01話 やはり初日は情報量が多い
「じゃあ、君はやはり『転生者』ということになるね。」
その発言に、自分でも驚くほどに納得した。
ただ、問題なのは、ここがどこで、彼が何者かといったことである。
現時点では何もわからないため、ここは彼に聞いてみるしかない。
幸い、コミュニケーション能力はそれなりにある。と、自分自身では思っている。
「ところで、立ち上がってくれる?君、もう丸一日寝てたんだから、何か食べさせなきゃいけないんだよね。」
なんか俺が発言する前に、発言されてっしまった。
まぁ、確かに、こんな寝ころんだままじゃ失礼だ。
「よいしょ」
と言いながら立ち上がる。
俺が起き上がると彼は、「こっちに家があるから」
と言って歩き出してしまった。
確かに彼が歩いていく先には、家がある。それ以外は、ここはあたり一面草原である。
そして、草原のはじの方に全方向に広がる、森。
ここから得られる情報は、特にないのだが、あるとすれば、おおよそ人口的に森を切り開いているのだろうということだけだ。
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しばらくして彼の?家に着いた。
まぁ、家に向かって、直線距離で1kmもなかったけれど。
「遅ぉい!」
玄関前で、一人の少女が立っていた。そして、憤慨している。
ちなみにこちらも異国風な服を着ているが、エプロンをつけていたので、そこまで違和感は感じなかった。少なくとも彼よりは幼く見える。彼が17歳ぐらいだとすると、彼女は12歳あたりに見える。
「ごめんねぇ。ちょっとゆっくりしすぎちゃったかな?」
「早くしないと料理が冷めちゃうっていつも言ってるじゃない!」
「いや、でもねぇ、倒れてる人をそのままほっておくというのもさ、大問題じゃん。」
「倒れている人と私、どっちが大切なわけ?」
「え?倒れている人ですけど?」
「あぁ~もう、話になんない。中で待ってるから!」
いや、話になんないのはこっちなんですけど・・・
まぁ、いいか。彼が、家に入れってジェスチャーで表現してるし。家に入ろう。うん。
「お邪魔しまーす。」
といっても、この世界にこのような挨拶の文化の類があるのかはわからないのだが。
「いらっしゃい。僕たちの家へ」
さっきの少女は奥に引っ込んでいったらしい。少年だけが返事を返してくれた。
「さて、まずは、腹でも減っているだろうから。あいつに作ってもらおう。」
「え、作んなきゃだめ?面倒くさいんだけど。」
「お前なぁ、珍しくこの聖域に入ってきた人がいるんだよ。もう少し優しく接してあげてもいいんじゃないかなぁ。」
「あー、ハイハイ、わかりましたよーっと」
たぶん彼女、何もをわかってない・・・
すると、彼は、リビング?に案内してくれた。
その流れで、椅子に俺と少年は腰掛ける。
「さて、いろいろ聞きたいこともあるだろうし。質問を受け付けるよ。」
これは好機である。
何せ、今のところ何の情報もなかったからな。
聞ける限りいろいろと聞いてみよう。
でも、その前に。
「えーと、お二方はどのようなお方なのでしょうか。」
「あはは、そんなにかしこまらなくても、もっと砕けた感じでいいのに。で、ぼくたちが何者か、だったっけ、そうか、まだ名乗ってもいなかったんだよね。僕の名前がセブンで、彼女の名前が、ハンドレッドだよ。自分たちの役職とかは特になくて、主人に付き従っている従者、といったところかな。あ、もちろん苗字はないよ。ちなみに今、主人は留守だけれども。ところで、君の名前は?」
ここはやはり異世界。苗字があるとは限らないらしい。
「じゃあ、お言葉に甘えてもうすこし砕けた感じで話させてもらおうかな。自分の名前は、神宮寺 快成ていいます。話すと長くなりますけど、とにかく、死んで転生?転移?した。って感じみたいですね。」
「なるほど、じゃあ、その死んだ日一日について詳しく教えてくれないかな。」
別に隠す必要はないので、死んだ日について、詳しく話した。
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そのあと、話していたことを整理すると、彼ら・・・セブンとハンドレッドは今、聖域という存在の中で、生活しているらしい。あまり詳しくは教えてくれなかったが、概念としては、『現実世界を拡張し、切り離したもの』であるらしい。今、俺がいるところも聖域らしく。聖域は基本的には人為的に、何かの目的のために作られるらしい。また、彼らの主人については、秘密ということらしいが少なくとも一か月間この家を離れていて、単独行動をとっているらしい。
そして、一番大事なこの世界についてだが、基本的には、魔法もドラゴンもいるスマホなどあるわけもない典型的な?異世界らしい。ただ、一つ特殊なのが、ごくまれに特殊な能力を持った人間が、生まれることがあるということ。これについては、「自分で知るのが大切だよ。」とかといって、詳細を教えてはくれなかったが、話を聞くに強力なものもあるらしい。また、転生者は能力を授かることが多いとされているらしいのだが、今の自分はそのようなものを手に入れた覚えがない。セブンは気づいていないだけかもよ。だとか、途中で目覚めるケースもある。だとか言っていたが。たぶんそんなものは自分にはない。
ちなみに、彼らの名前だが、数字そのままの意味らしい。この世界のネーミングセンスに恐怖を覚えた瞬間だったが、ほかの人はそうでもないらしく安心した。
「さて、君には、異世界に来たからには、してもらいたいことがある。」
「何を?」
「ちょっとした訓練とでも言おうかな。この世界で生き延びるための、ね。」
「・・・」
「そんなに緊張しなくても大丈夫さ、この世界で一般人一番稼げる職は冒険者だからね。それになるための訓練だと思えばいい。」
「えぇーと、俺は冒険者になりたいとか言ってないと思うんですけど・・・」
確かになっては見たいが、リスクがでかすぎると思うのだ。死へのリスクが。
「冒険者ギルドなら、転生者もそれなりにいると思ったんだが・・・」
その言葉には、自分にとって、ものすごい衝撃を与えた。
「え、マジで、日本人もいますかね?」
「ん、あぁ、日本ね、そっちの世界の国の名前だったっけ。一番転生者が多いのがその国だから。たぶんいる、というか自分の知り合いで日本人がいる。」
最高の情報である。
「まぁ、入りたくなければ入らなければいいさ、ただ、能力もない異世界人となると、どんな危険があるか分かったものじゃない。一応自己防衛の技術ぐらいは身に着けてもらいたくてね。あ、もちろん魔法も教えてあげるよ。」
「魔法・・・」
それはみんなのあこがれ、誰もが一度は使いたいと思ったもの。現実では到底手に入れることができない技術。それが使えるようになるというのならば、
「ご指導お願いします!」
かくして俺の異世界生活は始まった。