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乙女ゲームの不条理

挿絵(By みてみん)


魔物を瞬殺していく事に既に迷いも罪悪感もない。


「人類と非人類との間には大きな溝がある」

と感じているから


人間以外の生き物を殺す時には

「人類至上主義」

的な観点で殺している。


人間を殺す時には

「正当防衛」

的な観点で殺している。



ならず者国民のフリをした外敵によるテロリズム。


放置できない問題だが、そういう危機に関して

「本気で全く認識できない」

ような人も多い。


…ダンジョン内に出没する強盗殺人者集団が

「(盗賊同様に)外国人や帰化人だらけの実質的侵略兵」

なのかどうかは分からない。


だけど

「自分達の悪行を死ぬまで後悔しないのみならず死んでも後悔しない」

ような人種なら…

強盗がホワイト人だったとしても殺せると思う。


ただ、殺した後で

「やっぱり改心して欲しい」

と冥福を祈るだろうとは思う。




一方でーー

こういった想いは、乙女ゲーム『聖華の花冠』のヒロインであるアンゼリカ・メイクピースとは全く真逆の性質だと言える。


アンゼリカというヒロインは本気で色々オカシイ。

永遠の少女…。


【恩寵】スキルを持つ幸運児。

恋愛脳の自称平和主義者。


「武器を手に持つから敵が攻撃してくるんです!」

「武装せずに対話による交渉を試みるべきです!」

「国民の平和を戦争で脅かすのはやめてください!」

「どうしても戦争するというのなら私が戦う相手は戦争をしたがる貴方達です!」

と宣う…。


ゲームのシナリオではアンゼリカは北部貴族。

「日本人女性が転生してアンゼリカとして生まれ変わった設定」

になっていた。

血族的にはホワイト人だった。


だが実際にアンゼリカのような女がいた場合には

「敵国人が成りすまししてるのでは?」

と疑いたくなると思う。


アンゼリカがちゃんと攻略対象と恋愛する事によって

アンゼリカはやっと

「ホワイト王国側の観点から物を見る」

事ができるようになる。


「戦わなければただ奪われるだけだから、戦わなければならない」

というシンプルな事実を理解できるようになる。


アンゼリカは

「私は日本という異世界の豊かで平和な国で何不自由なく生まれ育ったから、日本の平和をこの国でも再現したかったの」

と述懐する。


日本という国を

「豊かで平和な国」

だと言ったり

「何不自由なく生まれ育った」

とか、そんなセリフを目にした時点で…


前世の私は

「この作品、なんかオカシイ」

「このヒロイン、なんかオカシイ」

と思った覚えがある…。


婚約者のいる攻略対象を攻略する乙女ゲームは、謂わば略奪愛シミュレーション。


「シレッと略奪愛なんてできる人間はそういう世界観を持ってるんですよ」

と言いたくて制作者側が彼女をそういうキャラにしたのなら…


「そうなんですね」

と納得するしかないが


そういうキャラがレアスキルを持たされる事にはやっぱり

「不条理だ」

と感じた…。



********************



(ーー今はともかく魔物を狩りまくろう。強盗殺人者集団のような生き物に遭遇する確率は低い筈)


私は二階層でも魔物を瞬殺しまくった。


「ドロップ無しダンジョンは所在地や中の魔物次第では誰も潜りたがらないんだよな。でもここはマシな方だ。ホーンウルフやオークが食用になるんで自分達用の食料確保のために潜る冒険者もいるから内部飽和状態が起きる心配は少ない」


「そう言えば王都にあるドロップ無しダンジョンは食用可の魔物ばかり出るから常に人が絶えないんですよね?」


「通称『肉ダンジョン』だな。北部にも似たようなダンジョンが有って人気だ。作物が実りにくい気候だと安定的に肉を得られるダンジョンは大事な食糧庫だな。ドロップ無しダンジョンはスタンピードを起こさないってのが定説だし」


「植物型魔物とかの死骸が野菜代わりになったりとかはないんですか?」


「それは無いな。植物型魔物は主に毒のある植物が魔物化したものだ。毒から殺虫剤を作ったり薬を作ったりできるらしいから薬材商ギルドが特定の素材の採取を稀に依頼するくらいだ」


「虫型魔物が食用になったりとかは?」


「【鑑定】スキル持ちに鑑定して貰えば案外虫型魔物も食えるモノが多いらしいが、見た目がアレなんで誰も食わないんじゃないか?基本的に虫型魔物の多いダンジョンでは蜂型魔物の作るハチミツが主な採取対象だな」


「魔物の作ったハチミツですか…」


(美味しいのかな?)

と疑問に思うが、需要があるのなら不味くはないのだろう。


(それにしても…)

インビジブルしてダンジョンに潜る時より断然襲撃される確率が高い。


ジワジワと剥ぎ取った素材が私の素材入れのリュックを圧迫し出していた。


「…三階層まで行こうかと思ってたが、このままだと剥ぎ取った素材や魔石を持ちきれなくなるな…」

とリーヴァイが言い出し


「三階層は階段を降りてすぐの所で三階層の様子を見るだけにしよう」

という事になった。


(ギルマスと違ってリーヴァイ教官は私の荷物を持ってはくれないんだな…)

と今更思う。


「…そう言えば、三階層は景色が変わるとかだったですか?」


「そうだ。一階層・二階層は迷路型だし通路もそこまで広くないので魔物達の連携も『前後を取る』といった程度のものだが、フィールドタイプの階層だと四方八方を囲い込まれる危険もある。

敵の強さは変わらなくても急に難易度が上がるんだ」


確かに通路だと前後ろだけの警戒で済む。

フィールドタイプの空間と比較するなら楽だ。


「ボスは出てこないんですか?」


「ボスはマップの奥側の湖の向こう側を根城にしていて、そこから出て来ない」


「へぇ〜」


Cランク魔物。動き回らずに居てくれるのなら戦ってみたい気はする…。

だが、今は教官の指示に従うに限る。


「安い素材は剥ぎ取りせずに放置して良いですか?」

と訊いてみたところ


「値段よりは『強いか弱いか』の判断で強い魔物の素材は持って帰ったほうが良い。ダンジョンが魔物を生み出すのにも材料が必要だからな。

冒険者が強い魔物の素材を持ち帰る事でダンジョンはその材料をリサイクルできず一から生み出す手順を踏まなければならない。

その方がダンジョンの魔物再生力を削げるから間引き同様に有効なんだ」

と言われた。


それだと手放すべきは一階層で狩った魔物の素材という事になる。


(勿体ない…)

と思いながらもサクッと魔物を倒し、素材をテキパキ剥ぎ取り順調に進んだ。


そうしてようやく三階層へおりる階段の前まで辿り着いた…。




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