表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/220

恋しい人

挿絵(By みてみん)


ハートリーにあるモーリス・ブラックウェルの屋敷までお邪魔して

「カレー作り」

に加えて

「ソース作り」

「野菜料理作り」

「カレーパン作り」

「カレーコロッケ作り」

を実演。


食事処で働く事になっている料理人達からアレコレと質問を受ける羽目になった。


香辛料の分量や比率は細かく数字で出さないと

「目分量だと毎回味が変わってしまいます」

と言われてしまい、わざわざ計りで計った。


「香辛料を使って美味しいものを作る」

のは難しくないが

「常に同じ味を作り提供する」

のは難しい。

それを実感させられた…。


今の季節が夏なので今日は夏野菜の料理を作ったが…

冬の根菜料理のレシピも書いておいた。

ウィングフィールド公爵家風の味付けだ。


東部では当たり前のハーブ使いが南部では当たり前ではないのかも知れず、地域ごとの味覚の違いは気になるが…

料理人達とモーリスには好評だった。


一方で、モーリスの護衛達は違う意見らしかったが…

「…美味しいんだけど。肉が食べたかった。…『カツカレー』だっけ?マリーちゃんが【千本槍】メンバーに作ってやったっていう伝説の究極カレー料理」

「マリーちゃんの料理は『ハンバーグ』が超美味いって聞いた。『ハンバーグ』が食べたい…」

とバリバリの肉派だという事が判った。


思わず

「どうして『カツカレー』や『ハンバーグ』を知ってるんですか…?貴方達は『シーフードカレー』しか知らない筈ですよね?」

と尋ねると、マーカスもハンフリーも揃ってモーリスの方を見た。


「…どういう事ですか?」

私がモーリスへ視線を移すと


モーリスは視線を泳がせて

「…一目惚れした、…恋しい人の事を知りたかったから?…とかじゃダメですか?」

と苦しい言い訳をした…。


挿絵(By みてみん)



********************



モーリスの依頼を終えーー

依頼達成票を持って冒険者ギルドへ行くと…

エントランスで知った顔を見かけた。


私は自分から他人に声を掛けることなど滅多にないのだが…

エアリーマスに居たテレンスとランドンがハートリーに居れば、流石に他人に滅多に声を掛けない私でも驚いて思わず声を掛けてしまう。


私がゆっくり近づいていって

「こんにちは。ハートリーに来てたんですね」

と声を掛ければ


テレンスも私に気付いて

「…ああ、チェスターとクラークがメンバーから抜けたんで、新メンバーと共に活動拠点をハートリーに移したんだ」

と答えてくれた。


「元気そうだな…」

ランドンのほうも声を掛けてきたので


「その節はどうも。お陰様で元気にしてます」

と頭を下げたところ


「俺達のほうはAランク昇格を目指してこっちに出てきたんだ。エアリーマスの冒険者ギルドだと冒険者をAランクに昇格させる権限が無いからな。

これまでは昇格に興味は無かったし、チェスターは外国へ出て幼馴染みを探すためにも港町から離れたくなかったようだったが。今回のことは良いキッカケになったと思ってる…」

とランドンがその後の事情を話してくれた。


しかし

(…「新メンバー」って…)

と首を傾げたくなる。


テレンスとランドンの側には顔だけ見知ってるBランク冒険者が立っている。


(ドウェイン・レイヴンズクロフト…)

ソロ冒険者だった男だ。


「………」

ドウェインが何も言わないので


「お互い顔は知ってるよな?」

とテレンスが私とドウェインの顔を交互に見た。


「………」

ドウェインは頷くが無言…。


私が

「レイヴンズクロフトさんですよね?」

と訊くと


「…ドウェインだ…」

と、やっと口を開いた。


「お前、ホント、人見知りだな…」

とランドンが苦笑しているので、ドウェインが無口なのは私に対して本当に人見知りしてるからなのかも知れなかった。


「よく知らない相手に自分の情報を与えたくないのは普通だ…」

ドウェインの物言いに


(それも道理かも知れない…)

と私も少し納得した。


可能な限り他人に自分の情報を与えたくない、という用心深さは

「世の中には普通の人間に紛れて、ネチネチ他人に嫌がらせしたり、陰湿に他人を陥れようとする者も居る」

という世知辛い真実を知っているがゆえのものである。


推測や憶測で物を言い、下衆の勘繰りで他人を貶める人種がいる。

そういった人種に色々情報が漏れると、陥れもそれだけ巧妙になる。

確信犯の外道ともなると積極的に標的の情報を仕入れようとする。


無自覚でウザ絡みしたり

無自覚で風評被害を作り出す人達と違い

確信犯は行動に無駄がない。


(もしかしたら、その手の輩にまとわり付かれた経験があるのかもね…)

と思うと、ドウェインの無愛想さにも同情を感じることができた。


「3人ともBランクでしたよね?それで今はAランク昇格を目指してるんですね?」

私が尋ねると3人とも首を縦に振って頷いた。


「マリーはまだGランクなのか?」


「いえ、今はEランクです。ランクはEまでは『手数料等でギルドを儲けさせた実績』次第で上がるらしいです。

指名依頼をこなしてると、その分ギルドを手数料で儲けさせてる事になるので、『より幅広い依頼を出したい』という依頼主側の意向を鑑みてギルド側の判断で早期にEランクまで上げれるんだそうです」


「やっぱり指名依頼入ってるんだな。家事支援か?」


「はい。家事支援が多いです。他にもチラホラ」


「そうか。ちゃんと稼げているのなら良かった。…お前があれからどうしてるのか実は少し気になっていたんだ」


「今はどこに住んでるんだ?」


「冒険者登録して1年以内の新人冒険者を対象とした寮があるという事だったので、現状そこに住んでますが、セキュリティーのシッカリした宿屋に移りたいと思ってます」


「宿屋へ移ったら連絡してくれ。そのうち一緒に飯でも食いに行こう」

ランドンが食事のお誘いをしてくれたので


「はい。都合が良い時にでも声を掛けてください。ちゃんと美味しい店を探しといてくださいね」

と誘いを了承した…。



******************



その後、薬材商ギルドからの指名依頼が「週一回」の固定で入った。

これも「1ヶ月間の契約で毎月更新」タイプの依頼。


(薬材商ギルドのギルマスは詐欺を疑ってたみたいだけど、疑いは晴れたって事なんだろうな)

と思った。


報酬金額を見ると

(これならセキュリティーのシッカリした宿屋に泊まる宿代は充分稼げる)

金額だった。


なので私はそそくさと事務室まで行って

「新人冒険者向け単身者寮を出たいのですが」

と告げ、寮を引き払う手続きをした。


宿屋に関する情報はモーリス達から仕入れたものなので、実は偏っているのだが…。

私はそうとも知らずにお勧め宿屋『輝く浅瀬亭』に向かいチェックインした…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