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ストーンバレット

挿絵(By みてみん)


安宿は部屋に鍵を付けられないし、私物の管理も自己責任なので金目の物を持ってると寝てる間に身包み剥がれる。


安宿は犯罪の温床になりやすいので、割高だと感じても宿は個室に鍵をかけられる所を選ばなければならない。


私の場合、旅の間もインビジブルで自分自身の姿を隠して身を守ってきたので、誰も通りかからない路地があれば、そこで野宿する事も可能ではあるが…

町中の地面は臭い…。


立ち小便や野糞をする人達が多いため、排泄物の汚れで道も路地も汚い。


(町中で野宿するくらいなら郊外で野宿した方がマシだよな…)

と地面を見詰めながら思った。


ともかく金がある間は個室に鍵の付く宿に泊まれる。

野宿で宿代をケチるのは金が稼げなくなった時にでも考える事にして、ゴロツキが少なく治安良さげな表通りの宿に入って宿泊代を尋ねた。


「銀貨一枚」

と言われて

(高いな…)

と思ったが

「二泊」

してみる事にした。


他にも宿屋はある。

個室鍵付きだけが宿に望む条件なので、それを満たす宿をハシゴして二泊づつしてみるのが良さそうだと思った。


案内された部屋に入ると真っ先にベッドをピュリフィケーションした。

(疲れた…)

と思いながら横になると、そのまま眠ってしまった…。


起きると翌朝になっていたので

「確か、宿代には夕食代も含まれてた筈だけど…」

と不審に思った事を尋ねたが


「自分で食堂に降りて来ないと食事は出せない」

と言われた。

どうやら食べ損ねたらしい。


(呼びにも来ないで一泊一食付きで銀貨一枚か…)


釈然としないものを感じるが、この町の宿屋のサービス基準ではこれが普通なのかも知れないので文句を言って良いのかも分からない。


(親切な宿屋なら、夕食を食べ損ねた客に朝食はサービスで出すとかしそうだけど…)

そういう歩み寄りもない…。

「相場を知らない」

という事は

「自分の交渉権に気付かない」

という事でもある。


(他を知らないんだから仕方ない、と思うべきなんだろうな)

と思う事にして、自分で【魔法】スキルで朝食を用意する事にした。


私が出したのは「ホスチア」だ。


以前、フェザーストンの教会で聖杯を拝借した際に出現したホスチアは亜空間収納で収納していて、「アトラクション」で複製するための原本として利用している。


旅の間も度々食べた。

旅の間の主食は「ヘルスケア管理」のアプリケーションを起動すれば出てくる「カロリーメイ⚪︎」もどきの栄養補助食品とサプリメントだったが。

ホスチアの栄養素がどんな成分になってるのかは謎ながら「案外美味しい」という理由で食べていた。


雑木林のテントの中にあった細かいオーツ麦もオートミールを作る貴重な食料だった。

これもやっぱり亜空間収納して原本として延々と利用した。


【千本槍】メンバー達と居た時には普通に食材を調理して食べていたが、自分1人だとやはり作るのが面倒くさい。


(しばらくはホスチア・カロリーメイ⚪︎・オートミールのローテーションに逆戻りだろうな…)


身支度を済ませてペットボトルのコーヒーを飲みながら今後の仕事の事を考えた。


食事はどうとでもなるので今度しばらくは食費をケチれる。

だが宿代は稼ぐ必要がある。

エアリーマスを出るための旅費も充分に貯めておきたい。


基本的に戦闘は石を投げる、杖で殴るなどなので、杖が折れる前に新調する事になるだろうが…何度も買う必要はない。

一度ちゃんとしたものを買ってから原本として亜空間収納。

「アトラクション」で複製して普段使いで使用。

壊れる前にまた新しく複製、という事を繰り返すなら、一度買えば延々と使える。


素材剥ぎ取り用にナイフが必要だが…

サバイバルナイフならバックオーダーで地球製の量産品を幾らでも出せる。


この世界の短剣なども店先でジックリ観察して記憶すればバックオーダーで複製できるが…

使ってる所を見られると「盗んだ」と言い掛かりを付けられかねない。

刃物も防具も「買う」か「地球製品をバックオーダーする」か二択になる。


簡易の防具となる革のベストは地球製品を使える。

シャツやズボンも革のブーツも革のグローブも同様だ。


(とりあえず、杖と防具を新品で買うとするか…)


