27話 VSナノ-③
キルトはその瞬間、恐ろしい殺気を感じ取り、振り向く。しかし、もう、手遅れであった。
「くっ!」
急いで剣を構えたものの、相手の爪がキルトの皮膚を裂いた。
「何しやがる。」
「反逆者は、処刑すべきですから。」
相手・・・フェンによる猛攻が繰り出される。
(これでまだ、獣人化状態か・・・獣化したらやばいな。)
ギルドのデータによれば、このように書かれている。
『フェン』
個体名:不明
ステータス:獣人(その他不明)
能力:なし
ナノ国国王ゼナと王女ナノの側近であり、護衛でもある。行動は主にユニコスとともに行う。
獣亜国より、ユニコスとともにナノ国に訪れており、非常に優れた戦闘能力を持つ。
ナノ国に訪れるまでの記録がユニコスと同じくあまり残っていないため、同じく獣亜国魔王によって、記録を改ざんされている可能性が高い。
その爪は空間をも裂くためもしも交戦することがあれば、空間系の魔法が使えることが勝利への条件となってくるだろう。
獣化した場合、戦闘を継続せずに即時撤退した方がよいと考えられている。
このように、それなりに危険な存在としてギルド内のデータには書かれているが、ナノ国の上層部の者であり、かつ国民には優しく振舞っているため、かなり優しい性格だというイメージを抱いている人が多いと思われる。多いと思われるのだが、これは違う。何者かに思考誘導されている。
「おい、お前の役割はナノを守ることじゃないのか?なぜ今ここにいる?」
「あなたに話す意味は、無い。『軌跡合爪』」
フェンの爪から衝撃波が飛んでくる。
「おっと、あぶねぇ。」
「さすがギルドリーダー、簡単に避けてくれますね。」
「このくらいの攻撃に当たってたら、リーダーなんてやってられないからね。」
(とはいえ、これをよけ続けるのも、大変だな。どこかで、こちらも攻撃しなきゃダメか。)
「軌跡合爪」
またしても、衝撃波が飛んでくる。しかし、キルトはその衝撃波を受け流しながら、フェンへと突っ込んでいく。
「死にに来たのか。馬鹿め。」
「どっちが馬鹿かはまだ、分からないと思うけどね!」
「軌跡合爪!」
「龍頭破突!」
鋭い爪が、キルトを裂き、鋭い剣先が、フェンを貫いた。
「〇✕※●▽*☆・・・」
ナノが魔法の詠唱を開始する。それと同時にナノが少し浮く。魔法使いにとって最も隙が多いのがこのタイミングである。逆に、ここを乗り越えれば勝利が約束される行為でもある。といっても、ユニコス曰くナノは魔法も剣も使えるため、魔法使いというわけではないらしいが。
「さて、背に乗れ、ナノは半詠唱状態だから、俺たちの攻撃をよけることも可能だ、頼むから一回で成功してくれよ。」
そう言うのは人の姿から一本の角をはやした白い馬・・・ユニコーンへと姿を変える。
「最初から純粋な人ではないと気配では気づいていたけど、ユニコーンだったとはね。ユニコーンなんて出会った経験がないから、俺の能力でも割り出せなかったわけだ。」
情徒がなぜか少し悔しそうである。能力で割り出せなかったのが悔しかったのかな?
「でも、ナノが唱えてる呪文の詳細は解析終わったぜ。」
情徒によると、ユニコスが言っていた通り、半詠唱状態であり、魔法は無属性魔法『symphony』基本的な大型魔法であるらく、多段攻撃を行うことが可能な広範囲攻撃魔法らしい。一言でいえば、危険。術者のコントロール次第で、攻撃対象を限定することも可能らしいが、今のナノが攻撃対象指定を行うかは怪しいところなので、この技が発動する前に倒す必要がある。
ちなみに先ほどから言っている半詠唱状態というものは100%の出力で詠唱してしまうと、自らが行動不可能に陥ってしまうため、50%の力で、魔法を詠唱するといったものである。これが厄介であり、術者は通常の詠唱と違い、行動可能なのである。制約はほかの魔法が使えないくらいであり、こちらの攻撃をよけるのには十分な状態であるといえる。第一、ナノが浮いているのだから、空中戦にでもなったら、俺たちは攻撃ができない。まぁ、だからこそユニコスが獣化してくれたのだが。
「さて、二人は後方支援を頼むよ。それじゃあ、行くぜ、快成!」
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「あ、付和姉さん!ようやく帰ってきた!どうだった?成果は出た?」
「ほとんどなかったわよ。今後彼らが干渉してこないことを確認できたことぐらいね。」
「しばらくは干渉をしてこないなら、今回はまぁ大丈夫だろうな。」
「あいつら、あそこで言ったことは意外と守るからね・・・」
「ほかに何か、情報は得られましたか?」
「そうね、他にもなかったわけじゃないけど、これはことが終わってから話した方がよさそうね。あ、そういえば、」
「どうかしましたか?」
「最後、私が帰るときに手紙が落ちてたのよね。ただ、それが古代文字でもない不明な言語で書かれていてね。後で、解読してもらいたいのよね。」
「なるほど、確かに、見たことない文字ですね。一文字一文字が複雑というか、単純な文字が少ないですね。」
「あ、そいえば、他のみんなのところに加勢しに行かなくちゃ!」
「そうね、急ぎましょう。」
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「うぅ、飛んだのはいいんだけど、ここ、室内だった。」
「ユニコス、ここは我慢してくれ。」
