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72話 勇者無双-②

さて、いよいよ大会開会式だが、大会会場の闘技場はものすごく広かった。具体的に何人収容できる闘技場なのかは知らないが、ものすごい広い円形状の建物だった。

見た目的にはローマのコロッセオ、というかそのまんまである。


というわけで、開会式なので長ったらしい大会主催者(魔王カレン)等の話があったのだが、知らん。そんな魔国の情勢とかこの世界のことについていろいろ話されても知らんから。少なくとも俺は。

「無事開催出来てよかった。これからも盛り上げていこう。」くらいのニュアンスしか頭の中に入らなかったから。


ちなみに大会スケジュール的には全63試合を3日間に分けて行うつもりらしい。

そして、各試合の合間に演目的なものがある。芸術もあれば、新しい国の発明品の紹介もあるらしいが、一番楽しみにされているのはゲストによる試合である。

ちなみに、俺は芸術で十分である。


「さて、第一試合の準備中ですので、その間に一つ目の演目を行いたいと思います!」


司会のアナウンスが響きわたるなか登場したのはユシアである。


「まさか、最初のゲストだったなんてな。」

「え?なになに?知り合い?」

「昨日町であった人。未来、いなかったもんね。」

「こいつ・・・」


「最初の演目は・・・世界最強とも謳われる勇者ユシアの剣技披露です!」


あ、それはもういいや、昨日見たもん。

あと、勇者だったのね。そりゃあゲストになるわけだよ。

え?なに?反応が薄い?いや、ねぇ、驚きで逆に反応が出ないっていうか、なんというか。

感想ねぇ・・・剣技とか初めて見たから知らないけど、たぶん、すごい。うん、すごいと思うよ。知らんけど。


と、いった感じ見終わったつもりでいたのだが、面白いのはここからだった。


ユシアが退場すると同時に客席から数人がユシアめがけて飛び込んでいった。

殺し屋か馬鹿かなんかだろう。全力で殺しにかかっているように見える。

と、ここで気が付いた。最初に勇者を出させたのはもしかしたらこういう人を事前に探し出しておくためのものだったのではないかと。


だが、結果など見なくてもわかる。


ユシアは隙を見せるかのように脱力した雰囲気を出していたのだが、すぐに表情が切り替わり、敵を殲滅した。


客にはユシアの剣など、まったく見えなかっただろう。俺にもなにも見えていないのだから、仕方がない。


というわけで、第一試合開始前から少しの混乱はあったが、順調に試合は進んでいく・・・はずだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「なるほどね。面白い。」


同時刻、ツクリは画面越しに大会の様子を見ていた。


「それで?どうするつもりなんですか?」

「どうした、フランソル。お前の想定内だっただろ。勇者の力も、大会で暴れようとするやつらの人数も。」

「確かに、想定内でした。大会の進み具合は、」

「大会進行以外の点で問題があったと?」 

「えぇ、オルガンが覚醒者になったことが確認できました。これは想定外すぎる出来事と言えるでしょう。」

「オルガン・・・あぁ、あの冒険者か。」

「厳密には元冒険者です。現在は引退しているため、全盛期ほどの力は出せないと本人がおっしゃっていました。」

「・・・それで、覚醒の原因、時期は?」

「時期については、今回で間違いないでしょう。具体的には、この大会へのゲスト参加決定以降だと思われます。」

「なるほど、ということは原因は・・・」

「対戦相手の勇者ユシアについて彼なりに調べたことが原因でしょう。厳密には『勇者』について調べたことが原因と言えますね。」

「なるほど、確かに彼の立場ならばギルドにある情報ほぼすべてを利用することが可能だ。だが、その情報を理解できるかどうかはまた別の話で・・・」

「勇者とは何か一般的には昔話などでいうならば、魔王を討つものですが、実際は・・・」

「逆だな、勇者という一種の大災害を止めるために現れた救世主とでも言おうか。それが魔王だ。あくまでも昔の話で、ここ数年は勇者と魔王による戦いなんて起きていないが、それがどうした?」

「この事実にオルガンはたどり着いています。まぁ、ギルドの資料をたどれば、いつかたどり着くでしょう。問題はその後、オルガンが歴代の勇者についての情報にアクセスしたという点です。」

「歴代の勇者ねぇ・・・具体的には誰だ?」

「全員です。」


一瞬の沈黙、その後、すぐにツクリが会話を再開する。


「勇者全員か、覚醒者でさえ知らない情報だな。オルガンは能力なし、と公には公表されている。能力なしだと思っていたが、まさか世界の記録や記憶に干渉する能力だとかは言わないだろうな?」

「・・・そこまでは教えてくれませんでしたが、その可能性は大きいかと。ただし、オルガン曰くその能力は強力すぎるがゆえに自分自身で使うことはほぼないとのことです。今回、情報が集まったのは能力の副作用的効果のためらしいですから。」

「副作用で世界を知れるような能力か。似たような能力で前例がないかだけでも確認しておくとするか。」

「それと、もう一つ問題が、」

「まだあるのか・・・はぁ、言ってみろ。」


ツクリが面倒くさそうな表情を浮かべる。それに対してフランソルは真剣な表情である。


「大会が開催される闘技場周辺地域での不審者情報についてです。」

「また面倒な・・・面倒くさいから簡潔に要点だけまとめて言ってくれ。」

「不審者といっても、大会があるのでたくさんいるのですが・・・簡単に言ってしまえば、国際指名手配されている。私の同類、もしくはその配下が訪れている可能性が高いということです。私が見た限りは、配下である可能性が高いですが・・・」

