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強迫観念という緊張の根源

挿絵(By みてみん)


公衆トイレの清掃でも破損箇所の修復をした事もあり、魔力をそれなりに消費したのだが…


食事と睡眠を摂って魔力が回復した時点で「使用可能魔法一覧」をチェックしてみると、またグレーアウト状態から解放された魔法が増えていた。


今回、解放された魔法は

身体検査フィジカルイグザミネーション

解呪ディスペル

の二つ。


身体検査フィジカルイグザミネーション」で出来ることは…いわゆる診察・診断。


解呪ディスペル」はまんま解呪。呪いを解く魔法。

「何をもってして呪いだと見做すか?」には基準がある。


「生体ソフトウェアの非整合的改竄」つまりネット端末のOSに擬えるなら「コンピューターウィルスによる活動」を「呪い」だと見做している。


よって「解呪」魔法とは「ウィルス駆除ソフト」のようなものだと言える。


外部からの悪意によって書き換えられた非業の運命の成り立ちを看破。

本来の無難な運命へと戻すソフトウェア面での適正化。

マルウェア看破と削除。

それがこの魔法の本質だ。


だがOS自体がオカシイ事もありえるし、ウィルス駆除ソフトのウィルス判定が本当に信用に足るかどうかも保証はない。

整合性の高い便利な適正化ツールなのかどうかは実際に使ってみて実感して確かめるしかないのかも知れない。


【魔法】スキルの起動で出て来る半透明タブレット自体がiPa◻︎に似ている。

不具合もネット事情で起こるそれが想定され得る。


人間が「この世」として認識している【世界】が物質を伴う仮想空間であり、デジタル化されたソースコードの書き換えで現象再現作用の方向が誰かの意図で変えられているのだとしても不思議はない。


世界各地にWiFi機器に該当する自然のナノマシンが配置されていて、元素レベルにまで物質に「振る舞い(化学反応)」の指示が出され、滅多なことでは書き換えられない刷り込みが完了しているなら、物質を伴うVRも実現可能だろう。


【魔法】スキルの半透明タブレットの起動後すぐの画面初期ページに表示されていた五つのアイコン。

「歯車マーク」

「ハートマーク」

「脳マーク」

「本マーク」

「杖マーク」


それらが意味するところは

歯車マーク…設定

ハートマーク…ヘルスケア管理

脳マーク…メンタルヘルスケア管理

本マーク…鑑定情報の保管庫

杖マーク…「使用可能魔法一覧」

となっている事が分かったが


脳マークのアプリケーションに関して

私は正直「使いこなしているとは言えない」状態のままだ。


メンタルヘルスケア管理は地球世界だとーー

霊感のある人間だけはそういった方面の自己管理をしていたが…

こんな感じの便利なデジタル仕様ではなく、全てがアナログ仕様だった。

慣れない…。


脳マークのアプリでは

「ストーカー」

「トラッカー」

などといった項目があり

「物理的にターゲットの行動・言動を観察する」のが「ストーカー」

「ターゲットの興味や関心の矛先を観察する」のが「トラッカー」

となっている。


アプリを開く度に

「××件のプロファイリングを阻止しました」

「××件のトラッカーを阻止しました」

と出てくるので


「精神世界は闇が深い…」

とジワジワ恐怖を感じそうになる。


(プロファイルとか言うと、刑事ドラマで使われる言葉のイメージが強くて「犯罪捜査に役立つ?」みたいな錯覚が起きそうになるけど…)


要はピグマリオン効果やゴーレム効果を生み出す「投影用シナリオ」といったところ。


釣り師が

「この辺に釣り糸を垂らしておけば魚が食い付いて釣り針に引っ掛かる筈」

という認識に従って魚を釣ろうと釣り糸を垂らす。

そういう行動の土壌にあるのもプロファイル。


人間の無意識や潜在意識は顕在意識では掌握しきれない所もあって…

「顕在意識の管理下から外れたもの」に

「外部から投影された偏見」が張り付けば

「投影されたイメージの通りに変えられてしまう」傾向がある。


「自分に降りかかるピグマリオン効果・ゴーレム効果」

を認識できない事には


「脳とネット端末の類似性」

「投影による言動誘導」

もまた実感的に認識する事もできないだろう。


因みに地球世界でのアナログによるメンタルヘルスケアだと…

「ゴーレム効果を持つ偏見投影やそれに基づく差別行動を短期的に個人にやられてもブロック・レジストは難しくない」

ので、自力でブロック・レジストする。


それには夢を見てる最中に「自分は夢を見ている」と自覚し、夢を自分の望み通りに変える、ような方向性の自立性護持のための我の強さが必要になる。


一方で

「ゴーレム効果を持つ偏見投影やそれに基づく差別行動を長期的に集団にやられ続けるとブロック・レジストしきれなくなる」

ので


大勢に長期間にわたり偏見を持たれ続けると

「自分自身で抱く自己像を自分自身へと反映できない」

(外部から振りかけられるゴーレム効果が有効化してしまい、偏見イメージ通りの人間にされてしまう)

