25話 VSナノ-①
作戦開始から10分経過・・・
「さすがに多いな、この兵士たちを殺さずに倒すというのは本当に大変だぜ。」
「お兄ちゃん、私疲れたぁ~!」
「がんばったらあとでご褒美あげるから、ね?がんばろ?フミちゃん。」
「ん、分かった。私頑張るよ。お姉ちゃん!」
ブンが剣を振り回し、ホスカが後方支援として巨大な魔力砲を打つ。
そして、弓で後方支援をしているのがフミである。
・・・ブンもフミも両方とも名前の漢字が文だから少しややこしいから、さっきっからカタカナ表記だけど、問題ないよな。
「キルトぉこっちに来てくださいよぉ。このままじゃあお兄ちゃんとかお姉ちゃんとかがばてちゃうじゃん。」
「少し待てって!こっちはお前らが相手している人数を一人で相手してるの!大変なの!」
キルトは少し離れたところでものすごい人数を相手取っている。たぶん30人くらい。
一応相手は操られているとはいえ、騎士団の人間たちである。個々の技量が洗練されていて非常に強い。
「で、俺らは本当にナノの前につくまで体力を温存しとかなきゃダメなのね。」
「暇ね。」
「少しは準備体操くらいしておくか。」
俺たちといえば、これを眺めているだけである。要するに暇。暇なのである。
「ナノ様は移動されてなさそうですね。側近としては逃げてほしくもありますけど、作業が楽だからいいか。」
ユニコス君、楽かどうかで決めるのはいけないと思いますよ。
あと、一国の女王と戦うことを作業と言わないでくれ、これでも危険行為なんだから。
「さて、少しずつ進んできてはいるけれど、これではきりがないよね。ということで、俺たちも本気を出すか。というわけで、三人ともそこどいて。」
するとブン達三人がすぐに自分たちのもとへと戻ってくる。
あ、こっちにヘイトが向くんですけど、危険だからこっちには来ないでほしかったな。隠れてたのに。
「それじゃ、久々にぶちかましますか!」
キルトが持つ剣が、光り輝き・・・砕ける。
「光閻乱撫」
そして、砕けた剣の中から、光り輝く刀身が姿を現す。
どうやら魔素を集めて魔力へと変換したものを実体化し、刀身へと姿を変えたものであるらしい。
「剣の質を変えたところで、結局作業・・・じゃなかった、相手を倒す速度は大して変わらないと思うけど?」
「まぁ、見てろって。」
刀身が魔力へと変わったことによって相手が豆腐のように斬れていく。(厳密にいえば防具しか切っていないが。)
が、相手を倒すペースはあまり変わっていない。なぜなら、元から豆腐のように相手が(防具が)斬れていたからである。
そして、さすがに相手が多いため、キルトは後ろ側から、斬られそうになる。が、斬ろうとしてきた相手が崩れ落ちる。
「なるほどね、剣を砕くことは手段ではなく目的だったということか。」
崩れ落ちた相手を見ると、首元に金属片が突き刺さっている。
「こうやって空間魔法とかで破片を操作して相手を切り裂く、これが最初から目的だったんだよね。ということで、一気に終わらすぜ。」
ものすごい勢いで相手が倒れていく。倒れている原因は体中を切り刻まれたことによる大量出血である。
「痛そう・・・」
「騎士団の人たちだからね、あのぐらいじゃ死なないさ。」
「でも、痛いことには変わりないよ?やっぱり、かわいそうだって。」
「あぁ!フミちゃんかわいい!相手のことも思ってあげれるなんて!」
そんな会話をしているうちに、敵は片付いた。
「いいペースだね。さぁ、次のフロアに行こう。」
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「じゃあ、二人はここで待ってて。警護ありがとう。」
「付和姉、本当に一人で大丈夫?」
「せめてどちらかだけでもつけた方がいいと思うのですが・・・」
「いや、大丈夫よ。ここから先はあなたたちには関係ない世界だから。」
OTSの三名は現在快成がいる王宮ではなく王城の正面にいる。現在王城は改修工事中であり、作業している者たちがいるはずである。しかし、今は改修作業をしているものは一人も見受けられない。
王宮と王城の違いは、機能である。この国では昔は王城ですべて完結していたが、さすがに古くなってきて危険な場所も出てきたため、現在は基本的には使用されていない。このことから、王宮は現在の王家の住みかとして、また、政治の中心として、機能している。そして、王城は国のシンボルとしての機能を果たしている。あくまでも表向きには、だが。