今日やるべき事を決めて、宿の部屋を出た。


は、良いが…

商業倫理など存在しない生き馬の目を抜く勢いの世界ーー。


外国ではなく自国なので多少はマシなのか

「ボッタクリも常識の範囲内で収まってる」

のがせめてもの救いだが…

やはりツテもない一見の客だと値段を高く言われるようだった。


(まぁ、バロワンで買い物した時よりはマシだな…)

と諦めるしかない。


何せ、こちとら一度買えば延々複製品を作り出して使えるので

「買い物は一度だけ」

で済む。

何度もボッたくられて買い物させられている人達よりは余程恵まれている。


軽くて丈夫な杖。

金属製の胸当て。(心臓をカバーするタイプ)

革製の帽子。

革製の備品ポーチ


たったそれだけ買うのにもかなり持ち金が減ったが、早速宿の部屋に戻って複製。原本は亜空間収納庫へ収納。

胸当てに限っては複製品を原本として次からの複製を行う事にする。


「アトラクション」魔法でできる複製品は鏡写しの像がそのまま出てくるタイプの複製なので、最初の複製に使った原本をそのまま原本として使い続けるかどうかは「製品が左右対称シンメトリーかどうか」と関係するのだ。


保管原本の形を気にする必要はあるが、「アトラクション」魔法は万能である。


(備品ポーチが揃った事だし…)


次いで思ったことは

(投擲する投げ道具を小石からパチンコ玉に変えてみても良いかも知れない)

という事だった。


金属製の小さな丸い球。


完全な球体だと作れないだろうが

だいたい丸い程度の球体ならこの世界でも作れる筈。


「懇意にしてる鍛冶屋から作ってもらえる」

という事にして架空の鍛冶屋を存在してるように言い張れば

パチンコ玉は投擲用として使える気がする…。


思わず「バックオーダー」でパチンコ玉を出し、「アトラクション」で複製量産しまくった。

原本を亜空間収納して、複製品は備品ポーチに入れられるだけ入れる。


金属製な分、小石より威力が上がるんじゃないかと期待したい。


不意に

(…そう言えば、いつの間にか「石弾丸ストーンバレット」がグレーアウト状態から解放されてて使えるようになってた…)

と思い出した。


(…一度宿屋に戻ってきておいて、また出掛けるというのも億劫だけど…試したいよね)

という思いに負けて、郊外へとストーンバレットの実験へ向かう事にした。



**********************



ストーンバレットという魔法はファンタジー小説ではよく登場していた。


ファンタジー小説ではウィンドカッターやらウォーターランスやらの魔法もあったが…

風や水で攻撃するイメージは簡単には湧かない。


やはり私がイメージしやすいものが反映するからか、私の「使用可能魔法一覧」に登場する攻撃魔法は土魔法・火魔法・雷魔法だ。

(因みにゲームのローズマリーは火魔法を使っていた)


私は

「【投擲】スキルを持っている」

という事になってるので

「ストーンバレット」

は都合が良い。


ストーンバレットは使用魔力によって仕様が変化する。

「石を生成して弾丸のように飛ばす」

「使用者が持つ石を弾丸のように飛ばす」

といった仕様変化。


当然、石を生成する事から始める方が魔力を余計に使う。

打ち出す石を予め用意しておいた方が魔力消費を抑えて沢山攻撃できる。


(そもそも、石を生成する所から始めたら、それはもう露骨に魔法だ。「【投擲】スキルです」では通用しなくなる…)


