52話 対人魔共同前線-③
少し時間を遡り、快成と未来がシュウヤと戦っていた時ころ、スイアと情徒は醜魔と戦っていた。
「さっきはよくも障害物とか言ってくれたわね。」
「あ、怒ってる。戦闘中はあまり感情に身を任せない方がいいんだが・・・醜魔とかいうやつ、なんか変な感じするし・・・」
「しかし、あの二人よりは弱いのは事実だろう?それならば余裕だ。」
「あの二人より弱いことは否定はしないけど、あんたに負けることは否定するわ。」
「そういうのは俺に勝手からいうんだな。」
醜魔がその場から消える。
次の瞬間にはスイアが後方に吹き飛ばされる。
「かはっ!」
壁に衝突すると、壁の方に亀裂が入った。
「弱いな、スイア、といったかな?お前の能力ならば今の単純な物理攻撃くらい無効化可能だったはずだが?」
「うるさいわね、次は同じようにはいかないんだから・・・!」
「次も当てて見せるさ。簡単だ。」
「俺もいるんだが?そんなにスイアと話してて余裕なふりしやがって。」
「なに?」
「『破骨砕き』」
後方、要するに醜魔の死角から一撃を叩き込む。
その一撃は確実に醜魔の急所を殴ったはずだった。
情徒の拳は醜魔の体の中を貫通していたが、何も感触はなかった。まるで煙の中に手を突っ込んだかのようだった。」
「で?何をしたかったのかな?」
「な、まさか、物理無効・・・!」
急いで距離をとろうとするが、腕をつかまれ、投げられる。倒れ込んでいるスイアめがけて。
「なるほど、人でないことは能力でわかっていたが、お前が悪魔に分類されるとはね、そこまではまだ情報を知れてなかったよ。」
悪魔
デビルやデーモンと呼ばれることもある。
本質的には実態を持たず。相手に存在を認識させるために自らのコア(精神的なもの)の周りに魔力を具現化したものを漂わせて身体を構成している種族である。
よって、物理攻撃は基本的に無効となる。しかし、必要な時には自信をおおう魔力をコアと結合させ物より理的に具現化させることも可能なのである。
非常に厄介な種族である。
「スイアの能力はほとんど意味を持たなくなるわけかよ。おい、どうする?」
「どうするって言われてもね。魔法で対抗するしかないでしょ。それとも、他の方法がある?」
「無いな、どの方法を試すにしても魔法を介することになる。」
「先に伝えておいてやるが、俺はかなり高い全属性魔法耐性を持っているからな。適当な魔法が通用すると思うなよ?」
「あー、説明どうもありがと、でもね、ギルドの冒険者として悪魔と戦ったことは初めてじゃないのよ!『スピリット・コントロール』」
『スピリット・コントロール』
相手の精神に影響を与える魔法。
使用者の練度や魔力量によって大きく効果度が変わってくる。
少し使うだけでも莫大な魔力を要する。そのため、スイアが使用できるのはほんの数十秒である。
「なるほどな、ありきたりではあるが、一番効果がある。そこら辺の悪魔なら拘束し、なおかつ物理攻撃を有効的にするに至ったかもしれないが・・・俺には効かないな。」
「これで終わりなわけがないでしょ!」
「なに?」
「『ソウル・デス・フレア』!」
「精神系魔法の2種同時発動か、さすがに面倒くさいな、魂を直接焼かれるとは。」
「まだだ、『アンチ・デーモンフィールド』」
アンチ・フィールド系統の魔法はその空間にあるものを排除しようと働く、空間内にある対象の強さで消費魔力量が決まるため、見切り発車で使うと非常に危険な種類であるが、情徒ならば相手の魔力量がわかっているので的確な発動可能時間がわかる。
とはいえ、発動可能時間はたった1秒であった。
だが、その一瞬を逃したりするような真似はしない。
「とっておきの物理攻撃をくらえぇ!『時雨百矢』!」
ここまで相手を弱らせればさすがに物理攻撃も少しは通じる。
連続して相手に水の矢が当たる。だが・・・
「なるほど、この程度か、まだ物理軽減くらいは発動している。残念だったな。」
傷一つつけることができなかった。
「終わりだ。『終焉を呼ぶゼニス』」
何が起きたかは、情徒の能力、『全ての真実』をもってしても理解できなかった。どこから攻撃されたかもわからなかった。しかし、攻撃をすべて防ぐことには成功した。
「世界魔法を、防ぎ切った・・・?何をされた?」
「まだ理解できてないみたいで助かったぜ。」
そう言いながら、天井を蹴って醜魔に向かいながら情徒は大量の魔法陣を展開する。
「なるほど、大技を発動して隙ができた瞬間に攻撃するっていう作戦か。まぁ、ばれたから意味はないな。」
醜魔が腕の一振りで魔法陣から放たれた魔法を全て薙ぎ払おうとする。
「今だ・・・!『アクア・ツヴァイランス』!」
巨大な水の槍が醜魔がに向かって放たれる。
「な、まずい・・・!」
次の瞬間には二本の水の槍が醜魔の体を貫いていた。
「———っ!!!」
その場に醜魔は倒れ込む。
「お前の敗因は二つ。俺たちの作戦を大技の直後にできた隙を攻める作戦だと勘違いしたこと、もうひとつは、魔法を自らの拳で薙ぎ払おうとしたこと。その二つだ。」
「うん。情徒が言ってること、ちょっとずれてる気がするけどね?」
悪魔は魔力の塊によって体を形成しているが、物理攻撃をしたいときには一時的にコアと身体を構築する魔力が一体化する。その瞬間に物理攻撃を放てば物理攻撃も有効だとなるというわけである。
「魔法の攻撃をどう打ち返されるかは賭けだったんだけど、まぁ、今までさんざん物理攻撃を放っていたから物理で薙ぎ払うかな?って思ってたら大成功だったよ。」
「なるほどな、俺の油断が生んだ敗北っていうわけか。」
「そう、そういうこと。」
「念話で二人で作戦を話してたんだけど、うまくいってよかったわ。」
「この一撃にすべて賭けたかったから、一番鋭くなる水という存在を使うためにスイア自身に槍になってもらったのはよかったかもね。おかげで確実に貫くことができたし。」
「それに、あの二人よりも若干早く戦闘が終わったよ!これであの二人よりも強いって証明に・・・ならないか。」
「ならないな。でもまぁ、これで一件落着ってことで、いいんじゃないか?」
二人でしばらくの間勝利を喜んでいた。
しばらくすると、急に醜魔がしゃべりだした。
「・・・龍、か。」
「何?何か言った?醜魔?」
「・・・逃げるなら今の内だぞ。」
「何をふざけたことを、どうせお前はもう戦えないだろう。」
「その通りだ、俺はもう無理だ。だが、」
天井が崩落したのは、その時だった。
「俺の仲間なら、戦えるだろう。」




