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フェアトレードの有り難さ

挿絵(By みてみん)


ランドンの話では

「ギルドのような公的機関が堂々と不正を行う土地柄の場合、偽証する証人を予め用意していて『標的に難癖付けて財産没収し更に罪に問う』ような体勢が既に整ってる場合が多い」

という事らしい。


なので

「バロワンの不正正当化コネクションがどんな風に展開されてるかが分からない以上、何処に持っていけば難癖付けられずに正当な対価を支払ってもらえるのか俺にも分からない」

との事。


ただ…

「冒険者ギルドの職員は容姿からいってもマルセル人に間違いなさそうだった」

ので

「外国人を食い物にする性質の組織がバロワンで根を張っている」

可能性があるのだそうだ。


それはそれである意味では健全な在り方だろう。

友好国のホワイト人を食い物にして、敵国のバールス人には媚びるような敵味方の取り違えがないのならば…。


「んじゃ、ランドンさんは何処で換金したら良いと思う?こういうレア魔道具って…」

私が尋ねると


意外にもランドンは

「換金しようと思う必要はないんじゃないのか?」

と言い出した。


「チェスターさんは私を【海鳥の尾羽号】の船長さんに売りたがってるんですよね?私にまんまと売られろと?」


「いや、マリーの魔道具はマリーの身代わりになってもらうし、マリーが売られる事態は俺達が絶対阻止する。

…だから、つまり、マリーの魔道具は換金せずに、そのまま娼館の経営者との交渉に使う方が良いんじゃないかと思ったんだ」


「…それこそ、フェアな交渉が成立するようには思えないんですけど?」


「いや、経営者はバールス人だろ。当然、冒険者ギルドのマルセル人達と違ってバロワンはバールス人にとってアウェイだ。バールス人がバロワンで不正を押し通す体制を現状で布陣できてないなら、案外、異邦人の我々ホワイト人と公正な取り引きをする可能性が高い」


「そんなものですか?」


「そんなものです」


「でもそう言うのってバロワンのお役人達が『マルセル人が外国人をカモにする不正は見逃すけど、外国人が外国人をカモにする不正は摘発する』ような人達だった場合の話ですよね?

『外国人が外国人をカモにする不正は相手にするのも面倒くさいから放置する』ような人達だったら、やっぱり言い掛かり付けられて交渉材料にならなくなるんじゃない?」


「警備隊の連中を見る限りでは全員がマルセル人らしい容姿で外国人に対して排他的だ。

だが一応はホワイト王国は友好国だという建前に従っているようにも見える。そもそもマルセル王国はバールス王国から度々武力侵攻と略奪の抗争を仕掛けられている。

バールス人が何か問題を起こしたら、その隙を逃さず摘発するのがマトモなマルセル人の感性なんじゃないのか?」


「まぁ、マトモなマルセル人ならそうでしょうね…」


ランドンの話を要約すると

「警備隊がマトモなマルセル人で構成されてるなら、娼館経営者のバールス人もホワイト人相手に吹っ掛けた交渉はして来ない筈」

という事だ。


不正のない公正な取り引きという、たったそれだけの社会的行為ですら、実は得難いものなのだと言う…

そういう世知辛い事実を思い知らされる…。



********************



「冒険者ギルドと同じ手口で魔道具を取り上げようとしてくる事はないだろうから、すり替える必要も無いし、マリーは交渉には一緒に来ない方が良いだろう」

とランドンが言い出して、交渉にはランドンとテレンスが行く事になった。


そもそも娼館でチェスターの幼馴染みを引き当ててしまったのはテレンスだった。


【千本槍】メンバーは「ロベリア」という名前に反応してチェスターに報告するようにしている。


これまで出会った「ロベリア」は名前だけ同じ別人だったり、そもそも本名ではなかったりしてたのだが…

今回は本物の「ロベリア」だった。


チェスターは「ロベリア」に身請けする意志を示し

「待ってて欲しい」と言ってる最中らしい。


身請けに関する金銭事情はチェスターが一番気にするべき点だと思うのだが…

交渉はランドンとテレンスで受け持って進められた。


娼館側では魔道具を偽物扱いしたり盗品扱いするような駆け引きは一切行われなかった。


「変に因縁を付けると引っ込められるし、公的機関でもないし、警備隊が味方ではない」

と言う環境事情ゆえに

「欲しい物は欲しい」

と素直に意思表示して交渉した方が手っ取り早い。


そんな娼館側の事情のお陰で

「防具を売った金+腕輪型魔道具」

で無事にロベリアを身請けできる事になった。


チェスターは嬉々としてロベリアを宿屋まで連れて来たが…

化粧を落としたロベリアの顔色は悪い。


((((病気なんじゃないか?…))))

とチェスター以外の者達は思ったが口には出さなかった…。


(性病だったらチェスターも感染するだろうし…)

という不安があったので私は「取り寄せ(バックオーダー)」魔法を使う事にした。


(「取り寄せ(バックオーダー)」は手元に原本がなくても出せるのが本当に便利だよな…)

と思いながら、冒険者ギルドの診療室で手にした傷薬と鎮痛剤をバックオーダーした。


私が

傷治癒ヒール

浄化ピュリフィケーション

傷病回復リカバリー

状態異常回復キュア

解毒ディトクシフィケーション

を付与した傷薬と鎮痛剤だ。


「診療室のマードック先生が先日レアな薬材をたまたま手に入れて万能薬に近い効能のお薬を作ったんですよ。

トウニーさんの妹さんもそれで治って2人で故郷の村へ帰った訳ですが、私はトウニーさんを診療室へ連れて行った時にたまたま万能薬でトウニーさんが治る所を目撃してて、マードック先生に無理を言って、お薬を分けてもらってたんです」

と言い張って、治癒魔法を付与した薬をチェスターに渡してみる事にした。


ここで変な病気に感染されては

帰りの護衛の依頼を受けるどころか

乗船拒否されて帰れないとかなると困るからだ…。


チェスターはロベリアが病気である可能性や自分も感染してる可能性を全く考えていないのか

「?」

腑に落ちない表情で首を傾げたので


テレンスがハァァーッと背後で大きな溜息をはいて

「その女は病気だ。お前もうつってる可能性がある。乗船拒否されて港に置き去りにされたくなけりゃ、有り難くマリーが出してくれた薬を使っておけ」

と告げた…。


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