33話 VS鬼姫-①
「さて、少年。戦うか?それとも、今ならまだ逃げても許してやるがの。見た感じ転生者か何かじゃろ。なに、気配でわかるわ。転生者ならナノ国を守る必要も無い。だからこそ、今ならまだ、見なかったことにしてやらぬこともない。」
「なぜ、俺がここまで何の障害もなくたどり着けた?」
「逃げるつもりはないか・・・なら、仕方ない。人払い・・・あ、鬼払いか・・・もしてあるし、少し話すとするかの。」
「時間稼ぎですね。あなたの能力なら俺と会話している間でもナノ国を攻撃することは可能です。」
「やはりばれたか。なら、仕方ない・・・」
百夜が来ているのは和服である。ちなみに色は赤や黒で彩られていて美しい。
「本当に卑怯な方法ですね。」
「卑怯?」
この部屋は黒を基調にデザインされている。
「ここまでしないと、俺を殺せないと判断したのだとしたら。うれしいですけど。」
「あー、全部ばれてたかのう。」
それと、この部屋にはかなり強めの消臭魔法がかかっている。
そのため、その消臭魔法を打ち消す。
「新鮮な?血の匂いがしますね。あなたの血であってますか?」
「正解じゃ。では、死ね。」
次の瞬間四方八方および百夜から血の針が飛び出す。
「あぶな!」
次にそれは棘のように変化し、蛇のように俺を追いかけてくる。
「アブノーマル・セル:シールド」
百夜の能力のすべてを防ぎきる。
「なるほどのう。すべて防ぐか・・・仕方ない。降参しようかのう。」
「は?」
「何?そちらにとってもその方が都合がよかろう。」
「だが、お前はまだ、ナノ国に攻撃することが・・・」
「そんなこと、そなたとの戦闘が始まる前にやめておるわ。同時に複数の作業をすると、どうしても集中できないからの。」
「じゃあ、まあ、降参するなら、話を聞いてやらないこともないのかな?」
「おぉ、話を聞いてくれるのか?それはありがたい。」
「その前にだ、なぜ俺との戦いで降参した?おそらくだが、お前にはまだ手があるはずだが・・・」
「・・・?」
「どうした?」
「ふっ、ふふふ、あっはははは!お面白いのう、そなたは。」
「何がおかしい。」
「ふー久しぶりにこんなに笑ったわ。」
「何がおかし・・・がはぁ!」
おかしい、体の内側が・・・内臓がかき乱されているような・・・
「よく正気を保ててるね。あなたの血を操作して内臓を破壊させてあげたって言うのに。」
「おまえ、まさか、最初からこれが狙いで・・・」
「その通り!最初のは遊びで、さらに言うと正攻法の戦い方でぇ。私が降参したのは、正攻法の戦い方ってわけね。」
「くそ、がぁ・・・」
「久々に面白そうな相手が見つかったんだもの。せっかくだから楽しまないとぉ。」
百夜はものすごい笑顔でそう言い放つ。
さっきまでの口調も今はもうなく、ただただ悪鬼という感じである。
「あははははは、はやく、はやく!君の全力を見してよぉ!」
全力も何も、内臓をかき乱されてるんだ。今は意識を保つのでやっとなんだよ・・・
まてよ、意識があるのなら、魔法は使えるのでは?集中できないから高度な魔法は難しくても、少量の魔力で使える魔法なら使えるんじゃないか?そうだ、魔導書なら魔力を通すだけで魔法を発動できる・・・ページを開くくらいなら、今の俺でもできなくはない・・・
「どうしたの?もう終わりぃ?終わりならぁ、私が食べてあげるんだからぁ!」
魔導書を自分の持っているカバンの中から無理やり取り出す。
「あれ?もしかして、魔法でも使おうとしているのかなぁ?そんな悪い子は、鬼が食べちゃいます!」
魔導書を持った右手が消えた。そして、魔導書が落ちる。いや、消えたんじゃない。喰われたんだ。
「んー新鮮な若者の血肉ぅ。おいしい~!」
痛い、ものすごく痛い。痛いを通り越して感覚がおかしくなってきている。それでも、ここで負けるわけにはかない。だからこそ、ここで使う魔法は・・・
「『絶対通話』」
・絶対通話
無属性魔法
念話の完全上位互換
聖域の中と外との通話くらいならどこからでもできる。
最強クラスの念話系統の魔法である。
が、しかし、一瞬にしてその通話は途切れる。
「念話系統の魔法?援軍を呼ぶつもりだったのかなぁ?でも残念、通話は切ってあげましたよぉ?」
「問題・・・ないさ・・・あいつならきっと、気づいているはず・・・がはぁ・・・」
「さて、誰と念話しようとしてたのか、検証しないとねぇ・・・あ、え、そんな、はず・・・がぁ」
通話したのは俺がこの短い期間で出会ってきた一番強い人である。それはもちろん・・・
「きて、くれたの・・・か、セブン・・・」
「あ、死にかけてるのか、はい『ヒール』」
「どうして、どうして貴様がここに!」
「あれ?もう演技する気力もなくなったのかな?」
「えぇ、その通りよ。姫の演技も狂人の演技も何も、もう必要ないでしょう。何が目的?今回のイレギュラーを可愛がるつもりかしら?」
「可愛がるつもりつもりはないが、今回は君も特殊な方法を使っているだろう。ならば、こちらも特殊な方法を使わざるを得ないんだよ。」
「まあいいわ、貴様の主人からの命令か何だか知らないが、ここで貴様を殺して・・・」
「残念だが、それは無理だな。俺はすぐに撤退するんで。」
「はぁ?逃げるつもりか!?」
百夜がセブンに向かって襲い掛かる。
「・・・快成、いまだ、やれ!」
「『天ノ裁キノ喝采』!」
それは、天から放たれる無数の斬撃
「ッ!貴様は囮か!」
「じゃあな、今度は相手してやるよ。」
「いや、これくらいなら、防ぎきれる!」
「快成・・・君が出せる出力はそのくらいか?お前ならもっとやれるはずだ。力を貸してやる。有効につかいな。」
そう言い残してセブンはその場から消える。それと同時に俺に魔力が注ぎ込まれる。そして自分の全ステータスが大幅に上がったことが感じられる。
「うおぉぉぉぉ!」
「強く、重い・・・!が、このくらいなら・・・」
百夜はその無数の斬撃を自らの血を操ってすべて防いでいく。
それならこちらはそれを上回る威力を出すしかない。
「『共鳴ノ禁忌-七』」




