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辻褄合わせ

挿絵(By みてみん)


とにかくーー

民間人のフリをしている他国の非正規兵に対しては

「軍人だと気付いてないフリをして皆殺しにする」

のが国際社会のアングラ戦のルールらしい。


(…こういう話はそもそもが聞いたのが間違いだろうな…)

と私はこの場に来てしまった事自体を後悔した…。



********************



明けて翌日ーー

私がエアリーマスにやって来てから1週間が経った。


私と模擬戦をしたトウニーが一週間後に診療室で会おうという話を覚えてるなら診療室を訪ねてくる頃合いだろう。


【風神の千本槍】の冒険者活動が丁度休みの日だったので、町で食材をアレコレ物色してから診療室へ向かった。


(トウニーさんはまだ来てないだろうから、マードック先生と盗賊団討伐の依頼に必要そうな物について訪ねておこう…)

と思ったのだ。


診療室のドアをノックして

「マリーです」

と声を掛けると


「どうぞ」

という声と共にドアが開いた。


トウニーと女性が一緒にいるのが見えた。

トウニーがドアを開けてくれたようだった。


「妹と田舎に帰る予定なんです。発つ前にマリーさんにお礼を言っておきたくて」

とトウニーは小声で言った。


「ジェナです。兄がお世話になりました」

と妹さんらしき女性が頭を下げた。


「ご病気だと伺ってましたが、お元気になられたんですね」

私がそう訊くと


「マードック先生のお薬のお陰です。どうしてこんなによく効いたのかお伺いしたところ、幻の素材を偶然手に入れられて試験的にお使いになったとか。

そんな貴重な素材を使ったものをいただいてしまって申し訳なく思っていたところです」

と答えてくれた。


どうやら既にマードックとトウニーとの間で辻褄合わせは済んでいる模様。


「マードック先生も薬師くすし冥利に尽きますね」

私がホッとしながら笑顔で言うと


「そういう事にしておきます」

とマードックが苦笑した。


「それはそうと、頂いていた薬が余ってるんですが、お返しするべきでしょうか?」


「いえ、それは持っていていただいて構いませんよ。故郷でもお使いください。餞別代わりとでも思ってください」


「「ありがとうございます」」

マードックを見るジェナの目が神を讃えるような尊敬の眼差しになった。


その後トウニーとジェナは

「これまでお世話になった方々への挨拶回りもありますから」

と言って帰っていった。


私が

「…先生、人助けって、社会に本当に必要なものだと思いませんか?」

とマードックに尋ねると


「そうですね」

とマードックは答えた。


「マリーさんが貴族に取られると、マリーさんのスキルの恩恵を庶民が得られなくなるのは残念な事です。

マリーさん自身の自由の確保も大事ですが、その恩恵を庶民が得られる状態を死守するのも大事だと痛感しました。今後も頑張ってくださいね」


そう宣うマードックの目には少し涙が光ってるように見えた…。



********************



その後

「討伐隊の食料に関してはセルデンさんに訊いてもらった方が良いと思います」

とマードックに言われて私はギルド職員のセルデンの元に行った。


セルデンの所には丁度冒険者が来ていて、冒険者はセルデンから手紙を受け取っていた。


(そう言えば、冒険者ギルド間で手紙のやり取りが出来るって話だったな…)

と思いながらセルデンの肩に停まってる鳩型魔物を見た。


セルデンのコモンスキルに【従魔術】がある。

コモンスキルはホスチアで得られるスキルではなく、当人の努力次第で後天的に得られるスキルなので、【従魔術】は後天的に習得できるのだという事が分かる。


この世界だと手紙というものは通常は行商隊や巡礼者などに預けるものだが、冒険者ギルドなどの大手ギルドでは魔鳩と呼ばれる魔物を従魔術で従えて手紙のやり取りに利用している。

冒険者も有料でそのサービスを受けられる。


手紙を渡してもらうのにも手紙を受け取るのにもお金が掛かる

「手数料二重取りサービス」

だが需要はある。


「返事を今書くから、ちょっと待ってくれ」

と言って冒険者が薄い小さな植物紙に文字を書き出した。


鳩に持たせる手紙となると大きなものや重いものは持たせられない。

薄い小さな植物紙は濡れると簡単に破れそうだが…

少しでも多くの文字を伝えたいなら、そうなるのだろう。


冒険者は可能な限り文字を小さく書いているようだ。

これ以上小さくすると文字を判別できなくなる。

小さくするのにも限界がある。


内容を盗み見てると思われるのも面倒なので近付かずにソッポを向いておく。

すると、しばらくしてセルデンが

「お待たせしました」

と言って寄ってきた。


「例の討伐依頼の時に持っていくべき荷物を教えていただきたくて来ました。主に食料に関して、火を使わず匂いも抑えたものなど制限があるなら知っておきたくて」

私がそう言うと


セルデンのほうは

「一応、ギルドの方でも火を使わず匂いも抑えた乾物食料を用意する事はできるんですが、味の面で不評なので誰も欲しがらないんです。

自分達で用意なさるにしても、火を使わず匂いも抑えたものを用意して頂かないといけないので、お見せしておきますね。是非参考になさってください」

との事。


「用意させますので応接室へどうぞ」

と言われて応接室へ案内された…。


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