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【魔法】スキル

挿絵(By みてみん)


夜中に教会の聖堂に忍び込むのは難しくなかった。

人が住んでるわけでもないし、宝物庫にある金目のものは聖杯くらい。


聖杯カリス

魔術儀式における大窯とルーツを同じくする聖具。


伝説では

「城砦に秘蔵され、天使達が齎す不思議な力を秘めた聖餅ホスチアを生じさせるもの」

だとされる。


聖杯は呪文が唱えられる事でホスチアを生じさせる。

そのホスチアを食べる事で誰もが一生に一度だけ

「神からの授かりもの」

としてのスキルを授かれる。


職人などは職業に応じたスキルが熟練度に応じて生えてくるものらしいが…

「何の努力もなく得られるスキルはホスチアによる一生に一度のスキルだけだ」

と言われている。


ホスチアを食べさせることによるスキル獲得は各国で普及しているため、聖杯作りの技術も世界的に共有されている。


聖杯は魔道具の一種で、世界中の教会に備え付けられているのだ。

錬金術の心得がある者達であれば比較的簡単に作れる魔道具。

材料も貴重ではないため稀少品でもない。


聖杯から生じるホスチアで得られるスキルは1人につき1つだけだし、装飾品としての価値も低いので、わざわざ盗む者もいない。


私は

(前世の記憶にゲームの記憶が残ってて良かった…)

と、しみじみ思った…。


教会の祭祀は詩篇を詠唱し続けてから呪文を唱えるが、詩篇の詠唱は省略して呪文だけで魔道具を起動出来る。


要は

「埋め込まれている魔石エネルギーのon/off操作がキーワード方式になっている」

のである。


灯りを付けると誰か来るかも知れないので、真っ暗闇の聖堂の中、ソロリソロリと奥へと進む。

教会の宝物庫というのは「部屋」ではなく、押入れのような建て付け式の収納庫だ。

当然そこにも鍵が掛けられているが、ローズマリーの肉体のスペックは相当高いらしくかなり器用だ。


何事もなく宝物庫の鍵を解錠。

聖杯を無事取り出せた。


起動呪文

「フォルテース フォルトゥーナ アドユウァト」

を唱えるとーー


聖杯の魔石がエネルギーonとなり

聖杯内にホスチアが生じた。


スキル授与式では一つのホスチアを小さく千切って参加者全員に行き渡るように食べるので、1人分はほんの一口。


少量食べるだけでスキルを得られる。


ローズマリー・ウィングフィールドの場合はもらえるスキルが【魔法】だと分かっている。

ホスチアを食べて直ぐに

「スキルが得られたかどうか?」

の検証も直ぐにできる。


スキルにはアーツがもれなく付いてくるのだ。


【魔法】スキルには『鑑定』がアーツとして付いてくるので

自分で自分を鑑定して見れば

「【魔法】スキルを得られたかどうか」

が直ぐに判別出来る。


ホスチアを全部食べた方が確実にスキルを得られるだろうが…

貴重な食料だ。

一口でスキルが得られるのなら残りは大事に食べたい。


私はホスチアを一口大に千切って食べ、自分自身の手のひらを見詰めながら

「自分自身を『鑑定アプレイザル』」

と言ってみた。


ブゥゥゥンと蜂の羽音のような音がしたと思ったらーー


半透明のタブレットが浮かび

「ローズマリー:15歳:ユニークスキル【魔法】:エクストラスキル【病気耐性】【毒耐性】:コモンスキル【清掃】【調理】」

と表示された…。


半透明タブレットはそのまま表示されっぱなしになるのかと思いきや1分くらいで消えた。


とりあえず【魔法】スキルは無事にゲットできたようだ。


【魔法】スキルの使い方に関しては後でじっくり調べる必要がありそうだが、今自分がするべき事は聖杯を片付けて、誰にも見られずに聖堂から出て公爵邸の自室まで戻る事だ。


そうと決まれば迅速に行動するに限る。


聖杯を宝物庫に戻し、開錠した鍵を施錠。

聖堂の出入り口から外に出て素早く施錠。


夜の暗がりに紛れてソソクサと川辺へ向かい、川沿いを小走りで進んだ。

公爵邸に近い水場まで辿り着いた後は足音を忍ばせて公爵邸へ入った。


夜は番犬達が敷地内で放し飼いにされているので不審者は吠えられ噛み付かれるが、私は犬達と仲良しだ。

犬達は私が夜中に抜け出していても一度も吠えた事がない。


(…そう言えば、この前見つけたテント内の荷物に干し肉があったな…。出奔する晩にでも犬達にご馳走してやるのも悪くないかもね…)


