75話 行動開始
最強と最強の共闘が行われる。
それに対して、仮面の男は闘技場内への無差別攻撃を続ける。
「防いでも防いでもきりがないな。」
「オルガンさん、あの中心にある巨大な魔力の塊、何か嫌な予感がしませんか?」
ユシアの言う通り、闘技場の中心部分の上空には巨大な魔力の塊があった。
そして、それはゆっくりと闘技場に向かって落ち始めていた。
「なるほどな。魔力のエネルギーの塊を爆発させるつもりか。」
「っ!なんてことを・・・!」
「まぁ、ここは任せてくれ。少しはいいところを見せたい。」
オルガンは闘技場の中心部分に立つと、勢いよく地面を蹴り、魔力の塊に突っ込んでいく。
「響音流九の太刀『くるみ割り人形』」
魔力の塊が上空で割れ、消滅する。
「どうやったら爆発させないで消滅させられるんですか・・・」
「魔法も少し刀に乗せたからな、うまく調節すればあの魔力を自分のものにすることも可能だ。最も、魔力を受け入れたとたんに体が爆発するだろうがな。」
「敵対行為・・・殲滅対象か。」
「さて、どうする勇者、あいつは私たちを殲滅対象とみなしたようだが。」
「なら、倒すだけですよ。」
「後れを取るなよ。」
「それはこちらのセリフです!」
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「カレン様、大丈夫ですか!」
「フランソル・・・助けに来るのが遅すぎないかなぁ・・・」
「よかった。無事ですね。」
「あの程度じゃね・・・とにかく、魔王として命令しなきゃね、この出血量はまずい・・・闘技場から全員を避難させなさい。ユシアさんとオルガンさんも例外ではないわ。」
「出血量と何の関係が・・・っ!まさか!」
「早くしなさい、時間はもうほとんど残ってない。来賓は避難というより、即刻追い出しなさい。面倒なことになる前に、早く!」
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避難指示が出た。
指示に従って速やかに来賓から優先的に避難が行われる。
この乱入騒ぎである。観客を巻き込むわけにはいかないのだろう。
だが、不思議なのは、フランソルが念話を使ってユシアとオルガンにも避難を促していた点である。
この状況、被害を減らすためにも、二人は敵と戦っていた方がいい。少なくとも、引継ぎが来るまでは。
と、そんなことを考えている間に、俺たちの避難も開始された。
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「・・・血?」
「どうかしましたか。エルミナ様。」
「エアセト、あなたは町に残って引き続き情報収集を行って。」
「えーと、エルミナ様。何かするなら内容を伝えてくれると嬉しいのですが・・・」
「想定外によって未来が変わった。それだけ。私は闘技場に行くから、あなたは・・・そうね、闘技場から人が出てくると思うからその人たちに事情を聞いて。」
「闘技場に言って何するつもりです!?あの場所には各国の重鎮たちがいます!その場に行くのはさすがに危険なのでは・・・」
「いや、重鎮はすでにいないだろうね。あれだけカレンが出血してるんだ。非常事態であることは間違いない。じゃ、行くから。」
「あ、ちょっと待ってくださいよ!・・・まったく、いつもこんな感じじゃないですか。」
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「避難要請?私たちにか?だとしたら拒否する。この状況を放置して避難などできない。」
「オルガンさんと同じくです。こんな時に逃げ出すなんてことできるはずがありません。」
オルガンとユシアがフランソルの避難要請に対して激しい拒否を行っている。
(困りましたね・・・ここで逃げていただかないと、また問題に発展してしまう。どの道避難を要請したからには何か裏があると思われるのも時間の問題。仕方ない。ここは私が少しばかり本気を出すとしますか。)
「問題ありません。この場は私が引き受けます。」
「無理だ。フランソル。君の本体の実力は知らないが、少なくともその人形の姿では話にならない。」
「そうね、引き受けてくれるのはうれしいけれども、この状況は・・・」
「たしかに、この体だとあいつの攻撃をよけるどころか一方的につぶされるだけ。ただし、その本体とやらならどうかなって話ですよ。」
「まさか、姿を現すつもりなんですか?」
「本気か?フランソル、君は今までどのような外交においても私が確認できる限りは真の姿をさらしたことはないはずだが?」
「本気ですよ。最も、あなたが言うところの真の姿とやらをむやみやたらに見せびらかすつもりはないですが。」
人形からゆっくりと黒いオーラのようなものが出てきて、人に近い形を形成していく。大きく人と違うところは、羽があることろ、だろうか。
「なるほど。だから人前で姿を現さなかったと。」
「これは・・・珍しい種族ですね。」
二人の目の前に現れたのは、悪魔であった。
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避難していて実感する、この闘技場の安全性がある。
基本的にどこからも避難でき、逆に、危険人物をどこにでも閉じ込めることを可能にしている。
なぜかというと、日本でいう防火シャッターなみ、いや、それ以上に即時起動可能な通常起動していない結界が張り巡らされているためである。
そして、避難誘導をしている係の者が壁を触ると道が出現する。この闘技場は城下町のありとあらゆるところにつながっているようで、どこに避難することもできるらしい。
が、避難の最中に目に移ったのはその結界を簡単に抜けて見せ、他の者たちと違い、闘技場の中心部分へと向かって行く者の存在である。そして、その存在はほかの誰にも認知されていなかった。その存在を、自分は知っていた。名前は・・・
「アト・・・?」
「快成、どうした?」
「トメイ、お前は避難していろ、用事を思い出した。」
「用事があるわけないでしょ。何かあるなら私も行く!」
「えぇ・・・危険だぞ。やめておけ。」
「やだ。」
「よし、分かった。何か起きても責任は取れないからな。」
「やったー!」
こうして俺はアトを追いかけ始めた。
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皆、生きるために戦っている。
自分達も例外ではない。
これは戦争だ。弱者による強者への宣戦布告だ。
魔王も、勇者も、冒険者も、転生者も、
全て等しく、
殺す




