閑話-9 それでも私は隷属する。-1
ナノ国はこの大陸において、もっとも発展している国のひとつである。しかし、奴隷制度については、いまだ、整備が追い付いていない。
国の方針としては、奴隷制度は廃止したいと考えているが、それは事実上不可能なことである。
なぜなら、この世界には魔法が存在する。その中でも無属性魔法があり、その中に拘束魔法などがある。それらを応用することによって、奴隷魔法が完成するためである。
これは、所持を禁止する、こともできず、使用を禁止することもできない。それゆえに、規制は難しいとされている。
そのためナノ国は発展しているので奴隷魔法も発達している。要するに、奴隷商が多い国なのである。
「お、来たか、トレリストス。久しぶりだな。」
「久しぶりっていても2週間しかたってねぇぞ。」
「まぁ、確かにな、前回はいつもより多めに買ってたし、次来るのが遅くなるだろうとは思っていたが。」
「それで、じじぃ、今回はどのくらいいる?」
「それなら、こちらに。」
奴隷商がトレリストスと呼ばれた者を連れて行ったのは店の奥の方、近づくにつれ、異臭が強くなっていく。
「トレリストス、お前のような客がいると本当に助かる。いらなくなったものを処理する必要少しがなくなるからな。」
「これで、全部か?」
目の前にいるのはすべて子供である。大体10歳くらいまでが一つの大きい檻の中に入れられている。
また、そのすべてが病気である。商品として表に出す奴隷とは違く、不良品のような扱いを受けている者たちである。
「14,15,16・・・17か、十分だな。それにしても、よくこんなに集めたな。」
「最近は仲間の奴隷商から買い取っているんですよ。」
「あぁ、通りで。」
「こちらは不良品を処分できる。お前は安く奴隷を手に入れることができる。いつも通りの互いにwin-winな取引だ。」
「じゃ、これ全部買わせてもらう。」
「おう、じゃあ、会計は・・・あ、そうだ。」
「どうかしたか?」
「あまり客が奴隷をどのようにして使うかは聞かないようにしているんだが・・・お前はいつも大量に奴隷を買っている。しかも病気の安いやつを、そのことからして、実験か何かに使っているのだろう。」
「実験は間違いだが、まぁ、無駄に命を消費することだというところは肯定しておこうか。」
「ふん、お前、奴隷のことを物ではなく命っていうのか。珍しいな。まぁ、なんだ、実験じゃないにしろ、助手は欲しいだろ。」
「いや、なに?お前まさか転職でも考えてるの?俺は却下だぜ。」
「あー違う違う。いつも病気を持った奴隷ばっか買っているってことは病気を治す方法を知っているんだろう。」
「まぁ、一応な。教えないが。」
「実は、奴隷として売る前にはいつもテストを受けさせていてな。どれくらい学力があるか。どれくらい体力があるか。どれくらい魔力量があるか。などいろんなテストをさせるんだ。もちろん、値段を決めるためにな。」
「続けろ。」
「それで、先日テストさせた中で、ものすごく頭がよかったやつがいるんだが・・・」
「そいつが病気を持っている、と?」
「あぁ、その通りだ、最近はやっているやつとは別で、直し方がわからない病気なんだ。それゆえに買い手がつかない。」
「なるほど。」
「だが、お前のいう、命の消費、っていうのをするにももったいない奴隷なわけだ。」
「だから、それを助手にすればいいと?」
「その通りだ、お前なら大体の病気は治せるんだろ。」
「まぁ、見てみないとわからないが・・・たぶん治せるだろうな。見てから決めてもいいか?」
「こっちだ。こい。」
さらに奥の方へと入っていく。周りには死体が転がっていて、先ほどよりもにおいがきつい。
処理する前の死体を置いてあるのだろう。
「これだ。」
そこにいたのは、6歳くらいの少女がいた。ただ、体が腐敗しており、生きているだけ奇跡だといえる状態であった。
「なるほどね・・・複数の病気にかかっているのか。あと数日もしないで死ぬな。最悪、今日中には、」
「これをどうか買い取ってくれないか。という相談だ。」
「べつに、病気自体は治せるから、いいんだが・・・」
「何か?」
「どのくらいの値段だ?」
「いつもお前が購入している奴隷一体の三倍の値段でどうだ?」
「べつに、高くはないが・・・2.5倍でいけないか?」
「そのくらいなら、いいだろう。」
「じゃあ、取引成立ということで。」
しばらくして、会計や奴隷魔法の処置が終わった。奴隷は移動させるときに抵抗されないように寝かせてある。
「そう言えば、こいつ、どのくらい頭よかったんだ?」
「お前なぁ、そういうのは先に聞いておいた方が騙されないと思うぜ。」
「悪かったな。ただ、あんたが俺におすすめしたんだ。本当に頭はよかったんだろ。」
「あぁ、解答データがあるから、今持ってくる。」
「・・・小学校6年ほどの学力か。」
「『小』学校?なんだそれ?別の国の学校か何かか?」
「あぁ、気にするな。こちらの話だ。とにかく、今日はありがとうな。」
「こちらこそありがとうな。おかげでかなり儲けさせてもらったよ。」
「じゃあな。また1週間後くらいに来る。」
「その時にはまた商品を増やしとく。」
「なら安心だ。またな。」
転移魔法でトレリストスと呼ばれた者は帰っていった。
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「さて、帰ったことだし。まずはこいらを片付けてと。」
購入した奴隷を一人ずつ地下牢に入れていく。
「これで、最後・・・じゃ、なかった、こいつは・・・どうしようかな?助手にでもしたらどうかと言われたがよく考えたら、別に、助手なんて必要ないしな。」
足元で、寝ているその少女を見ながら考える。
「まぁ、いったん起こすか・・・おい、起きろ。」
「・・・?あなたは・・・誰ですか?」
「トレリストスだ。今日からお前の主人だ。」
「へ?・・・っ!」
そして少女は察する。
「あ、奴隷・・・」
「泣いても無駄だぞ。」
「ちがう、ちがうの。私ね。今、すっごくうれしいんだよ。」
あ、やばいやつを買ってしまったかもしれない。トレリストスがそう思った瞬間であった。
「私って病気でしょ。それでも買ってくれたってことは、病気を治してくれるってことでしょ!」
少女は目を輝かせて、喜んでいる。
そこは奴隷になったことを嘆けよ。と、トレリストスは思った。
「ま、まぁ、そういうことだな。すでに病気は治してあるから、体、動きやすいだろ。」
「本当だ!すごい、体がスムーズに動くよ!」
「・・・あー、喜んでるところ悪いが、お前の仕事は・・・」
「命の恩人のご主人様!お仕事の内容は何でしょうか?」
「あの奴隷の管理でもしとけ。」
「はーい!わかりました!ちなみに、なんのための奴隷なんですか?実験とかって聞こえましたけど。」
「あー、それは違う。あいつらは・・・」
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トレリストスは自らの出自などを話した。
「要するに、あの奴隷は、使い捨てと同義ってこと?」
「その通りだ。残りの人生を少しでも幸せに過ごさせてやれ。」
「分かりました!ほかのお仕事はありますでしょうか?」
「いや、そんなに仕事はないけど・・・あ、そういえばお前の名前を聞いてなかったな。名前は?」
「私の名前ですか?『レイド』って言います。ちゃんと覚えておいてくださいね!」
「あ、あぁ、覚えておくよ。」
こうして、二人の新しい生活は、始まった———?