愛嬌のある仔犬が私の足元まで来て尻尾を振っているので思わず絆されてしまう。


ともかく【魔法】スキルがどこまで出来るのか今夜から検証していきたい。

自室に戻ってベッドに腰掛けると早速【魔法】スキルの起動を試みた。


『鑑定』のようなアーツと違って「スキル自体の起動」が可能なのか不確かではあるが…ものは試しである。


多くの人間が【一部能力向上(微)】のスキルを授かるが、その場合、スキルは常態起動型スキルとなり一部能力向上の対象部分はスキルをゲットした直後からずっと起動しっぱなしになる。


スキルに付随する筈のアーツも(微)では上手く発動せず、冒険者などの戦闘職でも(微)向上のスキルだと強くなるのは難しいらしい。


「良いスキルを起動できる良い遺伝子を取り込む」という事を縁組に際して意図するような貴族や金持ちだと【一部能力向上】などのモブスキルでも(大)効果を得られる。


この世界は「遺伝子」というものに関して徹底して不平等なのである…。


(それにしてもスキルの起動って、ネット端末の起動とかと同じように考えて良いのかな?)

と疑問に思いつつ

「【魔法】スキル起動」

と小声で声に出して言ってみた。


ブゥゥゥンと蜂の羽音のような音が聞こえて

鑑定の時よりも大きめの半透明画面が浮かんだ。


鑑定の時の半透明タブレットがiPhon◻︎くらいのサイズだとするなら

スキル起動で出た半透明タブレットはiPa◻︎くらいのサイズか。


起動した画面表示もiPa◻︎のような感じでアイコンが並んでいる。

と言ってもアイコンの数は少ない。


歯車マークのアイコンが設定画面へ移るアプリケーションだろうと当たりを付けてタップすると案の定設定画面に出た。


(しかし…それにしても文字がこの世界の文字なんだな…。習った事ないのに読めるのが自分でも不思議なんだけど。『鑑定』とは別に『言語習得』のアーツでも付いてるのかな?)

と思い、表示されてる文字を見ていった所ーー


「スキルの起動」

「アーツの発動」

といった項目があった。


先ずは「スキルの起動」項目を見てみると

「常態起動」

「選択起動」

とがあった。


「常態起動」

には

省電力パワーセービング

待機状態スタンバイモード

があり


「選択起動」

には

「任意選択」

「適正化選択」

があった。


現在は

「任意選択」

が選択されているので一々声を出して指示しなければならない状態のようだ。


それを

「常態起動」

省電力パワーセービング

へと変更。


起動しっぱなしにする事で、どの程度エネルギーを消耗するのか、そもそもエネルギーがどうやって充填されるのか謎ではあるが…

要するに「魔力」に該当するものでスキルやアーツは使用されるのだと考えるなら休息・睡眠で充填される筈。


起きてる間は

省電力パワーセービング

寝てる時は

待機状態スタンバイモード

で良さそうだ。


それでバッテリー切れが起こるようなら、そもそもそんな選択肢が表示される訳がない。


魔法を使いたい時だけ画面右上に小さく表示されるバッテリー残量に気を付けつつ使うようにすれば、普通に起動しっぱなしでイケるのではないかと思った。


次は

「アーツの発動」

をタップする事で

「発動可能アーツ」

が表示された。


「鑑定」

「言語理解」

「亜空間収納」

があり


先ずは

「鑑定」

をタップすると

「常態発動」

「選択発動」

があった。


「常態発動」

「選択発動」

も下位の選択欄が生じない。


鑑定は発動しっぱなしになるか鑑定したい時に発動させるか、どちらかになるようだ。


(物を見る度に画面が出るのもウザいし、エネルギー消費が多くなりそうだから、これは当然「選択発動」で良いよね…)

と思い、「選択発動」が選択されてる現状のままにした。


「言語理解」

の場合はどうやら

「選択発動」

はグレーアウトしてて選択出来なくなっている。


しかし気になるのは

「言語習得」

ではなく

「言語理解」

である事だ。


(もしかしてとは思うけど、外国語も含めて人間の言葉なら聞く・読むは出来るけど、話す・書くは学習しないとダメってヤツなんじゃ…)


そこはかとなく不安を感じつつも次は

「亜空間収納」

を見る事にした。


コレはどうやら

「選択発動」

しかない。


そして

「任意選択」

「適正化選択」

とに分かれている。


双方似たようなものだと思うが

「適正化選択」

の良いところは

「アーツを使う」

と意図しなくても状況に応じてアーツが発動する点だ。


任意選択だと、いざ亜空間収納から武器を取り出そうと思っても間に合わない可能性が高い。


適正化選択だと、反射神経・反射速度の面に問題のある人間を補ってくれる。

チュートリアルAIによるサポートのようなものだ。


「これは当然、適正化選択でしょう」

と独り言を言いながら「適正化選択」をタップ。


選択の保存を済ませて、別の項目も詳しく見てみる事にした…。


【注意】

魔法名等、漢字につけてるルビは「ノリでつけてる」ものですので、カタカナ語として適切ではない事も少なからずあります。

ご了承ください。

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