65話 絶対に、諦めないから。
この一瞬を、生き抜くための力を、捨て置いてきてしまったのは、自分だ。
後悔はしている。でも、だからと言って、諦めたことはない。なかったのに。
「俺の、負けか。」
魔物の数が、多すぎる。
1人で処理できる量ではない、それに、先ほどから、攻撃を受けるたびに、無駄に魂を消費しているように感じる。
それに、あの攻撃に気が付いたら、もう・・・
「先生・・・ごめん。あんたとの約束、守れなかった。」
バテンには。先生と呼ぶべき存在が二人いる。
1人は、いまだに許していない。もう一人は、自分の生きる意味でもある。そんな、生きる意味でもある先生との約束。
絶対に、諦めないという約束を。
「この状況は、打開できないな。打開できたとして、そのあとは、何が残る?」
あれを使えば、たぶん。何も残らなくなる。先生の作ったこの島でそんなことをしたくはない。
「いや、先生を舐めすぎか。先生が作った島が、壊れるわけがないか。」
バテンは起き上がる。まだ、諦める時ではないから。
「先生、信じますからね。あー、でもそうすると、あいつも信じちゃうことになるのか・・・まぁ、いいか、あいつの研究結果は常に、間違っていなかったから。」
1人ではできなくとも、仲間を信じればいい。
バテンは、届かないはずの念話をつなぐ。
もう二人、もう二人いればいい。
かつて、あの教師たちが、そうしたように。
一と、七が答えた。
世界が、割れる。
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逃げ続けるのも、そろそろ限界である。
そんなカオスの攻撃が激しさを増す中。一つ分かったことがある。対転生者用システムとは、魂に直接負荷をかけ、再構築する類のものである。という点である。
魂というもの、それだけに的を絞れたがために、何とか自然が解析しきったのである
これは、転生者の魂の再設計時に発生する。現象を利用したものであった。
一度再設計された魂は、崩れやすくなる。
例を挙げるとすると、一度、完璧に作られたものを再設計しようして、それを一度壊す必要性が出てくるとする。その過程において、その完璧に作られたものは、完璧ではなくなり、欠陥が生じる。生じないとすれば、完璧にそれを再設計できた場合だが、魂だとそれは難しく、限りなく不可能に近い。
そして、禁忌とは、一度魂を再設計されている存在であるらしい。そのため、禁忌と呼ばれる存在であるバテンとの相性は最悪である。
今、俺たちに攻撃が行われているのは、足止め、俺たちをバテンのもとに行かせないようにするのが目的である。と、自然が推測した。
「とはいえ、特攻効果が無くても強力な攻撃だからな。バテンを助けに行くのは難しい。」
「かといって、あいつを助けに行かないのも違うんだよな。」
「・・・もし、彼を助けることができるなら、もう一度だけ、ここは自分が受け持つ。」
「おい、それは無理だろ。さっきもやったが、なんの意味もなかっただろ。」
「さっきよりも、強力な力で対抗する。代償として、自分が復元可能になるかわからないが、さぁ、行け。」
「行けって言われても、まだバテンの位置もわかってな・・・」
吹き飛ばされた。ヒカリも、未来も、まとめてである。自然に痛みがないように蹴り飛ばされたのである。
「やるか、かかって来いよ。もうお前はカオス、世界均衡維持古代装置・原初式混沌でもなんでもない。ただの、世界の欠陥、バグだ。」
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世界が、割れる。
それだけで、周りにいた魔物たちは、空間ごと砕かれ、生命反応を失う。
「禁神武具八ノ六:命盗」
禁神武具、禁忌が所持する専用装備であり、強力な力を持つ武具である。種類は様々であるが、基本的には本人の得意とする武器の形をしたものである場合が多い。
バテンの場合は短剣、(本人は後述する使い方によりナイフでもアイスピックでもでもなんでもいいらしいが、)であり、基本的に相手に投げつけて戦う。
禁神武具は自らの意思で存在させたりさせなかったりできるため、相手に奪われる危険性がない。(本人曰く)だから投げる。
また、現在の状態では能力が半永久的に発動し続ける(能力がだだ洩れという表現をを少し格好よく言っているだけである。)ため、周りに他の生命体が存在する空間など与えない。(もちろん出力の調整は可能なので、仲間を傷つけることはない。)
