53話 対人魔共同前線-④
天井が崩落した。最初は何かしらの仕掛け・・・例えば自爆装置でも起動したのかと思ったが、違う。
空には龍が飛んでいた。黒き龍が、その空を支配ていた。
圧倒的なまでの、威圧感、そして、違和感。
「天井が崩落って・・・ここ、地下だろ。上には複数の建物があったはずなんだが。」
しかもこの空間、かなり広い、上に家の数軒は立っていたはずである。
「あの龍、違う、東でも西でも、龍人でもない・・・だとすると、何?」
龍には主にいくつかのの派閥が存在する。東側に住む龍と、西側に住む龍、人と生活を共にする龍、そして、龍人。ほかにあるとすれば、辺境の地に住む他との関係を断った龍もいるにはいるのだが、未来が感じ取ったのは、そのどれにも当てはまらない龍の気配。いや、たぶん、龍ですらない。自分たちでもわかる、龍とは、気配が、魔力の流れが、存在感が、違う。
龍の口元に、赤き炎が宿る。
「龍、助けに来てくれたんだ。」
「トラザが連れてきたのか。助かったな。」
赤き炎が、龍の口元でだんだんと青き炎へと変わってゆく。
「龍・・・あ、確か魔国の調査資料の中にそういう名前のやつがいたような・・・でも、人だったはずなんだけど。」
青き炎が、さらに黒き炎へと変わってゆく。
「私、能力発動したら蒸発しそうな気がしてきたんだけど。情徒、解析結果は?」
「今現在わかっていることは少ないが、あれは龍だが、龍ではない。あれは、能力によって生まれた龍だ。だから、龍王女である未来の力が、たぶんだが、働かない。」
「能力によって生まれた・・・?」
「要するに、自身の体を変化させるタイプの能力。スイアの水になれる能力と似てるか?」
「全っ然似てないわよ!」
黒き炎が、天井の穴からこちら側の地下空間に向かって吐き出される。
しかし、こちら側には龍王女含め、その炎を止めるだけの力を持つものはいなかった。
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「おい、カレン、これはどういうことだ。龍が今回乱入してくることはこちらとしては想定していないし、計画にもないんだが?」
「・・・・・・」
「おい、優雅にティータイムを過ごすな。」
「はぁ・・・そんなに心配なら、助けにに行ってあげたらどうですか?」
「ここから俺を追い出すための口実か?」
「まさか、今あなたをこの城から追い出したところで、何も起きないでしょう。」
「起きるだろ、俺が情報をしゃべる可能性がある。」
「あれ?そういうの自分で言っちゃうの?」
「状況によるが、場合によっては、話す可能性がある。」
「あ、そう、まぁ別に問題ないからいいけどさ。」
「で、なんで今回龍が乱入してきている?いつもなら転のはずなんだが?」
「なんでイレギュラーな時にそういう普通の対応を迫られるんですか。」
「あのな、分かっているとは思うが、龍はまだ、力の制御ができない。善悪の判断もまだ怪しくて・・・っ!」
「あれ?気づいた?」
「もう、お前のことを魔王カレンと思って話すの、やめた方がよさそうだ。」
「へぇ。面白いじゃん。本当の意味で殺りあってもいいんだよ?」
「人魔共同前線リーダー、カレン、そして、ミカエル幹部No.1カレン。お前の立場はそっち側だと認識して今後は接する。」
「うん。いいよ。それで?」
「龍にはなんて命令して今回の事件に介入させた?お前の、いや、お前らミカエルの目的はなんだ?」
「目的については、詳しくは言えないけど・・・そうだね、今回のイレギュラーを利用するため、って言ったら、大体あってるかな?嘘は言ってないわ。そして、今回の命令内容だけど。私にしては珍しくひどいことを言った覚えがあるわね。」
「早く言え。」
「敵の殲滅と、2名の処分。」
「は?」
「もう一回言おうか?敵の処分だよ?」
「そっちじゃねぇ、お前らしくないぞ、2名の処分って言ったか?」
「龍なら、私の命令は全部善だと思って受け入れてくれると思って。」
「ちぃっ!」
城からキルトは飛び出していった。
「ちょっと挑発しすぎたかな?」
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全身が痛い、シュウヤとの戦いで体が限界を迎えていたというのに、この黒い炎はまずい。何属性かわからないから対処できないっていうのもまずい。いや、能力だから、属性云々の問題ではないのかもしれない。
「痛い・・・なんで?龍?なんで私たちまで攻撃したの?」
「今回の命令は「敵の殲滅と、2名の処分」だから、それを頑張ってるところだよ。」
あ、あの龍、そんな感じでしゃべるんだ。てか、喋れるんだ。
と、思ったが、よく考えたら能力を使うのは人なのでそりゃそうか、と思い直す。
というか、「敵の殲滅」は俺たちのことを指しているのだと思うが、2名の処分ってなんだ?もしかしてだが・・・」
「おい、龍、2名の処分っていうのはまさか・・・」
「そうだよ。というわけで、次はもっとすごいの見せてあげるよ!」
龍と呼ばれた龍が・・・ややこしいな。名前が龍で見た目も龍なんだよな。こいつ。ものとしてはまがい物の龍だけれども。
とにかく、その龍がこちらに向かって攻撃を仕掛けてくる。
誰一人として、よけられる状態にない。いや、未来は動けそうだけど、なんだろう、まがい物の龍を見たショックからか、硬直してる。終わった。
黒き巨大な炎が、向かってくる。だが、
「助けには来たぜ、後は任せな。」
キルトが炎と俺たちの間に割って入ってきた。
何をしたのかは知らないが、炎はかき消され。まるで、最初から何もなかったかのようになっていた。
「キルト、なんであんたが、」
「シュウヤと醜魔はそこでおとなしくしてろ、後で捕まえる。」
「いいのか、俺たちは敵だ、とどめを刺すなら今の内・・・」
「馬鹿野郎、敵とはいえ人を殺す趣味は俺にはない。」
なんか、キルトが敵側と喋っているのでこっちの味方っぽく見えないが、たぶんこっちの味方である。
「ちぇっ、邪魔しないでよ。」
「龍って言ったな。いったん退いてもらうぞ。」
「お兄さん、強そうだから、楽しませてくれるかな?」
「楽しむ暇も与えねぇよ。」




