表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/220

盗賊団討伐

挿絵(By みてみん)


伸ばし放題の髪型から、前髪を目に掛かるか掛からないかくらいの長さに切って、少し印象が変わった。


「ローズマリーは死んだ」

という事にしてもらうからには、髪を切るくらい何でもない。


ただ【千本槍】のメンバー達からは

「えっ?髪、切ったか?」

「何かあったか?」

と驚かれたので


「…事情はお聞きになってたんですよね?…『ローズマリーは死んだ』って報告してもらうために服や髪が必要だったんですよ。血を付けて提出してくれるそうです」

と少し嫌味っぽく言ってやった。


「うん。似合ってる」

「前髪が短い方が若々しく見える」

「儚げそうな訳アリ感が薄れて明るくなった感じがする」

「可愛いよ」

と媚びるように褒めてくれたのは、彼らがとっくに私の身元を知ってて黙ってた事への罪悪感もあるのだろう…。


「肩の荷がおりました…」

と本音を漏らすと、苦笑が返ってきた…。



********************



盗賊団討伐期間中の携行食はーー

野菜の薄切りを干したもの、油で揚げたもの。

ドライフルーツを練り込んだクッキー。

豆の粉を練り込んだクッキー。

そういったものを作る事にして


取り寄せ(バックオーダー)

では噛んで食べれるチュアブルタイプのサプリメントを仕入れる。


5人分で24日分となると相当な量になる筈だが

引き寄せ(アトラクション)

で増やす分にはバックオーダー程は魔力消費しない。


5人分で6日分を味を変えてバリエーションを持たせて用意。

それを原本にして4倍に増やす事にした。


幸い、今の季節は春なので野菜も種類多く出回っている。


ドライフルーツの種類は少ないが、この世界にあると判ってるものに関しては地球からのバックオーダーで構わない。

港町は物流が盛んで、他の土地には無いものが入手できる。

この世界に存在しない物じゃない限り

「運良く入手できました」

で済む。


勿論、備長炭や携帯トイレもバックオーダー。


盗賊団討伐の依頼開始の日まで三日間、せっせと荷物の準備に追われた。


水分は台所に備え付けてある魔道具を取り外して持っていくのだそうだ。

何日も家を空けると空き巣狙いに入られるし、魔道具は高価なので持ち運べるサイズの魔道具は真っ先に狙われる。

持ち歩いても使ってる所を他人に見られると狙われるので、水を出す魔道具はクラークが管理する事になった。


よって私は飲み水の心配はしなくても良い。


ただ、食べ物などの他にも

(まぁ、多分、使わずに済むとは思うけど…)

