63話 物語の終幕は、始まりを意味するとして。
(で?作戦は?)
空から無数に降ってくる攻撃をよけ続けながら。念話で会話をする。
(作戦は簡単だ。大量のエネルギーに対してはそれを減らすか同じレベルのエネルギー量で対消滅させるかの二択しかない。少なくとも、今回の場合は、よって、今回の作戦の軸となるのは自分と未来だ。そして今回扱う攻撃は制御が難しい。よって、ヒカリにその制御を任したい。快成は・・・そうだな。後処理でもしといてくれ。終わった後は疲れ果ててたぶん誰も動けない。)
そんなに扱いが雑なことがあってよいのだろうか。
(あと、これからは自分は必要な人に必要最低限だけの念話をする。少しでも多くエネルギーを持っておきたいからな。)
こうなってしまうと、あとは成り行きを見守るしかない。
とはいえ、カオスから一番狙われているのは自分であるからして、俺がやられてしまうと次の攻撃ターゲットに誰が狙われるかなんてわかったものじゃない。
俺の仕事は、やられないことである。
「なんか、一番難しそうな気がしてきた・・・」
さて、それにしても上空から降ってくる攻撃がやむことはない。これはたぶん、二つあった作戦のうちのエネルギーを減らす、という行為自体が、もともとのエネルギー量が多すぎるがために不可能であることを指す。んだと思う。わかんないけど。
そして、確かに残っている自然を除いた三名の中でエネルギー量が一番大きそうなのは未来である。だって龍なんでしょ。なんか莫大なエネルギー量もってそうじゃん。知らんけど。
「いい加減あきらめて出てきてほしいんだけど、転生者の人。」
いや、いやだよ。だって死ぬじゃん。
(おい、快成、カオスに向かって突っ走りながら全力の一撃を正面から喰らわせろ。)
ふざけんな。死ぬぞ、そんなことしたら。
しかし、これも作戦の一環なのだろうおおよそ、俺を囮にする作戦だろうが、だからと言って最初からそのつもりだと相手もそれに気が付いてしまうため、俺は最初からカオスを倒すつもりで攻撃しなければならない。
「うん。しっかり死にそう。失敗しないといいけど。」
というわけで、一応・・・一応とか言ってたらダメだな。全力の一撃を叩き込む。
「『鏡月龍朧』」
「転生者の人、出てきてくれたんだ。じゃ、さようなら。」
俺が全力で攻撃しているというのにカオスの方は右腕を振っただけ。
たぶん、これに対して未来の攻撃が間に合わないと俺は死ぬと思われるが、
「喰らえ!『龍の鎮魂歌』」
背後からの奇襲、カオスも驚きの表情を浮かべている。
「なんだ、思ったより悪くないみたいだ。」
直後、鈍い音がして、俺が吹き飛ばされる。そして、未来の攻撃が完全に防がれた。
「な!今のが、龍の全力なんですけど!」
「やってくれるね。龍王女。さて、さっさと死ね。」
カオスの拳が変形し、機械的な内部構造が露呈し、鋭利な刃物が出てくる。今の未来は全力で攻撃を放ったばかりである。回避はおろか、受け身の体勢をとることすら困難である。
(二人ともよくやった。誘導作戦成功だ。)
と、この絶体絶命の状態での念話である。それと同時に、地面が光る。未来とカオスの間のわずかな隙間には土壁が出現し、攻撃を通さないようにする。
「これ、誰の魔法?カオスを拘束できる人はそこまでおおくないと思うけど?」
カオスの動きが止まる。空間に固定されて動けなくなっている。
「この魔法陣・・・設置式。最初からあったってこと?いや、ちがう。これは・・・」
「エネルギー暴走時の暴走抑制装置の一つだ。島にいくつか存在している。そして、お前のデータベースからは削除されている項目だ。」
「自然ですか、ここまで誘導してきたのは、だけど、この程度の拘束ならばすぐに解除できる。」
「おい、まさかだがこの先に起こる展開を計算できていないのか?それもそうか、自分の計算だとお前はこうなることを計算できない。一応、俺の方が上位の機体だからな。」
