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「活きる」覚悟

挿絵(By みてみん)


「『標的国の国内で優秀な人材を潰して標的国の牙を抜く』などといった陰湿な工作の存在を認識すらしてない状態なら、そうした工作の餌食にされながら、憎むべき敵の姿すら見えないんだからな。

実際に被害に遭った者達からすれば冗談じゃないと思うだろうな」


そう宣うギルマスの言葉を聞きながら


私は

(…地球世界の人類が詰んだ元凶には「陰湿な工作の存在自体を皆が認識できなくなる」という欺瞞状態への過剰適応がありそうだよな…)

と思った。


そんな私の思考にお構いなしにギルマスが更に言葉を紡ぐ。


「…『優秀な人材が自分自身の優秀さを発揮して正当な対価を得て社会貢献する』には、それこそ『それが可能となる社会がある』事が土壌に必要となる。

そういう土壌を陰湿な工作は壊していく。


生存競争は団体戦だという当たり前の認識すら曖昧にさせて、内ゲバばかり引き起こさせる。

標的国の人々が味方を敵だと認識し、敵を味方だと錯覚するように諜報工作で価値観誘導していく。


そして『諜報工作の作用を人々が認識しないように』人々の現実認識を弄り歪める二次的諜報工作までしていく。

そんな認識弄りの工作がやりたい放題にやられるようになると…本気で人々は敵と味方の区別ができなくなって、敵味方を識別するべき必要性すら麻痺する。


そうなってしまってから、その状態を抜け出すのは容易じゃない。

有色人種が白人優位の環境から抜け出せないのも、そういった状態が常態化して自覚すら出来ない事に原因がある。


諜報工作の存在への認識に明るい我々の方では『有色人種達のようにならずに済むように』背筋を伸ばし、間諜や工作を警戒するのが当たり前だ。

人間の能力というものは上面の個の能力だけでは測りきれないし、発揮する機会すらなく潰れるものも多い。


人々の全員を能力発揮して活きられる舞台上に上げてやる事はできない。

だからこそ健全な国は、『能力が芽吹く前に潰される』といった被虐環境が自国民にではなく移民や侵略者・売国奴などに降りかかるよう人為的に操作するし、そうあるべきだ。


…有色人種は我々と同じかそれ以上の能力を持ちながら決して我々を支配できず、それどころか我々に支配され、その状態から抜け出せない。

有色人種達の多くが『特殊軍事工作や諜報工作を認識・対処できる人材』の育成自体できてないし、そもそもそういった人材が必要である事も理解できない。

被支配状態から抜け出せない者達は魂からして素朴過ぎる。


そういった被支配層の在り方に過剰適応している素朴で無垢な者達は『愛すべき隣人』ではあるが、決して我々と同じ視野で同じレベルで物事を認識して語り合えるようにはならない。

一方で、お前さんは、違うだろ?そういった素朴で無垢で愛すべき騙されやすい祝福されるべき被支配層の人々とは。


なら、遅かれ早かれお前さんはいずこかの陣営に取り込まれる事になる。それが『今』『我々の陣営に』だとしても問題はない筈だ。


レアなスキルを持たされて、知性にも恵まれて生まれてきた時点で、素朴で無垢な人々との同化は難しい。

お前さんは覚悟を決めて、『社会を動かす歯車の一つ』として、権利と同時に責任を背負うべきなんだよ」


ギルマスのこうした発言を聞いていると

(この世界の人達は地球の人達と違って正気だ…)

と痛感する。


(地球世界では工作員の悪を人々は認識すらしようとせず、表向きの擬態に騙されて誤認・美化していた…)


何故気付かずにいられるのか

何故あの存在自体の醜悪さと罪を見て見ぬフリできるのか

不思議で仕方なかったし


(もしかして私の方が間違っているのか?)

と迷いそうになるくらいに

あの世界では悪を悪だと認識している者が少なかった…。


インターネットの普及時、SNSの普及時は、センシティブな内容を非表示にするような仕様ではなかったので…

JAPAN・JAPANESEで検索すればすぐに嫌日レイシズムの実態と嫌日レイシスト達の醜悪な精神性が言葉の暴力によって可視化された。


アレを目にしたせいで私は、外国人を無害な良い人間のように美化する勘違いができなくなった…。



「…そうですね。不思議とギルマスのおっしゃる言葉が理解できてしまうので、多分、ギルマスのおっしゃるように私は平凡に紛れて無難に生きようとしても無駄なのでしょうね」

私が苦笑すると


「国や民族を守る盾や剣である者達は『初めから生まれながらにそう在る』という訳じゃない。

肉体を持って生まれ、社会参入によって再び生まれ、更に社会運営を理解することで又生まれる。

三度生まれることで大きな責任と大きな権利との釣り合いに気が付く事になる。


移民や侵略者・売国奴らは『社会参入すらせずに社会運営に干渉しようとする』ような事をしている。いわば獅子身中の虫だ。

国家権力はそういった連中の生殺与奪権を握って、連中をこちらの都合で踊らせるような度量が必要となる。

そんな力が、絶対的に必要なんだよ。


それを理解できてないバカどもが権力の中枢にありながら敵を喜ばせるべく優秀な自国民を潰そうとする。

敵の思惑に対して対処するにも、敵に踊らされるバカに対して対処するにも、『敵の存在を認識すらできてない者達』では対処できない。


その点、お前さんは運が良いよ。サックウェル家は南部冒険者ギルドの掌握を任されてる分、アングラの事情に触れる事も多く、『敵の存在を認識すらできないバカ』にはなりようがないんだからな」

と言われた。


確かに運が良いのだろう。

(ーーというか、地球世界から逃げ出してこの世界に転生できた事自体が運が良かったのかも知れない…)

と思う。



あの世界は生きにくかった。

だから楽に息ができる世界へと送り出された。


(あの世界での「必要な量に満たなかった善意」が、そんな風に反映したのかも知れない…)



だからいつかきっとーー


絶望と怨念を根底から消去して

「愛だけが残る無」

へと還れるーー。


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