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ダンジョン利権

挿絵(By みてみん)


ダンジョン関連の資料は「アトラクション」×2でつつがなくコピーできた。


「借りた物は手を付けずに早目に返そう」

と思い、コピー品を読む事にする。


「今日は読書の日だ」

と思う事にして、黙々と読んでいく。


それで分かった事は…

「高ランクダンジョンは、この国では騎士団の所有地となっている」

という事実だった。


Sランクダンジョン、Aランクダンジョン、Bランクダンジョンが騎士団管轄下の高ランクダンジョン。


それは一見

「危険な魔物が出てくるダンジョンを騎士団が責任を持って管理してくれている」

ように見えるが…実際には騎士では高ランクダンジョンの魔物を間引きしきれない事が多い。


それこそ宝箱をドロップするダンジョンだとスタンピードを起こす可能性も高い。

ダンジョン内の魔物の間引きは滞らず行うべきなのだが…

騎士団の騎士達はその役目を果たせる程には強くない。


「各騎士団は高ランクダンジョンの所有権を冒険者ギルドに譲渡して、ダンジョン内の間引きを高ランク冒険者達に任せた方が良い」

という尤もな意見もあるが依然、高ランクダンジョンは騎士団の所有になっているので

「高ランク冒険者が任意で高ランクダンジョンに潜るのには、騎士団へお金を払わなければならない」

ような状態が続いている。


(南部騎士団が良心的なのは高ランクダンジョンの入場料が安いということ。おそらく西部は入場料を高く設定している。ゲーム内でスタンピードを起こしたのは西部のSランクダンジョンだった)


ダンジョン利権のせいで間引きが上手くいかなくてスタンピードが起きやすい状態が続いている。



ごうつくな地方領主だと

「川で魚を釣るのにも金を取る」

ようなことをしている所もあるが…


「利権悪用による非合理な徴収」

は何処にでも存在する。


「自然の資源を全て自分達のものだと言い張って、自然の資源を採取する際に採取料を徴収する」

ならば

「徴収率に応じて自然の脅威を管理しきれなかった時の責任と、生じた損害の補償義務が生じる」

ものだ。


なので真面目に責任を果たす気があれば公的機関は大衆に対して

「色々名目を付けて管理項目を増やして金を取る」

ような事をするべきではないのだが…


「いざ何か起きても、管理不行き届きの責任も損害補償の義務も放棄し、被害者を泣き寝入りさせる気満々」

な既得権益層は平気で管理詐欺をやりまくる。


「公金徴収の名目が脅威の管理なら、その名目通りに危機管理対策を取るべき」

なのだが…

そうした道理を理解できない既得権益層も多い。


そうした不正な搾取に対して誰も事実暴露も断罪もしない事で更に管理詐欺は慢性化・大規模化していく。


そういった

「搾取すれど管理義務は負わない」

ような詐欺を国や公的機関がシレッと当たり前のように行う事がある。



この場合の高ランクダンジョンの管理問題でもそういった詐欺的搾取がありそうだ。


詐欺的搾取が常態化している環境では

「その病んだ状態に依存して身を立てている者達も居て、数を増やし続ける」

傾向もあるので改善は容易ではない。


「名目を嘘にしない為にも必死で名目通りに危機管理する」

という方向で

「働ける人材を育てる」

必要があるのだが…


ただただ詐欺的搾取の図式にぶら下がる者達は、名目通りに働くべき必要性自体を理解できない事が多い。


(…成る程な…。「高ランクダンジョンの情報を騎士団が秘匿する」のは、「自分達よりも強い高ランク冒険者に高ランクダンジョンを攻略されると困るから」という事情があったのか…)

と、資料を読んで理解できた。


ギルマス自身高ランク冒険者の資格を持つので高ランクダンジョンに潜っているが、高ランクダンジョンで出る魔物やドロップ品やマップ情報に関しては公けにしないように指示されている。


どうやら冒険者ギルドの資料保管室にあるという資料は低ランクダンジョン(C、Dランクダンジョン)に関する情報のみのようだ。

因みに南部にはEランクダンジョンは無い。


(「Eランクじゃ資料室に入れない」と言われたからギルマスの個人所有の資料を読ませてもらう事にしたけど…今にして思うと、正解だった…)