「無駄ね。カオスにはどんな攻撃をしてもいいけど、結界系はすべて張られたまま。魔法も物理も通さな・・・いや、まって、それは違くない?ねぇ、ちょっと待って。今の時代にはオーバーテクノロジー過ぎない?ねぇ、ちょっと待ってってば!」
自然は、自らの指を変形させてコンピュータ等の情報機器に周辺機器を接続するためあれみたいな形に変える。
「ハッキング開始っと。キルトめ、容量の多い改造をしやがって。こんな改造せずにカオスの計算能力をあげてやれよ。まったく、拳を変形させて内部構造が露呈してそこからハッキングされるなんて最悪のパターン、なんで考えないんだ。」
「負けた、自然なんかに負けた。カオス悔しい。」
なるほど、俺と未来の攻撃はカオスの攻撃を誘導する役割。そして、自然がハッキングを実行する。ヒカリは何をしているのかと思ったが、ハッキングのプログラムを書き込んでいるのはヒカリだった。
「後は、このえんたーきーってやつを押してっと。できたー!」
「あ、この世界でもEnterキーっていうんだ。それ。」
とにかく、このハッキングが成功すれば、カオスは止まるわけである。これで一安心だと、俺たちは胸をなでおろす。
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「頼む。間に合ってくれ・・・!」
バテンは焦っていた。この状況が非常に危険な状況に気が付いたからでもあるが、それ以上に、気が付いてはいけない真実に気が付いてしまったためである。
思えば、最初から不自然だった。ここまでの戦いにおいて、島を出現させる必要性はなかった。島を出現させるというのは非常に面倒くさい作業である。それなら、キルトが島を出現させる必要性はないカオスの暴走状態を生み出すだけで十分なのである。
ならばなぜ、島を起動させたのか。この島は、島の状態にせずとも、遺跡の状態のままでほぼすべての機能を利用することが可能である。
ただし、あくまでも『ほぼすべて』である。この島は世界の均衡を保つための島である。いいや、設備や装置といっても間違いではないだろう。
この島には、世界の均衡を保つためのありとあらゆる機能が備わっている。
ここで一つ、例を出すとしよう例えば一つの大陸が修繕不可能なレベルで均衡を崩したとしたらどうしようか、簡単である。その大陸を消せばよいだけである。そうすることによって、新たな均衡の崩れも発生するかもしれない。それなら、それも破壊してしまえばよい。そんな、最終手段さえもを持っているのが、この島である。
「念話も使えない・・・何かしらの妨害か?いや、妨害ならすでに・・・」
目の前には、ありとあらゆる魔物たちが存在していた。すべてが、こちらに敵対してくるように。まるで、最初からバテンに敵対することを定められているかのように動いてくる。もちろん、バテンの空間操作によって一瞬にして死へと向かっていき、バテンの足止めもできていない。バテンが妨害として認識しているのは転移ができなくなっていることである。確かに、魔法なら魔法で転移を防ぐことはできる。しかし、バテンの場合は能力である。能力の場合は、同種の能力か、能力操作、無効化系、または、相当強力な能力を持つ、のようなことでしか防げないのである。しかし、ここにそう都合よく同種の能力者、または、能力に関する能力者がいるとは思えない。いたとしても、例えば付和の能力、『能力操作』とバテンの『空間支配』とでは格や質が違う。バテンの『空間支配』の方が『相当強力な能力』として機能するため、空間操作の影響力を下げる、という点においてはバテンの抵抗力が働き、その能力はほとんど機能しない。(ただし、空間操作の影響力を上げるという点においてはバテンが抵抗しなければよいだけなので最大値で能力を発動できる。)
と、ここまで長く説明したが、バテンは最上位のレベルの能力者である。セブンと同じく、禁忌としての洗練された能力である。よって、バテンの能力に抵抗できるものはそう多くない。可能であるとしたら。かつて、バテンらの教師でもあった人物の一人も含まれる三教師、または、その存在と関係のあるものくらいである。
