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閑話18 魔王の憂鬱

「その程度で音を上げるのか。このくらい大したことないだろ。」


ツクリは組織を追放されかけた挙句なぜか自分の直属の配下となったシュウヤと醜魔に対して訓練を行っていた。

理由はいくつかあるが、別に今は仕事もないので暇だから訓練してあげる時間があったということと、二人のことを単純に心配して、といったところである。


「あ・・・あの、あんまりやりすぎると二人の体がもたないと思うんだけどな・・・」

「そんなこと言われてもな。二人には一応組織の管理を任せてるんだ。この程度の実力じゃあ、下剋上を許してしまう。組織として成り立たない。

「たしかに・・・そうなのかもしれないけど・・・」

「あと、お前は戦闘担当じゃないけど、最低限の身を守るだけの力はつけておいた方がいいぞ。」

「う・・・そんなこと言われても・・・」


戦闘訓練の様子をトラザが見ている。一応、ツクリがやりすぎないように、カレンが心配して監視役としてよこしたのである。


「もう一度、もう一度お願いします。次は負けませんから。」

「俺からもお願いします。何度でも時間がある限り訓練は続けます。」

「いいよ。ほら、かかってきな。」


ツクリに対して二人掛かりで一気に攻撃を仕掛ける一見すれば完璧な連携であった。ツクリのいる方向に隙がなく、確実に攻撃を当てることができるはずだった。


「後方不注意だ。まぁ、前方にすら不注意があった前よりかはいいか。」


その場から動くことなく、魔法を発動させて二人に当てる。その威力は非常に強力であり、常人であったならまず死ぬような攻撃。そんな攻撃をあてられた二人は倒れ込み、立ち上がることも困難となる。


「ほら、さっさと立ち上がれ。あと3秒以内に立ち上がれ。」


「さすが、ツクリさんだ。俺達じゃ敵わないか。」

「でも、それでも、少しでもツクリさんくらいの強さに近づかないと・・・!」

「お、立ち上がった。うん。合格、今日の訓練はここまでだ。これ以上の戦闘続行は俺が許さないからな。お前ら死ぬから。」


今日の訓練を終了するといわれると同時に二人はまた地面に倒れ込む。


「気絶か・・・はぁ、おい、トラザ、俺の部屋まで運ぶから手伝え。」

「あ・・・私?う、うう・・・シュウヤちゃん重いんだけど・・・」

「それはお前が非力なだけだろ。」

「うぅ・・・」


ツクリの部屋・・・地下の一室に行くためには階段を下らなければならないため、ツクリは醜魔、トラザはシュウヤを負ぶって階段を下りていく。


「ねぇ・・・あの、聞いていいかな?」

「何を?」

「最近のカレン様、なんか様子がおかしいでしょ。・・・今までは・・・あんな仲間を危険にさらすようなことはしなかった。・・・それなのに・・・」

「この間の戦いで二人が危なかったことか?あれはたぶん、カレンなりの作戦か何かはわからないが、考えがあってのことだろ。」

「そうなんだけど・・・なにか、カレン様ば最近、焦ってるように見える。・・・なにか助けになれないかなっておもって。」

「助けに、か。無理だろうな。カレンの最近の異変については自分も気が付いているが、あれは、友を傷つけたくないという単純な思いからだろうな。それゆえに複雑なんだが、」

「友って、カレン様のお友達ならたくさんいますが・・・具体的には誰のことを?」

「表向きには対立関係にあるんだがな。魔王エルミナ、彼女とカレンは幼いころから本当に仲がいい。そのエルミナが今、何をしているか知っているな。」

「エルミナって、あの暴君の・・・魔王間の協定さえ無視するような人ですよ。・・・本当に仲がいいんですか?」

「あぁ、エルミナとて最初から暴君だったわけではない。それに、暴君であるのにも理由はある。その理由ゆえに仲が良かったんだが、先日、カレンから一つ相談を受けて、全てがわかった。」

「相談って?」

「エルミナが情報を提供してくれたらしい。カレンの家族がいない理由の、だ。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「今日は、私のせいで何人が死ぬんだろうな・・・」


