35話 決着と始まり
体が宙に浮く。
さっきまで落下していたはずなのに、
まぁ、浮くといっても凄まじい速度で打ち上げられた感じだけれども。で、しばらくするとまた落下し始めた。
ふつう物理法則がやばい世界でもない限り、そうなるよな。
で、これを数回繰り返す。
途中で気が付いたが、落下地点に転移門があり、そのすぐ隣に転移先の門があるらしい。それによって永遠と落下を(上空に向けて)続けているらしい。
速度がかなり落ちてきたところで、転移門が消滅する。
「痛ぇ!」
速度が落ちてきた=高度が落ちてきたといえど、50cmから落ちるのはそこそこ痛い。心臓刺されてるのに。
「助けてやったぞ。これで貸し一つな。」
「ん?あぁ、バテンさんですか・・・」
「死にそうなのか?『ヒール』」
「そんな一発で完全回復する魔法をよく使えますね。」
「その様子だと、セブンも使ってたんだろ。このくらい、大したことない。まぁ、ここで話しててもいろいろと困るからな。一度店に来い。」
「じゃあ、そうさせてもらいます。」
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「さて、百夜は隔離したから、そろそろ、目を覚ましてもらおうか。」
空中に百夜が浮いている。本当に浮いているだけである。
「あれで、隔離されてるんですか?」
「あぁ、封じられてるな。あ、言ってなかったか?俺の能力は『空間支配』だ、まぁ、内容的には空間系魔法すべての上位互換だと思っておけばいい。具体的には効果範囲が広い、とか、発動速度が速い、とか、魔力を消費しない、とか。」
「だから、あの時転移門をすぐに開いてくれたんですね。」
「その通りだ。ちなみに今は空間を切り離して百夜を隔離してる。ちなみに声とかは届く特別仕様だ。」
「そうなんですね。」
「さて、あとはこいつの目を覚まさせれば・・・」
「そう言えば、ナノ国の地下にも彼女の血が通ってるって話だったんですけど、今起こしても大丈夫ですかね?」
「あぁ、あれか?あれならタジンが全部分解した。科学的にな。」
「えぇ、魔法じゃなくて・・・」
「なんか残念そうな顔してるが、科学だ。」
「この世界にも科学ってあるんだ。」
「逆にない方がやばくない?」
「確かにやばいかも・・・あ、あともう一つ、この店に来たところで、この後はどうするつもりなんですか?百夜をこの店に置いておくわけにもいかないですし・・・」
「店の地下に王宮まで続く地下道がある。そこを使って王宮まで行ける。」
なんでだよ。なんでそんなものがあるんだよ。
「さて、百夜、いい加減起きろ。」
「ん?むにゃ・・・ふぇ?ここどこ?」
「・・・」
「おまえ、俺の店に来たことあるよな。あと、俺のこと見てよくそんなふざけたこと言ってられるな。」
「ん?だれ・・・ふぇあ!なんであんたがここにぃ・・・って、くそがぁあんた、閉じ込めたでしょ!私のこと!」
「その通りだが。」
「やっぱりあんたたちろくな性格してないわよね。」
「いや、閉じ込めて隔離するのが最適解だと思うんだが?」
「・・・」
「そう言えば、演技はもうやめたのか?」
「別にいいわよ。あんたたちの前ではこっちの方がいいまであるもの。」
「お二人はどういうご関係で?」
「「特にないけど」」
「なんでそうなる。」
「まぁ、何回かあったことがあるっていうのと。因縁の相手が一緒ってことくらいね。」
「それを先に行ってくださいよ・・・」
「さて、進むぞ。」
「え?私はどうやって?」
「お前はその空間ごと移動させる。」
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「で?今回の戦争・・・にもなってないけど、こっちは死者はいないのよね。けが人は何名?」
「報告されている限り、重症が4人と軽症者が39人。まぁ、避難の際に転んだ人がほかにもいるだろうが。被害は最小限だったといえるな。」
「はぁ、この書類片づけるのも、毎度大変なのよね。この間自分が暴れた分の書類の整理終わったと思ったのに・・・」
「それは・・・自分が暴れたのが悪くない?」
その時、部屋の扉がノックされ、付和が入ってくる。
「ゼナ様、ナノ様。お客様が到着なされたようです。」
「何人くらい来た?」
「時間通りに全員集まりました。」
「珍しいな。あいつら、時間守らないこと多いし。」
「彼らが忙しいだけなのでは・・・」
