02話 現実はそんなにおいしくない
「じゃあまずは・・・」
最初の訓練内容が今発表されようとしている。
剣か、魔法か、それとも未知の何かか・・・
「食事の時間だぁ!」
「・・・」
「こいつの料理、すごくうまいんだよ、しかも健康的で、えーと確かレパートリー数は・・・」
「約1000通りの中から料理を、作ってるの。どう?私の食事のレパートリー広いでしょ。」
「名前の割には1桁多いんですね。レパートリー・・・」
「はぁ?多くて何が悪いのよ。」
「すみません。」
ちなみに世界各国の料理を作れるらしい。材料があればの話らしいが。
ちなみに今日のご飯は、サラダ、フルーツ、米もどき、お茶だと思われるもの、それとなんかの肉である。
「すげぇ、異世界の料理なのにまったく違和感がねぇ」
「何の違和感よ、なに?私が何かグロテスクな料理でも作ると思ってたの?」
「すみません。」
なぜかもう2回も謝ってるんが。なぜだ?解せぬ。
まぁ、うまそうに見えるのだから、食べて損はないだろう。ということで、さっさといただきましょう。
「「「いただきまーす。」」」
ん?今なんとおっしゃいましたかね。自分がいただきますをいうのは当たり前なのだが、なぜ、お二方まで、『いただきます』を言っておられる?世界が違えば、文化も違うはずなのだが・・・
「あ、不思議そうな顔してるねぇ。実はこの国の成り立ちには、ある日本人が大きくかかわっていてね。あれだね、確か勇者とか呼ばれてたはず。」
勇者、ファンタジー世界ではおなじみのあれだ。と、ここで、人がいつごろから転生しているのかという疑問が出てきた。
「それって何年ぐらい前の話ですか。」
「ん?僕がまだ学生だった頃の話だからねぇ、えーと、7憶年くらい前かな?」
「・・・は?」
「あ、やべ。」
「セブン、もうアウトだからあきらめて。」
「ハンドレッド、助けて。」
「知らない」
「え、それってジジババどころじゃないってこと・・・」
「「それ以上言うな」」
「すみません。」
まぁ、そんなことはともかくではないのだが、ともかく、これではっきりとした。転生する時間軸は現実世界とずれている可能性があるということだ。何せ7億年前など、俺がもといた世界ならば日本はおろか、人間さえいない。というか、俺自身もどんな時代だったか知らんぐらいの時代からだ。
あと、詮索するつもりはないが、少なくともセブンが、7億歳ぐらいだという点が、一番驚愕の情報である。
ちなみに「すみません。」は本日三回目である。解せぬ。
「あのね、えーとね、この世界ではね、別に億単位を生きる人間も少なくないというか、なんというかなんだよね。」
「いや、少ないわよね。数えるほどしかいないわよね。まぁ、いてもせいぜい腕が、1000本あれば数えられる程度よね。」
「いや、多いだろ、それ・・・」
少なくとも5000人くらいいるってことじゃないですか。
あと、やっぱりハンドレッドって名前の割には、1000って言葉がよく出てくるな、この人。
「あ、封印されているやつも含めれば、もう少しいるわね。」
「・・・」
「あ、全然食べてないじゃない、しっかり食べないとだめよ。」
急に食事に思考を戻させないでくれ、頼む。
あと、そのセリフ今聞くとおばあちゃんに言われてるみたいになるからやめてくれ。
「ま、安心することね、私たちは自身の体とか心とかの年齢を自在に変化させることができるから、無駄に知識が多いだけの人ってところだと思っていれば、なんの問題もないわよ。」
「あるだろ、それでも問題がぁ。」
「セブン、あなたが作った問題よね?」
「うぐぅっ」
「・・・」
まぁ、これだと話が長くなりそうだから、ハンドレッドの言う通り、これからは、無駄に知識が多いだけの人だと思っていよう。うん。そうしよう。
「えーと、じゃあ話を戻すとして・・・」
「んぁ、勇者のところで止まってたんだったけ。」
「ということは魔王もいたりするんですか!」
「なぜ目を輝かせているのかは知らないけれども、まぁ、そういうことだよね。」
「ということは、俺も勇者になれるチャンスが・・・!」
「あー、残念ながらないと思うよ」
「やっぱりそう簡単にはなれないということか。」
「いやそういうことじゃなくて、まぁ、そういうことなんだけど、勇者は同一世界時間軸つき1人しか存在できないんだよね。で、今その1人は存命中だから・・・」
「要するに、少なくともその人が死なないとあなたは勇者にはなれないというわけよ。」
「まぁ、勇者なんて荷が重いだけだから、ならない方がいいだろうね。」
「なるほど。ちなみに魔王とはどのような存在なんですか?」
「特に普通の王様とかと変わらないかな。違いは人間以外の存在ってことかな。」
「まぁ、魔王として名乗るか否かは自分次第らしいから、例として挙げると鬼族の王は魔王とは名乗ってないわね。逆に、亜人の国の王は魔王を名乗っているわね。」
「ちなみに、この国は人間の王が統治しているよ。その点でいえば、他の国に転生するよりもこの国に転生しててよかったのかもしれないね。人種によって文化も変わるからね。」
「わるぼど」(「なるほど」)
「こら、ごはん口に入れたまましゃべんないの。」
食事の文化はあらかた日本の通りのようだ。
いや、『ごはんを口に入れたまましゃべらない』。は、他の国にもありそうな文化だが。
「それにしてもおいしいですね、特にこのお肉、なんの肉なんですか。」
まぁ、どうせ知らない生物から作られているのだろう。
ただ、気になったから聞いてみただけだ。
「ん?あぁ、その肉ね、それは私が自分で狩ってきた屍鳥の肉ね。この辺りではよくとれるけど、一応高級食品なのよね。」
絵を見せてもらった。
その絵を描いた絵師がうまいのか知らないが、やけにリアルで、普通にきしょかった。というか、屍鳥というだけあって、本当に屍のようである。常時(生きているときに)半分内臓が出てる鳥である。よく今まで自分がこの肉を食っていたな。と思うレベルである。
「おえぇぇぇぇ・・・」
「うわ、汚い!しかも!人の作った食べ物を吐くだなんて!?」
「いや、まぁ、今回は絵を見せたハンドレッドが悪いんじゃない?」
この後、自分の吐瀉物の処理に追われ訓練どころではなくなったのは、また別のお話である。