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間話

挿絵(By みてみん)


屋敷内へ足を踏み入れたラッセル・サックウェルはーー


思わず目を丸くして

「…今日は例の子の【清掃】スキルと【調理】スキルの腕前を見るために指名依頼を出したんだが…。やはりスキル持ちの仕事は凄いものだな…。スキルの無い女中を雇うのがバカらしくなるくらい普段とは違うぞ…」

と開口一番感心した声を漏らした。


客として招いているのはハートリーに住む親族達。

全員サックウェル家の人間だ。


「だよな。以前来た時と余りにも違うんで家を間違えてるんじゃないかと一瞬思った」


「それは私も思いました。中だけ新築みたいに綺麗になってるので、異空間に迷い込んだのかと」


「海中ダンジョンにそういうのも有るらしいな。素晴らしい御殿で美女にもてなされるって話。それで帰って来ない冒険者が数十年後に若いままで帰ってくるって眉唾物のオチ付きで」


「家事系スキルも他のスキルと同様に熟練度次第で効果も劇的に変わります。普通の熟練度ではここまで綺麗にできませんて」


皆、マリーのスキル熟練度の高さに感心している。

今日はマリーという人材をどのように活用していくかをハートリーのサックウェル家の者達で話し合うために集まったのだ。


当人は何も知らずに台所に居るのだが、本格的な話し合いはマリーを帰した後で酒を交えて行う事になった。


皆が皆

「「「「一度は指名依頼したい」」」」

と言い張ったので、それは決定事項。


公爵城で働かせるべく先代公爵に打診するには

「礼儀も従順さも必要」

だろうから…


マリーの様子を信頼のおける執事や侍女に観察させなければ

「本当に大丈夫なのか?」

は確信が持てない。


マリーが【治癒】スキル持ちである事もサックウェル家では情報共有してるので

「薬材商ギルドでギルマスをしてるハーツホーン家にはどう話すか?」

をも検討したところ


「ハーツホーン家にも情報共有するかどうかはギデオン様の(先代公爵の)指示を仰いだ方が良いだろう」

という意見で一致した。


医術師ギルドも薬術師ギルドも、ギルマスはハートフィールド公爵家傘下の貴族家の者達ではない。


今では改易されて貴族ではなくなっている旧家の者達が知的特権階級として居座り続けて居るので、そこにマリーを投入する気は当然ない。



「そう言えば、そのローズマリー・ウィングフィールド嬢の顔を見てみたかったですね…」

と客の一人であるレヤード・サックウェルがポツリと呟いたところ


「だがわざわざ厨房から呼び立てて顔を出させると、こちらの表情から『今まさにお前の処遇について話し合おうとしている所だ』という意図を読み取られる。

ウチの派閥の庇護下に加わる旨はデリックとの話し合いで了承してくれてるらしいが、【治癒】スキル持ちは引く手数多だ。

余り横柄な所を見せると逃げられる可能性も高くなる。余計な威圧や搾取は控えて接するに限るんじゃないか?」

とレヴィン・サックウェルが正論を述べた。


「ーーというか、レヤードはまだ若いし新婚だし、マリーとは顔を合わせない方が良いだろうな。

流石は美男と名高いウィングフィールド公爵の娘だ。身体付きの貧弱さは長年の粗食生活のせいもあるだろうが、顔立ちは端正だし、変に『顔を見る事にこだわる』と新婚の細君にあらぬ疑いを掛けられるぞ。

マリーのスキルに関して他家から嫁いだ細君にまで情報共有して良いという許可が出てない以上、不自然な接触をすると面倒な事になる」

ラッセルが渋い顔でそう言うと


「えっ?それってローズマリー嬢が美少女って事ですよね?俺独身だから顔見に行っても別に良いんじゃないですか?決まった相手もいない婚活中だし」

とヤーノルド・サックウェルが身を乗り出し


サトクリフ・サックウェルは

「ウチは新婚じゃないが、嫁がやかましいのは同じだから顔は合わせないようにしよう…」

と溜息をはいた。


「婚活中なのはリーヴァイもだろ?まぁアイツのこれまでの好みとはかけ離れているようだし、アイツがローズマリー嬢に興味を持つとも思えんが」


「ーーどの道、マリーはシミオン様の側室候補だ。シミオン様が『不要だ』とおっしゃるまではサックウェル家の若者が出しゃばる余地はない」

ラッセルがヤーノルドを牽制するように釘を刺したが


「ええ、まぁ待ちますよ。ちゃんと。出しゃばる余地が出てくるまで」

ヤーノルドはどこ吹く風で満面の笑顔を浮かべた…。



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