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「ねぇ、この空間って酸素とかは入るのよね?」
「あぁ、固体と液体だけ通り抜け不可になってる。」
「器用な能力よね。」
「べつに、魔法でも再現は可能だと思うが。」
「それだと魔力の消費量からしてコスパが悪いのよ。第一空間系魔法を使える人なんてあんまりいないんだから。」
「ついたぞ。」
「へぇ、ここに出るんだ。」
「この王宮無防備過ぎない?」
「なんで王宮の中のしかも軍事施設が並んだところに出るんだよ。この道おかしいだろ・・・」
「俺をいつでも監視できるようにこういう場所とつながってるんだよ。」
「なんで監視対象なんですか?何かやばいことでもしたんですか?」
「したことには変わりないが、もう何年も前のことだ。」
「したんだ・・・」
「さて、今回の目的地の部屋は・・・」
「バテン様、快成様、百夜様。お久しぶりです。会場までご案内します。」
ユニコスが迎えに来てくれた。なんかものすごく嫌そうだが。
「おう、頼んだ。」
「行きたくないわね。」
「黙ってついてきてください。」
「・・・」
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「こちらが会場です。あ、バテン様、お手数をおかけしますが百夜様の拘束はそのままでお願いいたします。」
「かなり面倒くさいこと押し付けられた気が・・・快成、お前空間系魔法使えない?」
バテンほどの高度なものは使えないので、無視する。
「それにしても、すごいメンツがそろってますね・・・ほとんど知らない顔ですけど。」
「あ、おい、快成。無視すんな。まぁ、お前が知らないのも無理はないような奴らばっかだな・・・他国のやつらもいるのか。」
「えぇ、立場的に中立な国である。魔国の方々に来ていただきました。」
「じゃあ、魔王もいるってこと?」
「はい、います。」
「へぇ、ちなみに勇者は?」
「いないです。」
「・・・いるな。なれ果てだが。」
「へ?バテン様?何をおっしゃっているのですか?」
「知らないのか・・・まぁいい。知らない方がいいこともある。」
「・・・ま、まぁいったん席についてもらっていただけますか?会談開始までまだ少し時間がありますので、ゆっくりしていてください。」
そう告げてから、ユニコスはいなくなる。ほかにも忙しそうある。
「このメンツの前でゆっくりっていうのは、俺でも厳しいな。」
「うぅ・・・早く帰らせてもらえないかの。」
「百夜、言っておくがこのメンツの前でその口調変える作戦は無駄だと思うが。」
「あ、やっぱりか。」
「ちなみに、具体的にはどのくらいやばい人たちが集まってるんですか?」
「あのくらい。」
そうして、バテンが指さす先にはたくさんの人が座っている。
「いや、座ってるのはわかるんですけど、こう、誰がどうすごいのかっていう・・・」
「おまえ、まさかあの喧嘩を認識できてないとは言わせないけど。」
「へ?」
そう言われて、よく見てみると。確かに何かがものすごい速度で会場内を動いている。片方が獣人化したフェンでもう片方が黒猫である。
「あれが、かの有名なフェンとミーヤの大喧嘩な。」
「・・・あー、今視認できた。音速はかるく超えてるのか。」
他の参加者たちは平然としているが、同じ空間の中で音速を軽く超える。ものすごい喧嘩が繰り広げられている。
そして、他の者たちが平然としていることからも、その二人よりも強い人、またはこのような状態になれている人がほとんどであるということから非常にすごい=強い人が多いことがわかる。
「ちなみに、喧嘩の原因って何なんだろう?」
「いつも通りなら、どちらが主人の忠実なペット・・・あ、違う、部下かっていう話なはずだけど。」
「しょうもな。」
「意外とあっさりと決着ついたね。」
「あんたが干渉したからじゃないの?そこのところどうなのよ、セブン?」
「まぁ、確かに俺が干渉したけど、その力を使いこなせてるっていうのはすごいと思うんだよな。」
「確かに、あなたのほどの強大な力を持つものと共鳴して、さらにその力を行使できるのは異常とまで言えるわね。」
「あぁ、おかげで今回は楽しめそうだ。」
「・・・そういえば、あなた今回外出許可とってたの?」
「・・・」
「ご主人様から説教があるわね。」
「最悪なんだけど・・・」
「ドンマイ!がんばれ!私はあなたの代わりにいろいろ後処理しとくから!」
その後、セブンは三日三晩説教(拷問)を受けていたという。