今回の武具、命盗は十本で一セットであるため、基本的には余る。そのため、連続で投擲することを可能としている。
「プログラムのもとを破壊すればいいんだな。指令室はどこだ。まぁ、いいか、どこであろうと、この島の内部にあるということには変わりない。よけてくれよ・・・見つけた。あれか。これを壊せば!」
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蹴り飛ばされた後、急いでバテンを探しているのだが、先ほどから、空間が連続して断絶される。空間がゆがむという予備動作的なものがあるため、よけることは容易なのだが、頻度が高い。たぶん、バテンが行っているのだろうが、もう少し回数を減らせないのだろうか。
少しして、空間断絶がされなくなった。
なぜだろうかとか思っていたらバテンが目の前現れた。同時に、もう一つ、存在してはいけないと確信できるほどの、存在が現れた。理由はない、己という存在が、今までにないくらい、警戒している。そして、それは、バテンを貫いた。
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「あまり、こういうことを自分がしたくないっていうのは、お前も知っているだろ。」
カオスの攻撃が降り注ぐ中、自然は、前へ前へと進んでゆく。先ほどまでならば、致命傷となりえた カオスの攻撃のそのすべてを意に介さず。前へと進み続ける。
自然が、カオスに触れる。すると、カオスの周りに植物が育ち、カオスはだんだんとそれらに取り込まれていく。それと同時に、カオスに触れている自然も取り込まれていく。
「『自然への回帰』、しばらく、眠っていてもらう。」
やがて、その場には、小さな森が形成された。
そして同時に、本体の反応が消失した。
要するに、本体の活動が停止したのである。
もちろん。カオスと自然。両者等しく活動が停止したのであるが。
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指令室のメインサーバーを破壊した。これでカオス(のコア)、および、島のシステムは停止するはずだ。
破壊すると同時に、自身の強化状態を解除する。
「さすがに、体力を使うな。使用は何年ぶりだったかな?疲れたし、とっとと帰って寝るとするか。」
指令室の扉を開けようとする。が、
「開かない?メインサーバー破壊の衝撃で壊れたか?まぁ、空間断絶で破壊すればいいか。」
空間断絶で扉を切り裂こうとするが、能力は発生しなかった。
「あれ?疲れてるのか?いや、それでもこのくらい発動するはず・・・」
「君より上位の能力を僕が持っているらね。残念ながら、君の能力は、発動しない。そして、君の今の体力じゃ、その対物理の結界が展開された扉を破壊することなどできないよ。」
「誰だ。この部屋への入口は一つしかない。どうやって入った。」
「『誰?』と言われて簡単に答えられるわけではないけれども・・・そうだね。先日はナノが世話になった。」
「ナノ?それがどうし・・・あぁ、『お兄ちゃん』か。誰の指示でこんなことをやっている?」
「誰の指示ってわけでもないけど、そうだね。いうならば、アトの指示かな?」
「目的は?」
「君だよ。」
言い終わると同時に。音速をはるかに超える速度で拳がバテンに近づく。
吹き飛ばされ、快成達の前に飛ばされた。
「なんて力だよ。ふざけん・・・な・・・ぁ」
蛇型の魔物に胸を貫かれた。
索敵系の魔法で周囲を探すも、『お兄ちゃん』はすでにいない。
快成達の前で自分がやられるのは非常にまずい。自分がやられた場合、次のターゲットとなるのは・・・
「逃げろ、お前らの敵う相手じゃない・・・早く!」
自分なら、勝てるかもしれない。いや、こんな蛇ごとき、すぐに倒せる。だが、問題はほかの者たちを巻き込んでしまう可能性にある。
「逃げ切って、ほかの奴らに知らせろ。今回の事件の真犯人は・・・」
蛇もどきから放たれる連続攻撃。非常に邪魔である。
「いい加減にしろよ。てめえはここで諦めたくせに、今になって出てきやがって。俺はまだ。諦めてねぇんだよ!」
もう一度、強化状態に入る。
「真名解放」
その決意が、未来をを変えてくれるから。