「お前の同類なら複数いる。特徴は?」

「仮面をかぶっていました。」

「っ!」

「ただ、情報を見るに、本人である可能性は限りなく低いかと。」

「わかった。だが、警戒はしておけ。あれは覚醒者の中でも特に強力な存在だからな。」

「わかりました。幹部達には通達しておきますね。」

「・・・いや、その必要はない。この件については自分が対処するとしよう。」

「ですが・・・」

「お前らでは対処できないだろ。ここは自分が引き受ける。・・・っと、またしても問題が発生したようだな。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


それは、第8試合開始直前のことであった。

この試合の出場選手はもちろん二人、そのうちの一人が試合前に気絶してしまったとのことである。

最初はただの不戦勝かと思ったが、どう考えてもタイミングがおかしい。

また、第8試合開始直前から観客席からも体調不良者が多く出ており、医務室がパンクしてしまったという旨の放送が流れた。


「対戦相手が何か魔法でも使ったのかな?」

「それもあり得るけど・・・それだったら観客席にまで影響は出ないと思う。そうでしょ。ご主人様?」

「何そのよびかたぁ!」

「俺もやめろと言っているんだが、」

「ずるい・・・」

「ずるいじゃねぇだろ・・・とにかく、対戦相手が観客席にまで効果がある魔法をあからさまに使うっていうことはありえないだろう。今回は猛者も多いし、第一、来賓席のこのメンツだ。魔法を使ったらすぐにばれる。」

「そうだよねぇ・・・」

「能力か何かっていう可能性は?」

「自分で制御できないタイプなら、まぁ、ありえなくもないが、まぁ、しばらくは試合は休みだな。大会運営的にも問題だろ。」

「あ、でもなんか始まったよ。」


闘技場の中心部には二人の人物が立っていた。ユシアと、なんか雰囲気のあるおじいちゃんである。


「あ!あれ!ユシアさんだ!あと、もう一人いるのは・・・だれだろ?」

「雰囲気的に話に聞いていたオルガンだな。」

「二人の試合は最終日の決勝戦直前でやると聞いていたんだが・・・時間をつぶすために前に持ってこられたのかな?」


両者が剣と刀を構える。それと同時に、会場全体に異様なまでの圧迫感が押し寄せる。

人が気絶しないぎりぎりの圧迫感、そして、両者の刃がぶつかり合う時、ものすごい衝撃波が発生する。

これも観客席に被害が及ばないぎりぎりの威力である。

両者は観客のために加減をしながら、そのうえで戦っている。まさに、最高峰の技術どうしの戦いである。

隙を見せたら負ける。というか死ぬ。そういったハイレベルの戦いが繰り広げられていた。





「君が今の勇者か、あいさつ代わりに、君の技量を見せてもらおうか。」

「最低限の加減しかしません。死なないようにしてくださいね。」


オルガンの前にユシアが一気に距離を詰める。

そして、音速をはるかに超える速度で剣を振りかざす。

対してオルガンは刀を鞘から抜くことなく受け流す。


「では、次は私が・・・」

「させない。」


オルガンが刀を抜こうとするがそれをユシアが止めにかかる。

だが、さすがに刀を抜かないわけにもいかないため、オルガンは魔法によって異空間から刀を取り出す。


「さすがに目の前にある刀がすべてじゃないか。」

「もちろん、攻撃も目の前だけではない。」


ユシアに多重に魔法陣が展開されていた。もちろん。そのことに気が付かないユシアではなく。

その魔法攻撃を自身の魔法攻撃で相殺する。


そのまま、数分が経過し、両者は一進一退の攻防を見せていた。


「面白いですね。まさかご老体でそこまで出来るとは・・・!」

「まだまだ若いものには負けるわけにはいかないからな。それにしても、久々にここまでの強敵と戦えて楽しいな。若いころを思い出させてくれる。私も、そろそろ本気を出すか。」

「本当に面白い人ですね。まさか、手を抜いていたとでも?」

「その通りだ。最低限以上の加減をしていた。今、この時までは。」

「・・・あはっ、本当に、面白い人だ・・・もっと楽しませてくださいよ!」


ユシアの周囲の空気の重みが変わる。

ユシアの体が燃え、炎に包まれる。

黒い黒い、漆黒の炎に、包まれる。


「やはり、勇者の権能は・・・」


全ては、オルガンの想定内で物事が進む。いや、進んでいた。想定外だったのは、ユシアを包み込む炎、通称:世界の権威、これの大きさである。


「戦いは、楽しまなくちゃ損、そう、あなたも思うでしょ?」


ユシアによる攻撃がオルガンに迫る。単純な拳による攻撃。しかし、漆黒の炎によってすべての力が底上げされているユシアの攻撃をただでうけたら、いくら加減しているユシアの攻撃であっても死ぬ。

そのため、刀で受け止めようとするが、刀が折れた。そして、そのまま拳がオルガンの胸に刺さり、オルガンが闘技場の壁面まで吹き飛ばされる。


「ごほっごほっ・・・さすがは勇者だ。完敗だ。」

個体名:ユシア


攻撃:計測不能

防御:計測不能

速度:計測不能


HP:上限なし

MP:上限なし

SP:上限なし


状態

世界の権威


その他

世界の権威発動中につき、全ステータス効果上限解放、および、全ステータスUP

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