初対面
ブラックウェル商会の護衛を引き受けた冒険者パーティーは我らが【風神の千本槍】の他は【微睡む一角獣】というパーティーだった。
【千本槍】はエアリーマスに拠点を置くBランクパーティーだが
【一角獣】はハートリーに拠点を置くCランクパーティー。
どうやら【一角獣】の正式メンバーは4人。
今はサブメンバーが2人加わって6人になってるらしい。
6人中、Cランクが4人、Eランクが2人、という事らしい。
サブメンバーの2人がEランク。
「やたら装備が立派なお坊ちゃんだったし、貴族がランク上げのために片手間で冒険者ごっこしてるって所だろうな」
とテレンスが【一角獣】のサブメンバーに関して肩をすくめながら説明してくれた。
私はポーターだし連携取って戦う云々という事態は想定されてないので顔合わせには呼ばれてもいない。
実際に商隊がエアリーマスへ向けて出発する日になるまで、道中を共にする人達の顔を知らなかった。
なので出発の日に【微睡む一角獣】の面々と顔を合わせる事になって
(…私は運が悪い…)
と痛感した…。
【一角獣】の「サブメンバーのお坊ちゃん」はハートリーでの短い滞在期間で顔を合わせた人物。
猫好きの不審者少年だった…。
「…あ、あの時の…」
と不審者少年が話しかけてこようとしたので
「どちら様ですか?初めまして、ですよね?」
と言って初対面のフリをした。
私からすれば不審な男に後を尾けられる事は日常茶飯事なので、覚えてないフリをしても充分通用する。
自分の後を尾けてくるストーカー予備軍のような男の顔を毎回確認して覚えようなどと思わないのだから。
【千本槍】メンバーの方にも
「買い物してたら変な人に尾けられる事がある。遊びに誘われる事がある」
という悩み相談はしていたので
((((どうせ町中で見かけて一目惚れして付け回したとか、そういう事なんだろう))))
と推測してくれたようだった。
【一角獣】のサブメンバーは2人とも15、16歳くらいの少年でEランク。
その年齢でEランクなら随分と優秀だ。
15歳登録時はGランクスタート。数ヶ月から1年間で二つもランクを上げた事になる。
優秀なパーティーにぶら下がって、手柄を譲られてランクアップするにしても「財力面で優秀」という事になるので、何かしらの優秀さがある事は間違いない。
【微睡む一角獣】メンバー達が私に対して
「全員初対面のようなので自己紹介しておく」
と言って自己紹介してくれたので
リーコック・ハーツホーン→Cランク。リーダー。剣士
ヨーク・ハーツホーン→Cランク。リーコックの弟。弓士。
モートン・ハートネット→Cランク。斥候。
オグデン・ハートネット→Cランク。モートンの再従兄弟。槍使い
リオン・ラヴクラフト→Eランク。剣士。
ブロック・ラヴクラフト→Eランク。剣士。
という事が分かった。
猫好き不審者少年はリオン・ラヴクラフト。
ブロックと同じ姓なので親戚かと思いきや…
ブロックはリオンを
「坊ちゃん」
呼びしている。従者か。
父にも母にも認知されていない私には姓はないので
「マリーです。Gランク冒険者。ポーターです」
と自己紹介したのだが
【一角獣】メンバーは皆
「「「「「「えっ?」」」」」」
と驚いて目を見開いた。
どうやらリオンと同じように
「金持ちの子女が金を払ってランク上げのために高ランクパーティーに寄生しているのだろう」
と考えていたらしい。
それなのに
「姓もない末端平民」
と判って驚いたようだ。
表情には出さないように気を付けていないのか…
私に対する視線には露骨に軽蔑が混じった。
チェスター達に対しても一気に視線の温度が下がった。
「女の子を寄生させて性的搾取してるのか」
とズケズケ訊いてくれた方が誤解も解けて良かったのだが…
【一角獣】メンバーは
「疑問に思った事をズケズケ訊く」
ようなタイプではなかったという事なのだろう。
ーー斯くして
護衛に雇われた冒険者パーティー同士の仲は最悪の状態で仕事が始まった…。
********************
聞こえないフリをされて、無視される、といったコミュニケーション断絶が時折みられる…。
「…なんかコミュニケーションが上手くいかない?感じがあるように見えるんですけど、大丈夫なんですか?」
基本的に他人に無関心な私ですら【一角獣】の面々の拒絶的な態度が気になって、チェスターに尋ねてみたところ
「…人間、誰とでも仲良くできる訳じゃない。マリーは気が合わない連中と同じ依頼を受ける仕事が初めてだから気になるんだろうが、案外、こういう事は度々ある」
との返事だった。
「…そうなんですね。自分に悪い所があって嫌われるのなら納得出来るんですが、勝手に偏見持たれて嫌われて、尚且つ嫌悪感を隠しもせずに露骨に出してくる人達と10日くらい一緒に居なきゃならないって、何気にストレスになりますね…」
私がボヤくと
ランドンが意外そうな顔をして
「…そうか。マリーでも嫌われればストレスになるんだな。そういうの気にしないタイプかと思ったぞ」
と宣うた。
「ええ〜っ。…そんなに図太くないですよ?」
「マリーは前だけ見て一生懸命だから婉曲的な表現は気付きにくいんだよな?」
私の否定にはテレンスが答えた。
その答えだと、私自身が気付いてないだけで、勝手に偏見持たれたりする事態は既に起きていたのだと言われているようなもの…。
私も流石に少しショックを受けつつ
「…気付いてなかっただけだったんですね…」
とガックリ肩を落とした。
ーーが
(知らぬが仏というなら知らないまま気付かないままでいたいものだ)
と思った。
こちらを嫌って無視する【一角獣】の連中に対しては存在自体を視界からも意識からも消しておくに限ると思った。
そんな私の心境も知らずーー
クラークが意味あり気に
「…本当に、人間て、自分がやりたい事は他の者もやりたい筈だって自己投影して他人を見立てる生き物だって事だよね。可愛い子を攫ってきて皆でシェアしたいとか、鬼畜な事を考える人達は、そういう現象を外部に見立てるって事なんだろうねぇ」
と言い
「それな」
とテレンスが頷いた。
チェスターもランドンもウンウンと頷いているが…
私にはよく意味が理解できなかった…。




