閑話11 犠牲の上に成り立つ世界
昨日遺跡のお宝騒ぎの後、その日のうちにキルトは王城に向かっていた。
現在は使われていないとされている王城だが、一部組織がまだ利用している。別に組織といってもすべてがすべて隠さなければならないような組織ではないため、意外と中から光が漏れている。
今回キルトが向かったのは地下である。通常ならば一般人は入れないようなところである。(そもそも王城自体に一般人は入れないのだが)
ある部屋の前でキルトは止まり、ドアをたたく。すると、すぐにドアが開く。
「久しぶりだな、キルト。」
「たしかに久しぶりだね。で、要件なんだけど・・・」
「おい、ちょっと待て、その前に確認したいことがある。」
「なに?面倒くさいやつ?」
「お前にとってはたぶんそうなんだろうな。」
はぁ・・・とキルトと話している男はため息をつく。
「あのな、どうしてかってに王城に侵入してくるかな私としてもかなり困るんですよ。」
「いや、だって、お前のところアポとろうとすると一か月後とかになるじゃん。それは困るから俺がこうして出向いたやったっていうわけで、」
「確かにな、私の部下を通してアポをとろうとするとそうなるな、なら、今度からは私に直接連絡しろ。一週間以内には話せるように予定を合わせる。」
「あ、そう、それなら今度からそうさせてもらうよ。」
「今度からか、今回はもう帰る気はないという感じだね。」
「別にいいだろ。今は忙しい時期でもないだろうに。」
「確かに忙しい時期などは存在しないが、常に忙しいんだ。こちらは、」
「お互い様ってことでいいでしょ。」
「よくないわ。それと、王城に勝手に侵入するのもやめてくれ。今回は誰も気づかなかったからいいが、気づかれたら面倒だぞ。」
「いや、俺に気づける人がいたらきっとその人は俺と何かしらの関係を気づいてるから俺は捕まらないでしょ。」
「そういう問題じゃあないんだけれどもな。とにかく、これからはちゃんとアポとってくれ。」
「はいはい、で、本題ね。」
「はぁ・・・」
「龍王女の件なんだけどさ。」
「おい、ちょっと待て、龍王女様に何かあったのか?」
「いや、別に悪いことは何も起きていないさ。ただ・・・」
「ただ?」
「今まで龍王女様が、いや、龍王たちに名前が付けられたことはあるか?あ、龍としての名前じゃなくて人としての方ね。」
「いや、無いが・・・まさか、誰かが名前を付けたりでもしたのか?」
「あぁ、名前があったよ。少し驚いたね。龍王女も喜んでいたし。」
「まぁ、名前が付いたからって別に何かあるっていうわけでもない。それに、龍王女様が喜んでいるのなら・・・」
「名前は『龍門 未来』さすがに心当たりがあるんじゃないかな?」
「ん?龍門 未来?別にお前の元いた世界ならどこにいてもおかしくなさそうな名前・・・っ!」
「ちなみに名付けたのはアリスだ。」
「それは本当か?」
「だから、報告してあげたんじゃないか。」
「・・・まぁいい、別に名前のせいで何か事件が発生したりするようなわけじゃないんだろ。」
「そうだよ。」
「ということは、本題は別にあるな。」
「ばれたか。」
「で、なんなんだ、本題って?」
「べつに大したことじゃないよ。青龍に合わせてほしいだけだ。」
「あぁ、なんだ、そのことか、確かに王城じゃないと、それは厳しいもんな。何について話すつもりだ?」
「それは答えられないかな。」
「なるほど、まぁお前のことだからどうせ、自由能力か何かについてだろ。」
「よくわかったね。」
「長い付き合いだ、私だってそのくらい予想はできるさ。ついでに言うとお前が調べている自由能力が何かも予想はついている。」
「青龍は長い時を生きているからね。何か知らないかなと思って。」
「先に言っておくが、お前の調べている自由能力は危険だ。やめておけ。」
「嫌だと言ったら?」
「ここで止めるしかないよな。私達としても面倒ごとは避けたいんだが・・・」
「俺も面倒ごとは嫌だね。ということで通してもらえないかな?」
「べつに青龍様と話すことを止めるつもりはない。何を話そうと自由だ。ほら、行ってこい。」
「ありがとうね、では、行かせてもらうとするよ。」
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約12時間後
「やけに長い間話していたな。」
「龍王女の件もあったからね。意外と時間がかかったよ。でも、青龍が話すことは面白いから、飽きないんだよね。」
「そうか。それで?この後はどこに向かうつもりだ?」
「ん?あぁ、そんなことか。遺跡について国と一緒に調べる件についてはもうすでに連絡が来ているでしょ。そのことだよ。」
「なるほど、なら、その件に関して一つ質問がある。」
「なにかな?」
「お前はあの島の成り立ちを知っていたよな。」
「あぁ、知っているよ。それがどうかした?」
「今回、遺跡の心臓部ともいえる彼女に異変が起こっている。」
「本当に?それは知らなかったな。」
「原因もはっきりとしている。能力の暴走だ。」
「人造の能力だから、暴走するとしたら、何かしらの故障かな?」
「あれと同じようなものに、自然界に存在する本来の能力の力を注ぎ込んだ実験結果については知っているか?」
「さあ、俺は知らないけど。」
「今回はその人造の能力に本来の能力が注ぎ込まれたらしい。本当に何も知らないのか?」
「・・・さて、何のことやら。」
「そんなことにはならないとは思うが、あれは大陸一つを簡単に吹き飛ばす非常に危険なものだ。今はまだ抑え込まれているが、いつ動き出してもおかしくはない。」
「今回は、急ぐ必要があるからね。」
「なるほど、やはり犯人はお前か・・・」
「だとしたら、どうする?」
「べつに殺したりはしないよ。ただ、少しばかり質問に答えてもらおうか。」
「さっきも言ったが・・・嫌だと言ったら?」
「止める。さっきもそう言っただろう。」
「厄介だね、面倒ごとは避けたかったんだが・・・お前を倒すくらいならば簡単だ。」
「だれが私一人が相手だといったかな?」
次の瞬間、キルトが後方に移動する。するとキルトがたっていたはずの空間に亀裂が入っている。
「おい、殺す気がないって本当か?全然殺しに来てるじゃねぇか。しかも1対3ね。しかもこっちがただの人間なのにそっちは龍と悪魔と神じゃないか。」
「お前がただの人だと?笑わせるなよ。お前表向きには勇者のように扱われるが実際のところはあまりそこら辺のテロリストと変わりなかったりする。まぁお前の行っていることがすべてこの世界のためになっていることは認めるが。」
「じゃあ、それを認めるなら、ここを通してくれないかな?」
「お前の行動が世界のためになっているとは言ったが、それによって発生する犠牲者についてはどうするつもりだ?」
「この世界は弱肉強食だ。もし犠牲になってしまったとしても、その時はその犠牲者が弱かっただけだ。それに、俺は犠牲者を雑に扱ったりしているつもりはないんだがな。今まで無駄な犠牲を払ってきたつもりもないしな。」
「はぁ・・・まぁいい、今日のところはいったん帰すが、次に犠牲者が出たら、その時はお前を殺す。」
「どうせもいいけど俺を殺そうとすればそれなりの犠牲者が出ると思うから覚悟しとけよ。」
そう言い残すと、キルトはその場から去っていった。
「あれが、転生者か・・・どこかで、狂ったんだろうな・・・」