では、裏向きにはどのように機能しているか、だが。王宮は裏向きなことがほとんど存在していない。しいて言えば王城に住めないため、そこで王家が暮らしているというくらいである。正確にはある理由により住みたくないだけなのだが。(王城が古いのも理由の一つだが、それだけではない。)では、王城はどのように機能しているのか、その答えは国の秘密組織の本部として機能している。ということである。王宮になぜ本部を置かなかったのかというと、王宮に引っ越し作業をしていると、その間にいろいろな機密事項が一般人にばれてしまう恐れがあったため、リスクを少しでも減らすために王城に本部を置いたまま動いていないのである。
そして、今回付和が用があったのはその秘密組織の長である。そのため、王城へと赴いたわけである。
「えぇっと、あ、見つかった。ここだよ、ここ。」
付和は王城内を5分くらい歩き、ある部屋の前につく、元OTSの本部である。今はその機能のほとんどは王宮に移してしまったため、何もないが。
「さて、確か、ここら辺の壁にスイッチがあったはず・・・あ、これだ。」
付和がスイッチ(見た目はどう見ても石の壁である。)に正しい順に触れると壁がその場からなくなり、その先に道ができる。その先ではすでに明かりがともっているのが確認できる。
「・・・行くしか、ないわよね。」
そうして、付和は王城の奥へと潜っていった。
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「ナノ様の気配がしますね。こちらの部屋です。」
ユニコスの案内に従って進んでいく俺たち8人そろそろ、王宮の奥の方まで来ているのでナノとご対面することになりそうらしい。
「裏の出入り口とか、閉鎖してないから逃げられちゃうんじゃないの?」
「スイアさん。確かにもっともな考察です。しかし、ナノ様は私たちくらいとるに足らない相手だと思い、戦ってくれるでしょうね。たぶんですけど。」
「ユニコス、その最後のたぶんっていうのやめてくれ、心配になるから。」
そのまましばらく進む、敵の数は増えてきたが、キルトたちが難なく倒してくれている。
「この部屋にナノ様はいますね。」
「それって確実に?」
「えぇ、私が長年仕えてきたナノ様の気配を間違えるわけがないでしょう。」
「そういうものか。」
「じゃあ、扉、開けるよ。」
「あぁ、ブン、頼んだ。」
整備が行き届いているのだろうか、大した音もたてずに楽に扉が開く。だが、それと同時にものすごい威圧感が伝わってくる。
「へぇ、君たちが、今日の反逆者か。ユニコスのこともたぶらかしてくれたみたいじゃないの。死罪は免れないと思いなさい。」
「ナノ様、彼らは私をたぶらかしたわけでは・・・」
「なに?君の意思だとでも言いたいの?別にいいけど、そうしたら君の死罪だからね。」
「・・・」
「ま、いいけどさ、それより君たちはギルドの本部の者たちでしょう。」
キルトたちに向けて会話をしているのだろうか。まるで俺たち三人は眼中にも入っていないように見えるのだが・・・
「本部は、消してあげるね。」
「何を言っている?お前の魔法ごときじゃ、本部は破壊できないだろう。」
「キルトって言ったかしら、立場はわきまえた方がいいと思うけど。」
「あなたこそ、いろいろとわきまえた方がいいのでは?」
「・・・本当に、目障りね、ギルドっていうのは。まあいいわ、フェンのこと、ギルドでとらえているつもりなんでしょう。」
「それがどうかしたか?」
返答はなし、代わりに王女は笑みを浮かべる。
「まずいな、これは。」
「キルトさん?どうかしましたか?」
ドカンッと大きな音が王宮の外で響く前回の爆破より大きい音である。爆心地が前回よりも近いのか、それとも・・・
「どう?素晴らしいサプライズでしょ。」
「・・・」
「何か言ってみたらどうなの?現冒険者ギルドリーダーキルトさん?」
「記憶があるわけじゃないんだろう。」
「記憶?何の話?」
「快成、情徒、スイア、後は任せたぞ。」
「おい、まさか、ギルドの方に向かう気じゃ・・・」
「その通りだ、ナノ自身はそこまで脅威じゃない。お前らだけで倒せるはずだ。」
「行くぞ、ブン、フミ、ホスカ。」
そして、その場から、4人がいなくなる。
「まぁ、もともと私達4人でナノを倒すってことだったから、作戦に変更はないってことでいいんじゃない?」
「そうだな。俺たちの道は誰にも変えられない。ってわけか。」
「それは少し違うと思うけど情徒・・・」
「ナノ様、無礼は承知です。しかし、今回だけはこちら側につかせてもらいますよ。」
対ナノ戦が今、始まった。




