13話 対王国戦開幕一秒前
少女はいまだ寝ている。
起きることなく。
いま彼女がよい夢を見ているのか悪い夢を見ているのかは誰にもわからない。
隣で、彼女の夢を共有している一人の少年を除いて。
そして、少年はつぶやく。
「これは・・・良い結果になりそうだね。」
というわけで、依頼の小屋についてからすでに1時間経っている。
依頼によると3日間護衛すればいいらしいが、すぐに暇になってしまいそうである。
何せ小屋の中には入ってはいけないことになっているから蚊みたいなやつがさしてくるから困るのである。
というか情徒に聞く限り生態は限りなく蚊に近かったため、もはや蚊である。
とにかく何が言いたいかというとすでに10ヶ所近く刺されているためすごくかゆい。
「うーん、かゆすぎるわね。虫よけのポーション使いましょう。」
「おぉ、なんて便利なアイテム!」
「効果は一週間のが3人分あるから頭からかぶりましょう。」
頭からかぶった。するとアルコールが蒸発するときに少し涼しくなる感じが全身を襲う。もはや寒いまであるが、それは一瞬なのでかゆいよりまし。なので我慢する。
というわけで、3人で俺の元居た世界についてを中心に会話していくと一日が過ぎた。
2日目である。
朝ご飯をキャンプ的に作り食べ終わったころ、問題は発生した。
「ん?遠方に人・・・?いや、一人じゃないな5、13、29、48・・・85人か・・・」
情徒が気配を察知した方向に注意すると、確かに何かいる。あ、何かじゃなくて人か。
「それにしても人が多いわね。何かしら?」
しばらく様子を見る。するとその正体が分かった。
「あれ、もしかしてだけど王国騎士団じゃない?」
「いや、違うな、あれはそれより上の組織、王国対災害軍略してOTSだな。」
「あ、この世界ローマ字もあったんだ、というかなんだその適当なネーミングセンス。」
ちなみに騎士団とは別で対災害組織が作られるのはわかるのだが、対災害組織の方が強い理由はよくわからない。
第一、災害に対して軍が必要か?という疑問もある。
もちろん対策しないというのも違うのだが、軍という形式をとる必要もないのでは・・・
「対災害っていうのはね。『対災害級の被害』という意味なの。だから、あの軍の相手が人や魔物であることも全然あり得るわよ。」
すると、その中の一人がこちらへ向かって移動してきた。
同い年くらいの少女である。
が、軍服を着ているので並々ならぬ強さを持っているのだろう。たぶん。
「そこのお三方、いったい何をしていらっしゃるのでしょうか?」
さっそく話しかけてきた。もちろんこちらは護衛の依頼である。
と、ここで気が付いた、小屋を守るのならば、護衛ではなく警備とかの方がニュアンス的にはいいのではないか、と。
別に護衛でも意味は成り立つので問題はないのだが。
「今はこの小屋を護衛していますよ。」
丁寧に答える。相手が国のお偉いさんかもしれないのに適当に答える馬鹿がいるわけない。
「え、この小屋を?誰の依頼ですか?それ」
「冒険者ギルドから依頼が来てたんだけど、何かおかしかった?」
「冒険者ギルド・・・?おかしいですね。なぜ・・・?とにかく、ここの小屋から離れてもらえませんか?」
「無理だな、こちらは依頼できている。そう簡単に手放すわけにはいかない。」
「そう、ですか・・・あんまり荒っぽいことはしたくないんですが、それでも、ですか?」
「では、一つ確認させてくれ、この小屋の中には何が入っている?」
「え?知らないで護衛してたんですか?」
「いや、まぁ、そういう条件だったから。」
「そうですか。なら、教えましょう。その中にいるのは国家に対する反逆者2名です。あなたたちも犯罪者になりたくなければすぐに手を引いていただきたく・・・」
と、ここでキルトからの念話が入る。
(気をつけろよ。僕が言ってた敵というのはそのOTSだからな。あ、確かに君たちは一時的に国家に対する反逆者になるけど、まぁ、問題ないよね。)
なめてんのか、あいつ
(あと、追加情報だよ。彼らの平均ステータスは予測だけど三観点すべて3000だからね。気を付けてね。)
「「「・・・」」」
最悪である。絶対に負けるじゃんそんなもん。
「快成、よく聞け、今のこの国は女王の独裁状態にある。わかるか、要するに反逆者というのは・・・」
「あのぉ、無駄話はやめてもらってもいいですかね?早くこの小屋から離れていただけると嬉しいのですが・・・」
「でも、おかしいわね。いくら強い反逆者といえど、軍の中でも最強とうたわれる。OTSを半分以上仕向けるだなんて・・・あ、ちなみにOTSは135名で構成されているわ。」
「その様子だと、本当に中に誰がいるか知らないようですね。とにかく、団長の指示ではあと、5分以内にあなたたちが退かなければ皆殺しとなるんですが・・・」
「な!それはどういう・・・」
(今回の依頼の真の目的を教えようか?)
キルトからの念話がまたしても届く。
(今回の依頼は確かに小屋の中の国家反逆者の護衛だ、ただ、その反逆者は王家の者だから、ここまでたくさんの人が来ているというわけだ。また、小屋の中には2人いて両者とも強力な能力を所持している。わかるかい。今回はその能力を表に出さずにOTSを制圧する。それが君たちの依頼内容だ。)
ここまでの話を整理すればこの小屋の中には2人いて、両者とも国家に対する反逆者、そして強力な能力者、そして、女王の独裁状態にあるということから、たぶんろくな犯罪を起こしていないのに追われている。または、革命でも起こそうとしてそれがばれて追われているのだろう。そう考えると、この依頼はこの国の未来を左右しかねないものとなるということだ。
と、ここで念話を送り返す努力をしてみる。魔力の回線的なやつを逆向きにたどって・・・できた。
(おい、そんな重大な仕事なら、他のやつに頼むか自分たちで片づけるければよかっただろう!なぜ、俺たちに依頼を受けさせた!)
(なんだい、そんなことかい。理由は簡単。今のうちに君とOTSとの間で面識を作るためさ。)
(・・・っ!なんで、そんなことに何の意味が・・・!)
念話が途切れた。というか回線を切られた、感覚的にキルトが強制的に切ったものだと思われる。
「念話でお仲間と作戦会議ですか?高度な魔法だったため内容までは聞き取れませんでしたが・・・」
「おい、快成、スイア、ここまで来たらもう、引けないよな。」
「っ、仕方ない・・・」
「よーし、久々に張り切っちゃうぞー」
そうして戦いの火蓋は切って落とされた。