と思いながら準備だけはしておいた。


地球からのバックオーダーで出した指輪やペンダントや腕輪などのアクセサリーに

浄化ピュリフィケーション

傷病回復リカバリー

状態異常回復キュア

の魔法を付与。


ローズマリーの母親は男爵家とは言え、一応貴族だったのだ。

アクセサリー型の魔道具を持っていたとしても不思議ではない。


「私を捨てて出ていく時に産着に縫い付けてくれていました」

「母の残してくれた唯一の財産です」

とか言い張りながら万が一の時は使おうと思ったのだ。


バックオーダーは他の魔法よりも魔力を多く消費するため、魔法熟練度も上がりやすいようで

回避アヴォイダンス

命中率上昇インクリースドアキュラシイ

もグレーアウト状態から解放されていたので

「依頼が終わって暇ができたら実験したい」

と思った。


ーーが実験する暇もなく実践で使う可能性もある。


盗賊団は魔物と違って知性がある…。

「ひょんなことから致命的危機に陥るかも知れない」

という事は覚悟しておかなければならない。


「盗賊団の偵察が入ってる可能性がある」

とかで、討伐依頼を受けたBランクパーティーは普段通りにダンジョンや魔物出没情報がある場所へ出掛けて魔物を間引きしている…。


そういう目眩しが必要なくらいには盗賊団は小賢しいし、冒険者ギルドの動向を監視している。


なので

「如何にも準備してます」

という様子を見せてはいけない。


盗賊団の標的にされている商隊ーーデイビス商会の行商部隊ーーが雇う護衛はDランク冒険者パーティー二つ。

専属護衛2人を含めると護衛は11人、というのが表向きだ。


実際には荷物の木箱に隠れて【狂戦士の蛇比礼】と【風神の千本槍】、ソロのBランク冒険者1人に、ギルド職員のセルデンにマードックも随行する。


【狂戦士の蛇比礼】はBランク4人、Cランク1人による5人組のBランクパーティー。

【風神の千本槍】は4人ともBランク。

ソロの冒険者も含めるとBランクが9人。

盗賊団の規模が案外小さいものなら、明らかにオーバーキルになる戦力だ。


盗賊団に関する情報は少ない。

一昔前までは水を出す魔道具なども普及しておらず、水無しでは生きられない事から、盗賊団が拠点を張るのは川の側と相場が決まっていた。


例外として

「【掘削】スキル持ちと【占杖】スキル持ちが居れば井戸を掘って川辺以外でも水を使えるようにする」

ような事もあったらしいが…そういう事例はごく僅かだった。


それが便利な魔道具の普及と共に、森や草丈の高い野原に潜む盗賊団のねじろや動きが極端に把握しづらくなったのだった。



********************



何処にあるとも知れぬ敵の目を欺くために

「そこまで気を使わなきゃならないのか…」

と驚き呆れる気持ちもあるのだが…


自分のせいで迎え打つ準備が出来てるのを悟られて敵襲が不発になったりしたら、どんなに図太い人間でも気まずさを感じる事だろう。


ただただ大人しくセルデンの指示に従って積荷の木箱に隠れて馬車の荷台に運ばれた。

食料は予めそれぞれに配っていても良かったのだが…


【風神の千本槍】メンバー達は

「有ったら有るだけ食べてしまうかも知れない」

と自分達の食料管理面での意志の弱さを告白した。


そうなると後半の食料が足りなくなるので私が管理。

毎日1日分を渡す事になった。


当然、私は【風神の千本槍】メンバー以外の者達の食料までは準備していない。

セルデンやマードックが物欲しげにジイッーと見てくるのが居心地悪い…。


余りにも物欲しげに見られ続けると食欲も無くなるので

「…どうぞ」

と差し出してしまって以降は余計に2人の視線の圧力は強くなった…。


食べ物問題はまだしも一番困るのはやはり排泄問題。

自分が入れられてきた木箱の中に排泄するのがルールだが、匂いや音が本当に気になる…。

私の場合は木箱の中で携帯トイレに排泄・排尿して、それらのゴミは亜空間収納して消している。

そのうち休日に独りで郊外に出掛けて焼却処分するつもりだ。


だが他の者達はそうはいかない…。

備長炭の消臭効果にも限度がある。


(やっぱり指輪に付与した浄化作用を使わせてもらおう…)

そう思い、作動させようとした所


「匂いがもう限界です。魔道具で消臭します」

とセルデンが言い出して魔道具を使った…。


「…そんな魔道具が有ったんですね…」

私が恨めしそうな目で

(もっと早くに使えよ…)

と訴えると


「魔石消費率が高くて、稼働させると非常に高く付くんです…」

とコスパの心配をされた…。


そんな調子で馬車に揺られながら6日経った日に


ついに

「「「「「盗賊だ!!!!」」」」」

と声が聞こえた。


「確認して来ます」

セルデンが荷台の出入り口から外を見ると確かに盗賊が攻撃を仕掛けてきていた。


矢が沢山飛んできて

「うぉっ!っ危ねぇ!」

と素がでたらしいセルデンが急いで荷台に戻って来た…。


「戦闘準備お願いします。矢が射掛けられてます。出る時には注意を」

とセルデンが言い終わる前に皆が姿勢を正して荷台から出る準備を終えていた。


「私も戦闘に参加した方が良いでしょうか?」

と私が訊くと


「…ポーターに戦闘させるのは気が引けますが、今見てきた限りでは敵の数が多い。不利になってから戦闘に引き摺り出されるより、初めから戦ってた方が敵の数を削げるでしょう。お願いします」

との事。


少しでも敵の数を減らすにはポーターだろうが何だろうが攻撃に参加しておくべきという考えも尤もなので、素直に従う。


私は馬車の上から弓を射ている弓士達と一緒に石を投擲する事にした。


万が一の事も考えて「回避アヴォイダンス」も「命中率上昇インクリースドアキュラシイ」もショートカットアイコンにしてスタート画面に出てるから、呪文を唱えずに使える。


(馬車の上は敵側の矢で狙われやすいから「回避アヴォイダンス」で何処まで矢を逸らせるか分からないけど、掛けておくべきでしょう!)


(「命中率上昇インクリースドアキュラシイ」も一度も使ってなかったけど、「後追い(フォロー)」と併せて使う。元々的中率補正が入ってたけど更に確実に当たるだろう)


迷いなく盗賊を殺そうと思うくらいに、馬車の上から見た盗賊の数は多かった。


右手に3個。

左手に2個。

それぞれに石を持って、届きそうな範囲の敵に向けて

命中率上昇インクリースドアキュラシイ

後追い(フォロー)

を併用して

投げる

投げる


すると見る見る間に敵が伏せっていった。

身体の何処かに穴が開いた盗賊達のうち即死してる者は少ないが…

痛みで動けなくなった所を矢で急所を狙われるのだから、投擲攻撃は相当に有効に働いた。


敵と味方が入り乱れて戦ってる近距離に投擲する勇気は流石にないので、投げた石が届く中距離が私の攻撃範囲だ。


「中距離の敵を慌てて仕留める必要は無さそうだ」

と判断した弓士達が長距離の敵を狙い出したので、徐々に敵から飛んでくる矢の数は減っていった。


回避アヴォイダンス」魔法が絶妙に作用してくれていて、風にでも流されているように敵が放つ矢だけ逸れてくれる。


(それにしても…盗賊って卑怯だな…。100人くらい居るんじゃないのか?こっちは表向きの護衛が11人。討伐隊の戦闘員が私をいれても11人。22人しか居ないのに…。よくも少人数に対して何倍もの数を当ててきたものだ。…多勢に無勢で虐殺でもするつもりだったのかな?クズ過ぎる…)


自分が死にたくないというのもあるが、盗賊を殺す事に全く罪悪感などを感じなかった…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