事になる。


だがそういった外部圧力による自己改悪現象を実感的に体験しながら抵抗し続ける事で

「自己像顕現力が鍛えられる」

面もある。


(そういった現象を認識できない人達は「魔女に豚に変えられた人達」のように、自分の何かが鍛えられる事なくただ振り回されるだけなので、可能なら認識した方が良い)


私がこの世界でどんなに偏見を持たれて卑しめられてもローズマリー・ウィングフィールドの美貌を自分の身に顕現し続けられるのは、前世で散々差別されながら足掻いたお陰で鍛えられた自己像顕現力の高さによる所も大きい。


地球世界は大衆に対して

「精神論は無意味だ、と本気で信じろ」

と誘導している世界だったので…


あの世界では自己俯瞰で得られる観点を自己俯瞰できない人々へ理解させる事は難しかった。


ただ本当の意味で

「地球世界には魔法がなかった」

のではなく


「『地球世界には魔法がない』という設定を強化するために人々の投影魔法の力が使われていた」

というのが真実だった。


これを理解できない者は地球世界から異世界へ転生しても魔法を理解する事は出来ないだろう。


【物理法則の絶対化と安定】

それが科学の基礎には必要。


【物理法則の相対化と改竄】

それが魔法の基礎には必要。


そして物理法則の絶対化と相対化は

「投影魔法的作用で書き換え可能」。


その書き換えはアナログ仕様では

「知性ある生き物達による強固な思い込みの力」

によって引き起こされる。


私がこの世界で【魔法】スキルを使いこなせるのは

「【物理法則の相対化と改竄】を行う権利が私に与えられている」

という事実を理解しているからである…。



********************



身体検査フィジカルイグザミネーション

解呪ディスペル

は普通に野良猫でも実験ができた。


今度も実験のお世話になっている野良猫達。

実に有り難い。


その猫達だが

身体検査フィジカルイグザミネーション

では

「栄養失調」

「慢性的感染状態」

と診断が出た。


診断結果に鑑定をすると

「栄養の偏りによる栄養失調」

「主食である昆虫・小動物に付着する病原菌による慢性的感染状態」

と出た。


更に重複鑑定する事で

「衛生的に問題のない食事と感染症を治療する効果のあるハーブの摂取が必要」

と出た。


理想的な餌やハーブの名前が並んでいて…

愛猫家にとっても入手可能なものばかりだった。


解呪ディスペル

では

「強迫観念による過食症」

という不具合原因が出て

「強迫観念を引き起こしている記憶情報→削除しますか?」

と出た。


動物愛護精神を持たない私としても

(勝手に精神的不具合を治してしまって良いのだろうか?)

と疑問に思ってしまったが…


(この町の猫達には「(肉体の)病気を治してやった」恩がある)

と思い出したので


(今更、内面を多少弄っても問題はないだろう)

と納得する事にした。


強迫観念による過食症は冬眠前の野生動物には必要なものだろうが…

町中に棲んで、猫好きな人間からの施しをアテにして生きている野良猫には必ずしも必要なものではない気がするのだ。


餌を貪らずにはいられない強迫観念。


そういうものに憑かれた野良猫は

そういうものに憑かれてない野良猫と比べても可愛い気がない。


(まぁ、私自身の可愛い気のなさも「他人を疑い続けなければ安心できない人間不信」という強迫観念を抱えてる事に由来するだろうし…。悲しいのは私の場合は野良猫と立場が違う点か…)


(野生動物にとって「強迫観念による過食症」が冬を乗り切るのに必要な命綱であるように、私にとって「強迫観念による人間不信」も命綱なのだという…。それを手放しても生きていける程、この国が国民に対して優しい国なら良いのにね…)


私は

解呪ディスペル

「強迫観念による過食症」

を削除した野良猫の顔を確認する。


妙な緊張感が抜けていて不思議と先程よりも可愛いく見える。

強迫観念は緊張を維持する根源のようなものなのだろう。


(…可愛がられて幸せになれると良いよね…)

と祝福に似た想いを向けながら、頭を撫でようと手を伸ばすと…

珍しく逃げもせずに、そのまま撫でられてくれた。


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