38話 第2フェーズ
ユニコスはある部屋の前に立っていた。来賓用の部屋の前である。ちなみに5種類の部屋があるのだが、そのうちの一番真ん中、上から数えても下から数えても3番目の部屋である。
「なんで俺がこの部屋の見張りをしなきゃならないんだよ!」
この部屋の中にいるのは百夜である。彼女は一応敵国の者だが、姫であることには変わりないので、最低限のおもてなしをするためにユニコスがついている。(OTSでもよかったのだが、彼らはあくまでも軍人なので、百夜に手を出す可能性があったため、不採用である。)
「フェンのやつなんでミーヤと喧嘩するかなぁ・・・いつものことではあるけども。」
本来この仕事はフェンが行う予定だったのだが、フェンは今ものすごく怒られているため、代わりにユニコスが仕事をしている。
「あーだるい。見張りだから、夜も起きてないといけないんだよね。なんてブラックな労働環境なんだよ。」
ちなみに、この世界の基準でいえば労働環境はかなりホワイトなほうである。
その時だった。
「ぐ、あぁ、ぁぁああぁあああぁああああ!」
部屋の中から声がした。もちろん百夜の声である。
「チッ!一応来賓扱いされてるんだから、助けなきゃいけねぇじゃねえか!」
そして、部屋に入ろうとする。もちろん鍵がかかっていた。
「扉開けますよ!」
扉を蹴っ飛ばす。
そして扉の向こう側、そこには百夜がいた。全身から、血を噴き出して倒れこむ百夜がいた。
「大丈夫ですか!?何があったんですか!」
「逃げなさい・・・これは、能力の・・・ぐぅああぁぁああ!」
「何事だ?ユニコス。」
「ゼナ様!百夜様が、全身から血を噴き出して倒れました。逃げてとのことですが・・・」
「・・・まさかっ!」
「おい、何が起きてる?」
「ゼナお兄さん?叫び声が聞こえたけど、どうしたの?」
「ゼナさん。何かありましたか?」
ちょうどその時近くにいた、キルト、アト、カレンが近づいてくる。
「ユニコス。獣化できるか?」
「できますが、どうかしましたか?」
「命令だ。全力で、俺以外の盾となれ。」
次の瞬間、百夜の周囲に爆風が吹き荒れた。
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「ぐ、ごほっ・・・がはぁ」
「大丈夫か、ユニコス・・・って、重傷じゃないか・・・」
「そういう貴方も重傷のようですね。」
「カレンか、これは我が国と鬼国の問題だ、貴方がかかわるべきじゃない・・・」
「とはいってもね。能力の暴走は国際的にも大問題でしょう。対処、手伝わせていただきます。」
「アト様、下がっていてください、ここは、危険です。」
「でも、キルト・・・」
「いいから、下がっていてください。次は守り切れません。」
「っ!・・・わかったほかのみんなを呼んでくる!」
能力の暴走、ごくまれに能力所持者が起こす。いわば災害。能力所持者の意思を能力というものに乗っ取られた場合に起こる。原因は不明で、そのメカニズムは全く解明されていないとされている。
「意思を持っている能力が暴走したのよりはましか?」
「いえ、そのようなことはないでしょうね。意思がないと逆に本能のままに暴れられて困りますよ。意思があればまだ交渉可能だというものを・・・」
キルトとカレンが次の攻撃に備えに戦闘態勢へと移行する。
そこへ、百夜の攻撃が連続で放たれる。
「なるほど。能力だけでなく魔法も利用してくるか。能力の暴走はあまり見ないから、研究しがいがあるね。」
「キルトさん?真面目に戦ってくださいね。じゃないと大変なことになりますよ。」
「確かに、カレン様の言う通りだな・・・まぁ、まじめに戦っていないのは貴様もだろ。」
「魔王に対して、『貴様』だなんて、失礼ですよ。長い付き合いですから、許しますけど。」
「・・・能力の暴走は人為的に発生させることは不可能だとされているが、お前のほうでは人為的に発生できるようにする実験でも行ってたのか?」
「まさか、この状況で私を疑いますか?」
「あぁ、一応、ナノ国に恩を売るっていう形でなら、暴走させる理由にもなりえる。」
「はぁ、一応言っておきますが、私の国には能力を暴走させる技術なんてありません。第一、そんな実験を行ったことも少なくとも私の代ではありません。」
「君の国では実験を行っていないんだね。少しは安心したよ。」
「少しって、どこら辺が安心できないんですか・・・」
「おっと、次の攻撃がくるよ。」
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同時刻
「・・・何の音だ?」
爆発音とそれに続く戦闘音。快成は音がした方向的にも嫌な予感がしていた。
そこにアトが来た。もう、大体この後のことは予想がつく。
「いた!快成お兄ちゃん!あのね!あのね!」
「落ち着いて、何があったの?」
「えぇっとね、あのね・・・」
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「あーなるほどね。要するに自然災害みたいなものが発生したってこと?」
「ま、まぁ、認識としては間違ってはいないと思いますけど・・・」
「わかった、アト様は避難してて、あ、他の人がいたらその人にも助けを求めてほしいけど・・・とにかく、今は自分の命を最優先に、ね?」
「わかった!快成お兄ちゃんもがんばってね。」
アトは音がした方と逆の方向に走り出していった。
「・・・どうせ、もう片方の人格があるんだから、こんなこと言わなくても死なないだろうが。まぁ、一応。」
というわけで、急いで、音がした方に向かう。道中でほかのギルドのメンバーに遭遇したので、一緒に向かうこととなった。
爆発音がした周囲には百夜の能力で操ることができる物質、血が広がっていた。
「これは・・・危険すぎるな、これじゃあ進めない・・・」
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「・・・おかしいですね。援軍が来ませんが。」
「アトが、助けを求めに行ってから、すでに5分くらいたってるっていう割には、確かに人が来ねぇな。」
二人は攻撃を受け流しながら、ユニコスとゼナを守っていた。攻撃はしない。いや、しないのではない。できないのだ。百夜の攻撃が激しすぎるがために、接近することさえ困難。魔法を使おうにも、百夜の魔法で相殺されてしまう。
「さて、どうしたものかな。暴走させた原因が分かったというのにこれじゃあ、まったく意味がない。」
「暴走の原因わかったんですか?」
「・・・あぁ、お前が自ら言ったようなもんだろ。」
「なにを言って・・・」
「技術開示の規則はどうした。」
「・・・」
「おい、答えろ。」
「ヤタが、決めたことなので、私には、わかりかねますね。」
「認めたな?じゃあ、一つくらい質問に答えてもらおうか。暴走を引き起こしたのは誰だ?」
「能力が暴走した際には、魔法は意識がないと使えないんですよ?」
「まさか・・・」




