしれない。それに芳山の友達達も結構良い奴だ。

 そして花火が始まる三十分前に芳山の友達達は帰って来た。

「チース。お待たせ。パイセンとヨッシーの分の焼きそばとフランクフルトとその他に色々と買って来てやったぞ。島さんが値切るのがうまいからな」

 ゆっこがそう言って本当に凄い量だ。僕達でこんなに食べられるかが心配になってきたし、いったい島さんはどのようにしたら、こんな量の食べ物を値切ったのだろう。

 芳山が、

「どうしたらこんな量を値切れたの?」

「とにかく値切るならうち任せなさいよ」

 そこで僕が、

「こんな量でいったい、いくらしたの?」

「それは秘密でーす」

 そう言って島さんはフランクフルトを食べるのだった。

 芳山達は島さんが値切った屋台の料理を食べている。なぜだろう?女子がこうして食べていると何かいやらしい感じがして、鼓動が高鳴った。

 そんな事をしていると芳山達に悟られるので僕も島さんが値切った食べ物を食べる事にした。

 食べてみると、どうして屋台の物ってこんなにおいしく感じられるのか不思議に思った。

 そして夜空の中で大きな音と共に花火が咲いては消えていき、どうやら僕達が食べている間に花火大会は始まったみたい。

「たーまーやー」

 と芳山はそう言って僕の手を取った。

 芳山の方を見ると、いつものいやらしい笑顔ではなく、穏やかな笑顔で僕を見て。

「先輩、綺麗ですね」

「うん」

 確かに綺麗だ。

 こうして芳山とその友達と花火大会に来て本当に良かったと思った。

 昔から僕は友達なんていらないし、気を使うのも面倒だと思って、人とは距離置いていた。

 あまり目立たないし、いじめにも少しはあったが別に問題なんてなかった。

 でもこうして芳山とその友達達と友達として付き合うのも悪くはないと思っていた。

 すると僕の右手にゆっこの手が握られた。

 ゆっこの方を見てみると、ゆっこはいつものように芳山の様ないやらしい笑みではなく、穏やかな笑みを浮かべて僕を見つめた。

 そこで芳山が。

「ちょっと、ゆっこ、先輩が困っているでしょ」

「何、ヨッシー焼きもち焼いているの?」

「別にそんなんじゃないよ」

「ヨッシーもパイセンの手を握っているじゃない」

「わ、私は良いのよ」

「何が良いの?」

 先ほどの穏やかな笑みとは一転して、嫌らしい笑みを浮かべてゆっこは言う。

 このままじゃ、芳山とゆっこの言い争いになってしまう。

 するとシーマも島さんも。

「せーんぱい」「先輩」

 そう言って後ろから抱きついてきた。

「ちょっとやめてよみんな、僕が潰れちゃうよ」

 どうして女子四人に僕はこんなにも好かれてしまったのか分からなかった。

 とにかくみんなの気を反らさないといけないと思って、花火の方を見ると、ナイアガラの花火が咲いていた。

「見てよ、ナイアガラの花火だよ」

 すると女子達は芳山以外、僕から身を引いた。

 そんな芳山の方を見ると、何かゆっこの言うとおり焼きもちを焼くような顔をしている。だから僕は。どうすれば良いのか分からずに。

「芳山さん」

「ヨッシーって呼んで」

「じゃあ、ヨッシー、とにかくごらんよ、花火を」

 初めて芳山のニックネームで呼んでしまった。

 ヨッシーってもしかしたら僕の事を・・・?いやそんな訳ないか。

 ヨッシーは僕の手を繋いだまま立ち上がり、僕と共に花火を見るのであった。

 本当に綺麗な花火だ。

 こうしてヨッシー達と見てみると僕の何か良い思い出として残るのかもしれない。

 こんな事は初めての事だった。

 友達とこうして花火大会と言うイベントでこんなにもテンションが上がりそうな日はなかった。

 僕はよっしーの事が好きなのかもしれない。

 でもそれは叶わぬ願いであろう。

 僕のようなパッとしない根暗で男らしくない僕を誰が好きになるのだろう。

 僕はヨッシーの嫌らしい顔の笑顔も好きだし、それに先ほど初めて見せてくれた穏やかな笑顔も好きだし、とにかく僕はヨッシーの事が好きなんだなと思った。

 そんなふうに花火を見ていると、このまま時が止まってしまえば良いのにと僕は本気で思った。


 でも終わりと言う物は当たり前の様にやってくる。


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