「ちっ、空間がめちゃくちゃになってやがる。前に進みにくい・・・」
バテンは、この島が三教師とかかわりがある存在であることは知っている。だからこそ、何かしら、自分たちに対して不利なシステムがある可能性は視野に入れている。例えば、カオスが使用する。『perfect chaos』これは、疑似能力とよばれるものであり。能力と同じような原理で作られ、能力と同じ結果をもたらし、他の能力に干渉することも可能であるが、原料、エネルギーに値するものが異なるものである。これは、全ての法則を書き換える(疑似)能力であり、書き換えられた後の結果は混沌のみ、という汎用性のないものであるが、全ての法則を書き換えることが可能であるがゆえに、バテンの空間支配の能力の法則までもを書き換えられてしまう。さすがに、バテンの能力が一瞬にして書き換えられてしまうことはないが、ゆっくりと書き換えられてしまう。そのため、同じ空間障壁で『perfect chaos』を受け続けることは困難なのである。
「だが、空間転移を完全に防ぐことは不可能なはずだ。転移先の空間は確かに混沌としてしまうかもしれないが、それでも、座標は存在し続けるはずであるから。しかも、今回に関していえば、能力の発動自体が制限されているように思われる。これは、やはり、俺より上位の能力に妨害されていると思う方が正しいか。」
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さて、ハッキング中なのだが、なんか空間上にパーセンテージが表された画面が現れた。なんというか、こう、異世界とは?と、思わされる。まぁきっと、そういう異世界もあるのだろう。
数値は90%をすでに超えており、あと20秒ほどでハッキングが完了しそうである。うん。ハッキングって言うとなんか悪いことしているみたいだな。システムの更新か。そうだ、そうやって表現しよう。そうするのが一番いい。
たぶん。油断してたんだと思う。いや、油断していた。この状態から、負けるわけがないと、思っていたから。
98%を数値が超えようとする。その瞬間であった、画面上が警告文で埋め尽くされた。そして、別のシステムの更新が始まった。今まで行ってきた更新を上書きして。
そして、その更新は、今までの数倍もの速さで行われる。
「おい、ヒカリ?なんか変な操作しなかったか?」
「してないしてない!なんでこんなことになってるの!?」
「自然、これはどういう状況だ?」
「今自分たちが行っていた更新がキャンセルされて上書きされて第三者からの更新が行われている。だが、カオスに干渉できるほどのシステムはそう多くないはず・・・」
と、話していると、カオスによって自然が押し出された。それによって接続機器がはずれる。
「さすがに、もう動けるようになったか。」
「早く、カオスから離れて、そして、戦える人を連れてきて。あと、感謝しなさい。自然もあと少しでシステム更新の餌食になってた。」
「カオス、お前自身がやばいっていうことは相当なんだな。その更新とやらの内容は。」
「現に、本体の制御が効かない。さっき自然を飛ばしたので精一杯だった。」
「逃げるぞ、俺たちでは本気のカオスには勝てない。」
「え?いまでのは本気じゃなかったっていうこと・・・?」
「厳密には今までのはリミッターがついていた状態だ。このシステム更新はおおよそ、そのリミッターを外し、暴走状態にさせるもの。」
「違う。いや、あってるんだけど、対転生者用のシステムが組み込まれてる。だから。早くにげ・・・」
『第三者によるシステムへの介入を確認。これより、排除を開始します。島民の皆様は避難シェルターへと直ちに避難してください。繰り返します・・・』
カオスがしゃべらなくなると同時に、均衡の島内に機械音声による放送が鳴り響いた。