先日の騎士団訓練は王都方面へ向かう街道から少し外れた場所にあるドロップ無しのAランクダンジョン【イングリス・ダンジョン】での対魔物戦。

想定よりも手強かったAランク魔物の大群に遭遇した結果だった。


この世界はRPGと違って

「魔物を倒せば経験値が入ってレベルアップする、などという仕様ではない」

ので、戦闘力の高低はスキルの良し悪しやスキル熟練度で決まる。


騎士団は階級が高くならなければ高給取りにはなれないし

階級アップには出自が(コネが)重要となる。

実力主義ではないのだ。


なので【2倍の加護】のような戦闘向きのスキル持ちの多くが高ランク冒険者を目指す。

その方が稼げるから。


「本当に強くなれる人達が冒険者稼業に流れて騎士団には入らない」

現状。

騎士団がSランク・Aランクのダンジョンを管理しようにも手に余る事になる。


ダンジョンから出るドロップ品には

「力、素早さ、スタミナなどをプラス補正する効果の魔道具」

が出たりする。


それこそ私が作った

浄化ピュリフィケーション」の指輪

傷病回復リカバリー」のペンダント

状態異常回復キュア」の腕輪

などといったアクセサリー型魔道具も出る。


(…ドロップ品を売れば相当な値段で買い取ってもらえるだろうし、これはかなり稼げるんじゃないのかな…)

と思う。


尚、騎士団員がレアアイテムをドロップしても、レアアイテムは騎士団所有となる。

(外様や平民は出世も困難)


そうしたルールによる

「旨みの無さ」

が騎士団の入団員数が絞られる原因となっているようだ。


魔物に関しては名称と攻撃パターンが書かれている。

図解入りとかではない。

図解入りの資料を作るには絵が得意な人が資料作成に関わらないと無理だ。


なので資料を見る限りでは、ダンジョン毎に遭遇する魔物の名前は分かるが、その姿までは分からない。

実際に戦って見ないと自分の攻撃が通用するかどうかも分からないのだが…


(「フォロー」投擲を使った攻撃は敵が群れている時にこそ真価を発揮する…)

ので、魔物が集団で出没するダンジョンは私に向いている。


ともかくDランクダンジョンの位置情報は分かったので、私は当面のやる事として

(先ずは「インビジブル」でダンジョンに忍び込んでみよう)

と決めたのだった…。


勿論、翌日の朝にはギルマスの自宅へ行って資料を返した。



********************



宝箱のドロップするダンジョンは西部・南部に多い。


ドロップするダンジョンとドロップしないダンジョンとでは半々といったところか…。

不思議と東部に近くなる程、ドロップしないダンジョンの比率が増える。

南部でもエアリーマス近辺のダンジョンはドロップしないCランクダンジョンが多かった。


ダンジョンのランクと冒険者のランクは本来なら比例している。

Dランクダンジョンで出没する魔物の1匹と冒険者1人が戦って、冒険者が勝てる程度の実力があればDランクだと認められる、という基準だ。


勿論、魔物は群れて行動する事が多い。

Dランク魔物の群れにDランク冒険者1人では分が悪い。

なので冒険者はパーティーを組んで魔物と対峙する。


ダンジョンで生き残れないとみて、ダンジョンから出て自然界へと棲処を変えた魔物の多くがEランク以下だ。

Eランク魔物、Fランク魔物、Gランク魔物が郊外で主に見られる魔物達。


私の「フォロー」投擲は初めの頃より威力を増していて、既に低ランク魔物なら複数同時瞬殺できる。


エアリーマス近辺のCランクダンジョンの魔物だと私の攻撃では死なない個体もチラホラあったが…

当時は私が攻撃する機会自体が少なかったので「何匹中何匹を瞬殺できるか?」という統計を出せる程ではない。


だがその頃よりも強くなっているのだからDランクダンジョンの魔物相手なら独りでも充分に闘える見込みがある。


早速、Dランクの【リンドグレーン・ダンジョン】へ向かう事にしたが…

徒歩だと5、6時間掛かる。

なので「1日目、行く」「2日目、潜る」「3日目、帰る」というつもりで向かった。


とりあえず、ダンジョンまで到着したら、近くに物置小屋を出して野宿。

(翌日は朝から夕方まで頑張ってダンジョン内を探索して魔物を倒しまくろう…)


宝箱をドロップする確率の低いダンジョンとあったが、一応出るには出るらしい。

(楽しみだ…)

と私は思わずニンマリと笑った…。




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