魔王エルミナは自らの城の窓から見える国の夜景を見ながら、物憂げそうに独り言をつぶやく。

自由解放民国、通称エルミナ国エルミナの独裁、暴君っぷりの方が有名なため正式名称よりこの名で呼ばれることの方が多い。そんな国の魔王こそが、言わなくてもわかるだろうが、エルミナである。


作戦は順調に進んでいた。周りの国は取り込めるだけ取り込みつくした。圧倒的な武力で制圧し。何度も血の湖を作った。自らが行える限りの最大の恐怖政治によって、自分への反対勢力も相当減った。ここまで、順調すぎるくらいに、


そんな中、入手したのが魔王カレンについての情報だった。最初は共有すべきか悩んだのだが、隠していても仕方がないと思い、カレンに共有したのだが、それがすべての間違いであった。

カレンは少し暴走気味になり、それを制止する役割のツクリにも迷惑をかけてしまっているようである。


「後悔しても、遅いのかな。」


その時、自らの執務室のドアを叩く音がした。


「まだ寝てないんだ。いつも早寝早起きしっかり寝るべし。って言ってるのに・・・今開けるから待ってて。」


ドアノブに手をかける。


(いったん落ち着こう、私がこんなんじゃ、だめだもんね。)


ドアを開ける。


「エアセト、徹夜はしないでって言ってるでしょ。」

「そんなこと言われましても。公務をエルミナ様だけにさせるわけにはいきません。」

「いいのよ、これは私が決めたことだって言ったでしょ。」

「とは言われましても、皆心配してるんですよ。顔をどう見ても疲れているようにしか見えませんから。」

「そうかな?いや、あなたが言うならきっとそうなんだろうな。」

「ここ何日寝てないんですか?そして、この後も何日間寝ないで公務するつもりだったんですか。」

「あれ、ばれてたか。でも、いいんだよ。私は少しでも思い出を作りたいからね。寝ちゃったら公務を昼さらににやらなきゃいけなくなるから思い出作れないでしょ。」

「どういう意味ですか。思い出なんて、俺たちと一緒にずっと作り続けましょうよ。」

「そう・・・だよね。そうなんだよ。それが、よかったな。」

「エルミナ様?どうかしましたか?」

「いや、なんとも、ただ、やっぱり未来は変わらないんだなって思ってね。」

「?」


エアセトはエルミナが今、何を考えているのか理解できていないようだった。それを感じたエルミナは無理やり話題を変える。


「あ、そうだった、私に用があるんでしょ。何の用?」

「先月の反乱計画の摘発数です。まとめた資料ができたので、お渡ししたいと思って。」

「ありがとう、こんなことのために夜まで起きてたの?ちゃんと寝なきゃだめだよ。」

「次からは寝ますよ。」

「そのセリフ、今まで何度も聞かされた覚えがあるわね。」

「気のせいですよ。・・・あ、」

「どうしたの?」


エアセトが向いている方向をみようとエルミナが振り向く。すると、窓の外には城の外で武器を持った者たちが今にも城に攻め込もうとしているところだった。


「反乱?計画段階で見つけられなかったってことは酒酔いの人たちかな?酔った勢いでそのまま国家転覆とかとでも考えたんでしょうね。」

「そうみたいですね。数人、顔が赤く、ふらついていますから。事態を収めてきますから、少し待っていてください。騒がしくなるとは思いますが、できる限り速やかに終わらせます。」

「ありがとうね。本当は私が直接事態を収めてもいいのだけれども・・・」

「まさか、エルミナ様にそんなことをさせるわけがないでしょう。俺たち三人ならばこのくらい一瞬で片づけられますよ。」

「そう、じゃあ、お願いね。」


エアセトが執務室から出ていく。


「今日もやっぱり、私のせいで人が死ぬんだ・・・」


エルミナは机の上にある一つの資料へと手を伸ばす。その資料には今エルミナが実行しようと準備を進めている作戦の詳細が書かれており、敵のデータなども存在している。


「この中の、誰も死なないといいな。あわよくば・・・いや、それは望みすぎか。」


窓の外からエアセトらの様子を見ると、すでに反乱は静まったように思われる。


「思い出、たくさん作っておかないとなぁ・・・」

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