間話
ドウェインから
「話が有る。部屋に来てくれ」
と呼ばれて…
テレンスとランドンは
「アイツ、急に話が有るとか言い出して一体何なんだよ」
「金貸せとか言うんじゃ無いだろうな」
と訝しく思いつつドウェインの部屋を訪れた…。
ノックして、すぐにドアが開けられ、テレンスとランドンが開口一番
「「金は貸さんぞ」」
とハモって言うと、ドウェインは思わず苦笑した…。
「…いやいや、金の話じゃないから、その点では安心しろ」
ドウェインが宥めるようにテレンス、ランドン両名の肩に手を置いて
「単刀直入に言う。さっきヤーノルド・サックウェルが俺を訪ねてきた」
と告げた。
告げられた2人は面食らって目が丸くなる。
「え?誰ソレ?」
「…サックウェルって言うならギルマスの親戚か?確かリーヴァイって奴もサックウェル姓だったと思うけど、ソイツの兄弟とか何かか?」
「ギルマスがサックウェル伯爵の弟だって事は知ってるな?サックウェル家は伯爵家だけじゃなく男爵家もあって、リーヴァイは伯爵とギルマスの従兄弟の子に当たるが、ヤーノルドの方は男爵家の三男だな。
親戚と言えば親戚だ。しかも子供頃からそれぞれの領地にではなくハートリーに住んでいる。
『親戚で幼馴染み』とか、『同じ派閥の家同士で幼馴染み』とか、そういう粘着に構成されてる人間関係が連中の間で既に出来上がってる訳だ。
んで、問題は俺達の婚約者達のことだが。あの女達もそういった『ハートリー育ちのハートフィールド公爵派の幼馴染みグループの一員』って事だな。
ヤーノルドもマレイン達の事をよく知ってるようだった。
…『貴族令嬢でもない金持ちのワガママ女が処女じゃない』のは仕方ないにしても、…まぁ相当な阿婆擦れだと薄々気付いてはいたが、今日はヤーノルドにハッキリ言われた…」
「…なんて?」
「…嫌な予感しかしない…」
「…『どうせ遅かれ早かれアンタらの耳にも入るからマレイン達の事は今のうちに話しておく』『トンデモナイ阿婆擦れで性病に罹った事も堕胎した事もあって、マトモに子供が産めるかどうかも分からないし、出来たとしてもそれが誰の胤なのかも分かったものじゃない』『アンタらは厄介な事故物件を押し付けられた訳だがな、実は今日、俺とマリーはアンタの婚約者のマレインが連れ込み宿からアンタ以外の男と出てきたのを見ている』『今後アンタが婚約者の不貞を理由に別れようとするなら、マレインはマリーが告げ口してアンタに愛想を尽かされたと思いマリーを逆恨みする可能性が高い』『なのでアンタが婚約を破棄したいなら、マリーが全く絡まない形で婚約者の不貞を知ったという形をとって欲しい。尚同じ事はアンタのお仲間のピアソンとウォーロックにも言える』『しばらくマリーとは接触せず、口の軽いレン・ブラックウェル辺りと付き合ってみて、言葉の端々から不審に感じて婚約者の不貞を疑い、調査してみたといった感じの筋書きを作って欲しい』とか何とか好き勝手言われた」
「…お前よく言われたこと覚えてるな」
「要約すると『事故物件の押し付けを断るならマリーを巻き込むな』って言ってるんだよな?」
ランドンが的確に要約するとドウェインが
「そうだ」
と頷いた。
「…なに?そのヤーノルドとかいう男。マリーの彼氏気取りとか、そういうのか?」
テレンスがムッとした表情で訊くと
「俺に訊くな」
とドウェインがテレンスの額にデコピンした…。