「石の弾丸…。試してみたい。…小石でもパチンコ玉でも打ち出せるように練習しておくにこした事はないよね」

と自分を納得させて、町の門を出て郊外まで出てみる事にした。


取り憑かれたかのように

「郊外へ」

一刻も早く行きたい衝動に駆られて向かった。


そして早速

試してみる。


近距離、中距離はフォロー投擲で事足りるので、ストーンバレットを使うのは遠距離攻撃用。

フォロー魔法の補正作用のお陰で石の投擲は50〜60メートルくらいまで飛んでいる。


ストーンバレットではそれ以上飛んで欲しいところだ。


だが

「どこまで飛ばせるか?」

の実験には的が必要。

丈の高い草が茂る草むらが広がる辺りでは実験しにくい。


(岩場まで行って見るか…)

と思い、ダンジョンへ向かう途中にある岩場へと向かった。


岩と地面の隙間に穴があり、そういった所からウサギ型魔物やネズミ型魔物が飛び出してくる。


インビジブルで姿を消していてもウサギ型魔物は気配察知して、逃げるなり襲いかかってくるなりするので、一方的に攻撃する事が出来ない点が難点ではある。


ネズミ型魔物は若干、ウサギ型魔物よりも気配察知力は低い。

ただ、身体がウサギ型魔物よりも小さいので岩陰に隠れやすく発見が遅れる。


石弾丸ストーンバレット

には当然

命中率上昇インクリースドアキュラシイ

を併用するので見つければほぼ当たると考えて良い。


100メートル以上遠くに標的となる魔物を見つける事だけが難しいのだ。


ともかく近距離・中距離・遠距離に関わらず

「見つけ次第攻撃する」

つもりで魔法行使の用意。


(どこまで遠くに飛ばせるか…)

期待しながら魔物が現れるのを待ったところーー


それほど待たずに魔物がチラホラ姿を見せ出した。

ストーンバレットはパチンコ玉でも飛ばせて、それなりの威力になった。


まさに弾丸。

銃弾のように先が尖ってないものの、ズギューンッと勢いよく飛んだ金属の玉はネズミ型魔物の身体にポッカリ丸い穴が空けた。

困った点は

「跳弾がひどい」

という点か…。


「パチンコ玉を使ったストーンバレットは遠距離に敵がまとまって群れてる時にのみの使用」

に限定した方が安全だと判った。


(…装甲の厚い敵とかだと先の尖った弾を用意した方が良さそうだな…)

と思いながら、結果には満足した。


ーーのだが…

1匹仕留めると魔物の姿は急になりを潜めた。


(…こういう事ならある程度の数がウロついてる時に「同時に全部仕留める」べきだったか…)


ストーンバレットは使用魔力量に応じて同時攻撃できる数を増やせる。


「一つの弾を魔法で複製し、同時展開して各々の標的に向かって同時攻撃」

という仕様も設定選択画面に出るので、出来る事が判る。


威力が低い設定にすると弾は標的を貫通せずに標的の体内に留まる。

威力が高い設定にすると弾は標的を貫通して標的の背後まで貫く。


あと、最大飛距離はどんな弾を使うかによって異なるようだ。

石とパチンコ玉とで異なるし、石の形や重さでも異なる。

空気抵抗と重力の影響を若干受けているようだ。


それでも200メートルくらいまでは何を飛ばしても充分な攻撃力があるので、ストーンバレットの火力は優秀。


離れれば離れるほど攻撃力が落ちるのが残念だが。

そもそも考えてみれば、空気抵抗からも重力からも干渉を受けずに魔法の弾が進むなら、流れ弾が相当怖い事になる…。

なので空気抵抗も重力も有り難いと思う事にする。


唯一の難点は

「魔力の消費がフォロー魔法より大きい」

という点。


今後の戦闘スタイルについては

(…魔力消費率を考えるなら、フォロー魔法での小石の投擲が100メートルくらいまで届くように投擲距離を伸ばす訓練をして、100メートルから200メートルくらいの距離の敵にはパチンコ玉のストーンバレットを使った方が良さそうだ)

と結論が出た…。


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