「我慢したいんだが、人の姿をとっているときよりも体が大きいからね。大変なんだよ。・・・痛!角に何かぶつかった!崩れてきた天井の破片か。ちょっと許せねぇ。」
「あ、角は大事なんだ。」
「角を怪我した奴はナノ様だろうと許さん。おい、とっとと終わらせるぞ。」
ユニコーンにとって角はとても大事らしい。いい知識が手に入った。
ふとナノの方を見ると、さっきいた場所からさらに上へと移動している。逃げる気なのだろう。
「行け!ユニコス!ナノは上だ!」
「オーケー今向かう!」
それに気づいたナノはもちろん逃げる。ちなみにこの時点で詠唱完了まであと3分ほどである。
「にしても、逃げるね。相当な速度だよ。あれ。」
「そうか?お前の仲間はついてきているが。」
下を見ると情徒とスイアがものすごい勢いで追いかけてきている。必死の形相ではあるが。それに対してユニコスとナノはそこまで体力を使わずに動いているように見える。
「ユニコス。お前、疲れないのか?」
「のんきに会話をしている暇はないのだが・・・まぁ俺はそういう生命体だからな。空中移動は歩くのと同じくらい楽なんだよ。」
「こんなに速くても?」
「これで速いっていうか?王宮内を走り回る速度なんだから、大した速度じゃないだろ。」
「確かに、言われてみれば。」
「下の二人があんなに必死なのは、俺たちは簡単な上下移動が大変だからだろ。」
確かによく見ると下の二人、ナノとユニコスの高低差を無視した動きに壁を蹴って無理やり追いついてやがる。
「だが、ナノ様は人族だからな。魔力で動いてるんだから。体内のMPが切れたら終わりだ。まぁ、空気中から補給できるから、切れんだろうが。」
「え、じゃあ、このままずっといたちごっこてわけ?」
「なわけ。ほら、しっかりと捕まっとけ。・・・あ、角はやめろよな。」
「角が一番掴まるやすいんですが・・・」
「俺の角は高くつくぞ。」
「はいはい。」
すると、一気に加速し・・・ナノの目の前へと迫る。
「構えとけよ。俺の合図で、斬れ。」
「わかった。一応聞くけど、他に注文は?」
「ある。できるなら衝撃波とかを放つ系統のがいい。もしも離れてしまったときにも当たる可能性があるからな。あと、対象選択できるならその方がいいほかの奴に当たると面倒だからな。」
「うわ、意外と注文多いね・・・」
「誰だ、注文を許可した奴は。」
「許可したというとちょっと違う気が・・・まぁできるけど。」
「あと、絶対に俺に当てるなよ。禁忌属性なんて下手したら即死だからな。今のナノ様は例外だけれども。」
「そろそろ、かな?」
「あぁ、そろそろだ。」
ナノの姿が目前に迫る。しかしそこで、ナノは懐から何かを取り出す。
「なんで転生者でもないお前ががそれを持ってんだよぉ!」
「おい、快成、あれはなんだ?」
「とにかく、あの武器の穴が開いている部分の直線状には行くなよ。貫かれるからな!」
貫かれる。そう、取り出されたのはしっかりと銃である。
「ん?あ、あれは前に快成が使ってたやつだ。えぇっと解析結果は・・・『ニューナンブM60』?前のやつとは違うのか。」
情徒、そこで解析能力使われても困るのよ。いや、無いよりはましだけれども。それにしても、また聞いたことのある名前のやつである。困る。弾数は見たところたぶん5発であってるはず。
「よけるのは無理だな。あんなもん。すぐに標準を合わせられる。ナノ様が中心でこっちが外側だ。移動速度が速いのはナノ様だろ。」
「かといってくらってたら、大ダメージが・・・」
「ッ・・・!」
「あ、くらったな、お前。」
「お前の忠告通り、めちゃくちゃ痛いわ。これ・・・」
「まぁ、俺はくらったことないけど。」
「痛いから、とっとと終わらすぞ。」
そのままユニコスがまっすぐに突っ込んでいく。
「お前!馬鹿か!?」
「どうせそろそろ詠唱完了するんだ。どの道こうなってたさ。」
流石にこうなると危険である。残りの4発。全部撃たれたし。
「アブノーマル・セル:シールド!」
自分は守ったため3発は防いだ。しかし、残りはユニコスの脳天めがけて飛んでくる。(今更だが、俺は思考加速をしているため、飛んでくる弾が見える。)
そして、弾は・・・
キンッと高い音を立て、落ちる。
「あーなるほどね、角に当たったのね。」
「やばい、めっちゃ殴りたい。ナノ様のことめっちゃ殴りたい。」
「っ・・・なかなかやるな、ギルドリーダー!だが、お前も無事ではないでしょう。・・・これで、とどめ!」
技でも何でもないただの爪による切り裂き攻撃。今のキルトになら十分致命傷になる。そう思っての一撃だったのだが・・・
「・・・素手で・・・止めて・・・どういうこと・・・」
そこには五体満足どころか元気すぎるキルトがいた。
それに対してフェンはもう身体が限界である。
「いやぁ、あれでも危なかったんだよ。後少しでもずれてたら・・・まぁ、俺がずれるわけないんだけどね。」
「しかし・・・確かに裂いたはず・・・」
「あぁ、俺の服は裂けてるけど、その程度だよ。感覚麻痺の魔法かけてたし。」
「それで、服と肉体とを勘違いさせたと・・・」
「そういうこと。獣化されてたら厄介だったかもしれないけど。君は意識がなくならないことを優先して獣化しなかったみたいだね。」
「・・・なぜ私が獣化したら意識を失うことを知って・・・」
「さて、終わりにしようか。」
そして、キルトのが放つ剣の一閃が、フェンの意識を刈り取る。




